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どっちを使う?“パップ剤”と“テープ剤”

外来で一通りの診察が終わりました。さぁ、患者様が立ち上がって出ていき際に一言、「あ、あと湿布もついでに出してもらっていいですかね?」 ―― こんなことよくありませんか?そんな時、貴方は何を考えて、どんな処方をしますか?結構、「いつも出しているモー○ステープでも出しておくか」で終わっていませんか?整形外科などの先生は別にして、鎮痛剤の中でも、特に湿布剤は『何となく処方』がまかり通っているような印象があります。今回はそんな湿布剤のお話。

そもそも、湿布っていつから使われているんでしょうか?何とな~く昔の中国なんかで使われ始めたイメージがあるんですが、実際の発祥は、紀元前のギリシアなんだそうです。あとで詳しく触れますが、湿布には、厚いタイプの「パップ剤」と薄いタイプの「プラスター剤(テープ剤)」の二つに分類されます。パップ剤は、医聖ヒポクラテスとその一派が、患部を冷やしたり温めたりする『罨法(あんぽう)療法』を行った際に作られたそうです。現在のパップ剤の原型は1900年代はじめのアメリカで、グリセリンにサリチル酸メチルや薄荷油などを配合した薬剤を布に塗って患部に貼っていたものが、1970年代に入ってきたんだそうです(意外に新しい!)。それに比べて、プラスター剤の歴史は古く、江戸時代後期から使われていた粘着性の高い外用剤(硬膏)が発展したものです(ご高齢の方が湿布のことを「膏薬」と言われるのは、この名残です)。

そもそも何で湿布って効くんでしょう?もちろん、後述する冷却や保温の効果もありますが、視床へ痛みを伝えるC神経線維よりも、「湿布を貼ってヒンヤリする」「ポカポカ温かくて気持ちイイ」という感覚を伝えるAβ神経線維の方が太いことを利用しています。湿布を貼ることで、視床に痛みよりも速く湿布の“気持ちよい感覚”を伝えさせ、痛みを抑制して症状が緩和されたように感じさせます。

前置きが長くなりましたので、そろそろ今回のメインテーマ。前記の通り、貼付には剤形から、水分を含む湿布剤(パップ剤)と含まないプラスター剤テープ剤)に分かれ、それぞれに温感タイプと冷感タイプがあります。しかし、この『温感』『冷感』とは文字通り“温かく感じる”“冷たく感じる”だけであり、実際には両方とも、皮膚温を低下させます(もっとも、温感タイプに含有されているトウガラシエキスが毛細血管を拡張する作用があるため、一旦下がった皮膚表面の温度を、90分前後で2~3℃程度上げると言われています)。実際に皮膚を冷やしたり温めたりするのに影響を与えているのは、貼付剤に含まれている水分です水分を含むパップ剤には冷却効果があり、水分を含まないテープ剤には保温効果があるというわけです。

捻挫や打撲といった急性の炎症性疾患では、患部を冷却することにより、血管透過性を抑制する発熱,浮腫を取り除く必要があります。それに対して、腰痛や肩凝りといった慢性の炎症性疾患では、発熱や浮腫はすでに引いているので冷却する必要はなく、患部を温めることにより血管を拡張させ、血流を増加させ、老廃物・炎症産生物質の吸収を促進しなければなりません。つまり、熱を伴う急性の痛みには冷やすために冷感パップ剤を、慢性の痛みには温めるためにテープ剤や場合によっては温感パップ剤を使用するのが、正しい使い方な訳です。その上で、患者様の好みに合わせて温感タイプと冷感タイプを使い分ければいい訳です。

・・・ま、これはあくまで建前!「冷たいのはゾクゾクしてダメ!」、「あの“プ~ン”とした臭いがないと効いた感じがしない」なんて方、いっぱいいらっしゃいます。例えいつもの痛みでも、何が一番適切なのかを判断した上で、個々の患者様のニーズに合った処方をしましょうね(^-^)

 

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