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『抗凝固療法』が変わってきたゾ!

今の医療で“Evidence-Basedであること”なんて、すでに当たり前になっています。ことに循環器の世界は、まさに日進月歩!正直、ついていくだけでヒーヒー言っています(~_~;) というわけで、今回は“ヒーヒー言ってでもついていかなければいけない”『抗凝固療法』についてです。

 

まずは今までの復習(?)から。rt-PA導入後は改善傾向を認めていますが、心原性脳梗塞の1年生存率は50%程度と、相変わらず予後不良疾患です(Neurology 2006: 66; 1539)。とにかく、心房細動のある場合、慢性だろうが発作性だろうが予防が大前提なのは明らかです。じゃあ、「心房細動があれば、片っ端から抗血栓療法じゃ!」かといえば、そうではありません。脳梗塞予防のメリットと、出血のリスクや頻回採血の煩わしさ、そして、意外に問題となる「納豆禁!」などのデメリットとの天秤で、「リスクが高ければ抗凝固療法、リスクが低ければ抗血小板療法」というのが基本的な考え方です(今まではね)。で、その層別化に使われるのが、有名なCHADS2スコア』です。

  • Congestive heart failure(心不全)
  • Hypertention(高血圧)
  • Age 75years or older(75歳以上)
  • Diabetes mellitus(糖尿病)
  • Stroke (2points)(脳梗塞・TIA)

このスコアの合計点のおおむね2倍程度が、年間脳梗塞の発症率と言われており、2点以上ならワルファリンの導入を強く勧めています。1点ならどうするかというと・・・「必要に応じて考慮」といった、何かフワ~とした表現(^_^;)

 

ちなみに、患者様への説明手順はこんな感じです。

  1. CHADS2スコアから年間脳梗塞発症率を推定
  2. 服薬により70%、上手くコントロール出来れば90%の脳梗塞が予防できることを説明
  3. アスピリンでも20%の発症率低下が期待できることも伝える
  4. 具体的な数値を提示する

例)CHADS2スコア2点の患者様の場合

・放置した場合の脳梗塞の発症率:~4%

・ワルファリン服用時

脳梗塞の発症率:4%×30%=~1.2%

大出血の発生率:~1%

・アスピリン服用時の脳梗塞の発症率:4%×80%=~3.2%

5. 以下のような点を説明し、患者様と一緒に服薬するか決める

  • 大出血の危険性があり、頻回にモニタリングが必要であること
  • 納豆、クロレラ、補助食品の摂取は控えること
  • 併用注意の薬があること
  • 基本的には一生続ける必要があること

 

ここまでが、今まで得られているコンセンサスです。ただ、心房細動症例の50%以上はCHADS2スコア1点以下であること、性別が考慮されていないこと、年齢の基準がかなり高めに設定されていること、弁膜症や機械弁といったリスクが考慮されていないこと、日本で一般的に使われているアスピリン投与量が少なすぎることなど、実は問題だらけだった訳です。CHA2DS2-VAScスコア』(Camm AJ, et al: Eur Heart J 31: 2369-2429, 2010.)なる新しいスコアも登場してきたのですが、ここではCHADS2スコアで1点以下に当たる症例でも抗凝固療法が推奨されています。つまり、世界的な流れは『リスクが高くなくても積極的に抗凝固療法!』な訳です。

ただ、これを広めるためには、ワルファリンよりリスクが少なく、煩わしくなく、かつ同等以上の効果をもつ薬が必要です。そこで登場してきたのがダビガトラン(ブラザキサ)です。非弁膜症性心房細動症例を対象に脳卒中/全身性塞栓症の発症抑制におけるダビガトラン(150mg×2/日あるいは110mg×2/日)とワルファリン(INR2.0~3.0、70歳以上の日本人は2.0~2.6)の有用性と安全性を比較したRE-LY試験(Connolly SJ, et al.; RE-LY Steering Committee and Investigators. Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2009; 361: 1139-51.)では、ダビガトランはワルファリンに比べて大出血、特に頭蓋内出血のリスクを下げ(何と60%以上!)、脳卒中/全身性塞栓症を有意に抑制したと報告しています。CHADS2スコア0~1点の集団に対してのダビガトランの頭蓋内出血の発現率は0.2%と、抗凝固療法を受けてない集団とほとんど変わりがなく、少なくともCHADS2スコア1点以下には間違いなくダビガトランは有効なようです(最近はさらに第Xa因子阻害薬であるリバーロキサバン(イグザレルト)なる薬も出てきました・・・「ヒーヒー」(>_<)!)。

このような報告を受けて、日本循環器学会から、緊急ステートメントが発表されました。これ、非専門医でも使いやすいので、是非押さえておきたいところです。

 

「あんまり長い文章書いたって、途中で読むのが面倒になるだけだよ!」って言われたばっかりで、またこんなに長々と・・・ま、内容が内容なだけにいいか(^^ゞ

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