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「年だから・・・」では終わらせない!

救急外来をメインに行っていたときはなかなか気付かないのですが、一般外来をしていると、排尿に関する悩みを持たれている患者様が実に多いことに驚かされます。実際、2003年に日本排尿機能学会が実施した40歳以上を対象とする疫学調査では、尿失禁(切迫性尿失禁+腹圧性尿失禁)を有している推定人数はのべ1,122万人(女性838万人)、過活動膀胱がある推定人数はのべ810万人と報告していますし、「まぁ、年だからしょうがない」「恥ずかしい」といった理由で受診されない方も大勢いらっしゃいます。プライマリ・ケア医の端くれとして、『排尿障害』は押さえておかなきゃいけません。

排尿障害を押さえるためには、どうしても排尿の病態整理を押さえておかなければいけません。・・・ん、つまらない?じゃ、ちょっとだけ(´▽`) 蓄尿・排尿といった下部尿路機能は、『仙髄』『橋』を中枢とし、副交感神経(骨盤神経:反射中枢はS2-4)、交感神経(下腹神経:反射中枢はT10-L2)、および体性神経(陰部神経:反射中枢はS2-4)の3種類の神経により多重支配を受けています(詳しくは下の図を見てください)。

「じゃあ、排尿障害の人はみんなこの経路のどこかがやられちゃってるの?」というとそういう訳ではありません。じつは、こういった『神経性調節』の他に、脳内のアセチルコリン系やドパミン系などの『脳内神経伝達物質を介した調節系』と尿路上皮にある『知覚ニューロン様調節系』も、排尿には関わっていることが分かっています。ま、細かいところまではいいとして、以下のようにポイントだけ押さえておけばOKです。

  • 橋や腰仙髄の下位排尿中枢障害→蓄尿・排尿障害
  • 前頭葉、内包(膝部)、線状体の障害→蓄尿障害
  •  脳幹の橋被蓋(橋排尿中枢)の障害→排尿障害
  • 加齢によるアセチルコリン分泌の全般性低下→蓄尿障害
  • 認知症、脳血管障害による前脳基底核や大脳皮質の病変→M1受容体を介する抑制系の障害→蓄尿障害
  • パーキンソン病によりドパミン濃度低下→排尿反射低下→頻尿・尿失禁
  • 脳梗塞や多発性硬化症によりGABA受容体を介する抑制系の障害→蓄尿障害
  • 脳幹部のグルタミン酸受容体障害→排尿反射亢進の障害
  • 膀胱の炎症・伸展、虚血→尿路上皮細胞を刺激→膀胱内圧亢進→尿意切迫感

問診やら検査やら言いたいことは沢山あるのですが、全部ぶっ飛ばして、ここからは薬のお話です(詳しい内容は南山堂出版の『臨床診断ホップステップジャンプ』の第27項の『排尿障害(尿失禁・排尿困難・頻尿)』をご覧下さい・・・って、宣伝です( ´艸`)) 排尿障害に対しての薬は大きく分けて2つ、過活動膀胱や神経因性膀胱など蓄尿障害に使う『抗コリン薬』と、前立腺肥大症など排尿障害に使用する『α1ブロッカー』です。

  • 抗コリン薬:バップフォー、ポラキス、デトルシトール、ベシケア
  • α1ブロッカー:ユリーフハルナール、フリバス、ハイトラシン

治療の主役は『抗コリン薬』です。色々な薬が出ていますし、製薬会社からは様々な情報が出ていますが・・・正直、ほとんど差はありません。使い分けどうこうより「アセチルコリンの作用をブロックしてしまう」ということを常に意識する必要があります。すべての薬に口渇、頭痛、眩暈、霧視、腹痛、便秘などの副作用が起こる可能性があることを覚えておきましょう。

前立腺肥大症に関しては『α1ブロッカー』が絶対的な適応です。基本的には『第一世代でエビデンスが蓄積しているけど、α1選択性の低いハイトラシン』、『第二世代でエビデンスはそこそこ、α1選択性のいいハルナール』『最も新しく、α1選択性が最も高いユリーフ』と覚えて下さい(第一世代のフリバスはハルナールと同じようなポジションですが、ブロックする受容体が微妙に違うので、ハルナールが効かない症例に効果があるかも)。何となくユリーフが一番良さそうですが、実際のα遮断作用はハイトラシンが一番強いので、ひどい排尿障害では選択肢の一つです。もちろん、眩暈や立ちくらみといった副作用には要注意です。

それ以外にも、膀胱平滑筋にマイルドに作用するベサコリンやウブレチド、排尿障害の副作用を利用して尿漏れなどの蓄尿障害に使用するトフラニール(三環系抗うつ薬)などを押さえておけば、非専門医としては十分でしょう。

長々と書いてしまいましたが、管理人の印象も踏まえての実用的な使い分けはこんな感じです。

  • ž   特に問題ない男性:エビデンスも多く副作用が少ない、かつ安いハルナール(効果が乏しければフリバスも試してみてもいいかも)
  • ž   女性の尿漏れ:使い慣れている抗コリン薬(値段と1日1回でバップフォーかな?)
  • ž   夜間の頻尿で悩んでいる:使い慣れている抗コリン薬。男性だったらハルナールやユリーフの追加も検討
  • ž   高血圧症の合併あり:コントロール良好ならハルナール。降圧が不十分だったり服薬数を少しでも減らしたいときはハイトラシンかフリバスもあり。

「年だからしょうがない」って諦めていらっしゃる患者様のQOLを、少しでも改善できたら・・・プライマリ・ケアの醍醐味ですね(^^)b

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