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EBM?NBM?

学会の準備やら何やらで、更新が滞ってしまいました。やっとひと段落つきましたので、ブログ再開します!学会での発表内容は、また別の機会にお話ししますね(^-^)

 

さて、今回のお題は『過換気症候群におけるペーパーバック法』です。みなさんの救急外来では、過換気症候群で受診された患者様にペーパーバックを使用していますか?実は、この件に関して、ネット上でちょっとした話題になっています。8月末にNHKで放送された番組で、ある救命救急センターに勤めている先生が「ペーパーバックは禁忌」と発言されたのがきっかけです。後述しますが、確かにEBMの観点からは「ペーパーバックはしない方がいいかも・・・」といった流れにはなっています。でも、天下のNHKが『禁忌!』と言い切ってしまうほどかというとちょっと微妙・・・っていうかアウトな気がします(~_~;)

 

さて、過換気症候群(Hyper Ventilation Syndrome)。精神的な不安やストレスから手足の痺れや動機、呼吸困難、眩暈などを来す疾患なのは御存じの通りです。病態生理的には、血液中の酸素と二酸化炭素のバランスが崩れ、酸素過多になり、二酸化炭素不足となる状態を言います。呼気からの二酸化炭素の排出が必要量を超え動脈血の二酸化炭素濃度が減少してアルカローシスに傾くため、息苦しさを覚えます。そのため、無意識に延髄が反射によって呼吸を停止させ、血液中の二酸化炭素を増加させようとします。しかし、大脳皮質は、呼吸ができなくなるのを異常と捉え、さらに呼吸させようとします。さらに、血管が収縮してしまい、軽度の場合は手足の痺れ、重度の場合は筋肉が硬直します。

 

色々な症状が出てきますが、個人的には「空気が薄くなった感じ」「吸っても吸っても空気が入ってこない感じ」といった『空気へのこだわり』を訴えることが多い気がします。

 

鑑別診断は多種多様です。ARDS、喘息、COPD、Af、心筋梗塞、心筋症、気胸、肺塞栓、CO中毒・・・結局、息苦しさや胸痛を来す疾患全てです。

 

いよいよペーパーバック法の話です。紙袋などに口・鼻をあて、吐いた空気を再度吸い込むという行為をくり返し、血中の二酸化炭素濃度を上げる方法で、酸素不足にならないよう、少し隙間を作っておくなどの配慮が必要になります。ただ、加減が難しく、有効性よりもむしろリスクの方が大きいという意見も多いようです。窒息したといった報告や、急性心筋梗塞・肺塞栓・気胸などを誤診した死亡例も報告されています(http://emedicine.medscape.com/article/807277-overview)。・・・ん、この報告だと『誤診したからペーパーバックはダメ』っていう、摩訶不思議な理論になってないか(-“-)?!少なくとも「だから禁忌!」は納得できません。

 

じゃあ、どうしよう?ってことで、管理人の外来に通院されている過換気症候群の既往のある患者様5人に聴いてみました。「病院に来るとあれをやってもらえる、って安心感がある」、「治療してもらっているんだな、て思える」、「あの紙袋の独特のにおい(?)で、何となく落ち着く」・・・十分患者様の満足度を上げていると思います。少なくとも“自分達の力不足よる誤診”を理由に、これらの満足感を奪うことは間違いだと思います。

 

過換気症候群は背景にうつ病やパニック症候群を持つ方が多いのは事実で、救急外来での対応は、どうしても「あ~、まただ(-_-;)」と成りがちです(気持ちは分かりますが)。でも、その気持ちをぐっと堪えて下さい。要は、『ペーパーバックの正しいやり方を教えるとともに、心筋梗塞や肺塞栓といった致死的な疾患の可能性を常に考慮する』というのが、過換気症候群に対する正しい対応なんじゃないでしょうか。Evidenceは蓄積されているようですが、こういった患者様の“物語”も、それと同様に、もしくはそれ以上に大切にしたいところです

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