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糖尿病治療に乗り遅れないように

10月29日に、『ジェネラルマインド医師養成セミナー』に行ってきました。この会は、名古屋大学総合診療部の鈴木富雄先生を中心として、愛知県医師会がバックアップして行われている勉強会です。タイトル通り医師のジェネラルマインドを育てる勉強会で、我々の目標としているものと近いこともあり、毎回非常に勉強になります。

 

今回の講師はソレイユ千種クリニック院長の木村那智先生でした。木村先生は一型糖尿病を専門にされており、今回は、今何かと話題の『糖尿病治療』についてでした。糖尿病を疑われる患者数が2200万人であるのに対して、糖尿病専門医は4000人強・・・。この事実からも、プライマリケア医はもちろん、すべての医師が糖尿病の治療に関して、ある程度知っていなければいけないのは明らかです。

 

木村先生が強調されていたのは、①糖尿病に「まだ軽症だから」、「まだ早期だから」は通用しない。初期から適正な治療を、②ただし、行う治療は『標準療法』。『強化療法』はかえって死亡率がアップする、③ファーストチョイスはメトフォルミン、α-GI、DPP4阻害薬のいずれかで、患者背景によってグリニド、SU剤、GLP-1と追加、④心血管イベント抑制を期待するならピオグリタゾン、⑤色々な見方があるが、やはりDPP4阻害薬は非常に良い薬なので、どんな患者さんでもファーストチョイスになり得る・・・といったところです。でも、実は最も強調されていたのは⑥『糖尿病気質』の人なんていない!どんな人だって、生活をどうしろとか薬をしっかり飲めとか言われればヘソを曲げる!というもの・・・深く反省(T T)。

 

さて、この中で②に関してはACCORD studyという有名な論文が引用されていました。絶対押さえておきたい論文なのでここで簡単におさらいしましょう。

 

ACCORD(Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes)Studyは高リスク2型糖尿病患者を厳格血糖管理と通常血糖管理の2群に分け、さらに血圧管理または脂質管理を二重に検討されたものです。このStudy、当初は5年間追いかける予定だったのですが、平均追跡期間3.5年で厳格血糖管理群の死亡率が上昇(強化療法1.42%、標準療法1.14%)したため早期打ち切りとなり、大きな波紋を呼びました。

 

以下にポイントを挙げます。

 

  • 強化療法、標準療法のそれぞれの治療の中で、低血糖イベント報告のあった人の死亡率は、イベント無に比べ高いかったため、死亡率が上昇した原因は低血糖が想定された。
  • しかし、実際の強化療法群の死亡率の上昇は、低血糖イベントのない人の死亡率が、強化療法群に多かったため。
  • 治療介入が必要な低血糖の発症は、(予想通り)強化療法群に多い。
  • しかし、低血糖を繰り返した人で、低血糖1回、2回、3回以上という層別解析した結果では、標準療法の方が、強化療法より死亡率が高かった。

 

その理由としては、以下のようなものが挙がっています

 

  • 強化療法を受けている患者群は、低血糖の知識があり、低血糖に対する備えができていた。
  • 強化療法ではマイルドな低血糖があり、それが心筋に対しての保護効果を示した。
  • 標準療法では、血糖自己測定で70 mg/dl 未満の場合、血糖降下治療を止めてよかった。そのため標準療法での低血糖イベントは重篤だった。

 

The association between symptomatic, severe hypoglycaemia and mortality in type 2 diabetes: retrospective epidemiological analysis of the ACCORD study BMJ. 2010; 340: b4909.

 

つまり、このStudyでは『強化療法と維持療法を比べたら明らかに強化療法の方が死亡率が高い。特に、低血糖イベントがあれば死亡率は上がる。ただし、それぞれのグループで低血糖を起こした群を比較すると、強化療法の方が死亡率が高い』という、何とも理解しにくい結論に達しています。

 

何はともあれ、DPP-4阻害薬の登場により、糖尿病の治療は大きく変わってきています。多分、10年前の高血圧に対してのARB以上のインパクトなんじゃないでしょうか。とりあえず、乗り遅れないようにしましょうね。

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