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ザ・プライマリ!『うつ病』

以前にこのブログでWHOの発表した生涯調整生存率(Disability-Adjusted Life Years(DALYs))を取り上げました。「疾患によって毎日の生活がいかに不自由になるか」を表現したもので、疾患別では①うつ病(10.4%、 ②鉄欠乏性貧血 (4.7%)、③転倒による外傷(4.6%)、 ④アルコール性障害 3.3%、⑤慢性閉塞性障害 (3.1%)、⑥双極性障害(3.0%、⑦ 先天性奇形(2.9%)、⑧ 変形性関節症(2.8%) 、⑨統合失調症(2.6%、 ⑩強迫性障害(2.2%と、やたらに精神疾患が多かったですよね。実際、前出のWHOが11月9日に『世界のうつ病患者の推計は35千万人』と発表しました(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121010-00000001-jij-int。実に20人に1人!日本では10人に1人がうつ病と報告されていますし、そのうちの約90%が最初に非専門医(プライマリ・ケア医51%、身体化専門医12%、精神科医9%、その他28%)を受診するのです。押さえておかない訳にはいきません。

 

まず始めに・・・うつ病は病気です。憂鬱のせいで、社会的機能が損なわれたり、ものの見方が歪んでしまう『身体の病気』です。当たり前のことなのですが、一般的にはあまり浸透していません(もしかしたら医療現場でも(-“-)?)。確かに、特有の病前性格の人が、ある種のきっかけ(状況因)によって生じると言われていますが、しっかり病因はあります。ちなみに、以下のような病因がいわれています。

  • 薬理・生化学的仮説:脳内神経伝達物質(セロトニン)がうまく機能しなくなる
  • 神経内分泌学的仮説:ストレス負荷時の副腎皮質ホルモンの分泌がいつまでも続き、脳由来神経栄養因子(BDNF)の分泌が低下し、海馬神経の新生が阻害される
  • 時間生物学的仮説:脳内の生物時計が適切に働かない

 

以前にも述べましたが、うつ病患者様が最初に精神科を受診するのはわずか9%と言われていますし、訴える症状も以下に示すように多彩です。脳卒中、悪性腫瘍、心筋梗塞、アトピー性皮膚炎、気管支喘息などに高率にうつ病を合併しますし、うつ病はむしろ『プライマリ・ケアの病気』といえるかもしれません。 

  • 睡眠障害:74%(入眠障害:58%、中途覚醒:22%)
  • 興味・意欲低下 :60%
  • 抑うつ気分:52%
  • 倦怠感・易疲労感:45%
  • 食欲不振:45%

 

DSM-Ⅳの診断基準は『精神症状』①抑うつ気分②興味の減退、③焦燥感、④無価値感・自責感、⑤思考力低下、⑥希死念慮)と『身体症状』(⑦睡眠障害、⑧食欲不振・体重減少、⑨易疲労感・倦怠感)に分けられており、『①または②が必須。上記のうち①または②を含む5項目以上が2週間以上続いており、それにより、著しい苦痛または社会的機能の障害をきたしている。薬物乱用などの他疾患、および死別反応の除外。』という但し書きがされています。重要なのは持続時間です。『ほとんど毎日、ほとんど一日中、二週間以上持続すること』がポイントになります。心理的要因に対する反応としての“うつ状態”であるならば、2週間も続くことはなく、「抑うつ気分を伴う適応障害」と診断されます。また、こうした適応障害では、症状面においても気分や意欲や低下が中心で、明瞭な身体症状を伴うことは少ないといわれています。

 

この基準もそれなりにシンプルに作られているのですが、やはりプライマリ・ケアの現場で使うにはやや煩雑(^_^;) やっぱり、有名な2項目質問法』(Two-question case-finding instrument(TQ)を覚えておきましょう。

  •  「ここ1ヵ月、気持ちが落ち込んだり、憂鬱な気分、絶望的な気分になりましたか?」
  •  「ここ1ヵ月、何をしても楽しくないと感じますか?」

これはスクリーニング目的なので一般の診断基準と違い一ヶ月にしています。いずれの質問にも「いいえ」で答えた時のうつ病に対する感度は97%、特異度は67%といわれ、2項目とも当てはまると88%うつ病とも報告されています(Arroll B, et al. BMJ 2003 Nov 15; 327: 1144-1146.)。やっぱりTQはうつ病診療の有用なツールですね(^-^)

 

診断まででも盛りだくさんになってしまいましたので、今回はここまで。治療に関してはまた別の機会に――。

 

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