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「この人、貧血ないな」・・・(´・ω・`)?

貧血の診察って、結構難しいです。「眼瞼結膜が白いね。これ貧血だよ。多分鉄分が足りないんだね。」だけで終わらせたら一般の方々と変わりないですし、もしかしたら重要な疾患のサインの可能性もあります。時には「貧血だけが唯一の所見」なんてことも・・・。絶対押さえて抑えておかなければダメな病態です。まずは教科書的なことを押さえておきましょう。

①貧血の原因の大部分は、鉄欠乏性貧血と二次性貧血である。

②それほど多くはないが見逃してはいけない貧血に、急性出血、骨髄異形成症候群(MDS)、ビタミンB12欠乏性貧血、溶血性貧血、多発性骨髄腫がある。

③貧血の鑑別上、重要なのがMCV(平均赤血球容積)とRet(網赤血球)。

MCVによる主な貧血の鑑別

<小球性(80fl以下)>

1)鉄欠乏性貧血

2)二次性貧血

3)サラセミア

<正球性(81~100fl)>1)急性出血2)溶血性貧血

3)再生不良性貧血

4)二次性貧血

<大球性(101fl以上)>

1)巨席赤芽球性貧血

2)網赤血球高度増加

(急性出血、溶血)

3)肝障害に伴う貧血

4)骨髄異形成症候群

☆小球性ならFe、TIBC(総鉄結合能)、フェリチンによってまず鉄欠乏性貧血二次性貧血を鑑別する。両者ともFeは低値。鉄欠乏性貧血ならTIBC高値、フェリチン低値。二次性貧血ならTIBC低値、フェリチン高値。

☆MCV>120flをみたら、まずビタミンB12欠乏を疑う(100~110程度の上昇なら、急性出血の代償かも?!)。

Ret増加をみたら、急性出血か溶血性貧血を疑う

 

ちなみに、身体所見から貧血を否定することはできません。以下の表は有名な『貧血の身体所見』ですが、特異度はそれなりなのですが、どれも感度はイマイチ・・・。診察しながら「この人、貧血ないな」なんて上級医がいたら、「ん(´・ω・`)?」って思ってて下さい(口には出さないでね(^_^;))

貧血に関連する身体所見の感度・特異度

 

感度

特異度

LR

LR

複数部位の蒼白※

35~38

90~94

4.5

0.7

顔面の蒼白

56

88

3.8

0.6

爪床の蒼白

59

66

1.7

0.6

手掌の蒼白

64

74

2.5

0.5

手掌線の蒼白

8

99

7.9

結膜辺縁の蒼白 蒼白あり

16.7

境界

2.3

蒼白なし

0.6

※複数部位の蒼白:皮膚、爪床、結膜蒼白、または顔面、手掌、結膜の蒼白

(McGee SR. Evidence-based physical diagnosis. WB Saunders; 2001 より)

一般的に使われる『眼瞼結膜の蒼白』は、カテコラミン(α刺激)による血管収縮の可能性もありますし、何より個人差もありますので、初診患者様の評価にはあまり使えないことを覚えておきましょう(同じ患者様の経過を追うにはいいかもしれません)。

また、慢性貧血ならこんな所見がみられるかもしれません。

  • 平滑舌:鉄が欠乏した際の貧血の時にみられる舌の症状です。舌の正常構造である乳頭が消失して平滑となります。悪性貧血に伴う舌炎もこんな感じ。Hunter舌炎という。痛くて食事が食べられないこともあります(思考パターンが「貧血があって食欲が低下して痩せちゃって・・・悪性腫瘍?!」になっちゃいます)。
  • 口角炎:鉄欠乏性貧血(プランマー・ビンソン症候群)では、口角炎や口角びらんもしばしばみられ、難治性です。嚥下困難なんかもみられる。
  • ビタミンB12欠乏に合併する神経症状:亜急性連合性脊髄変性症(治療に不可逆性)や年齢不相応な白髪(可逆性)
  • 匙状爪:指の腹にかかる力によりなるため、母指と示指と中指に生じやすいです。高度の鉄欠乏貧血の26%程度しか出現しません。
  • 爪甲層状分裂症:爪甲の遠位部で爪の表面が数層に剥がれる状態。鉄欠乏性貧血で高率に出現。過度なダイエットやバセドウ病などでも。
  • 機能性雑音や内頸静脈のコマ音:Hb<6程度で聴取。

ちなみにチアノーゼは低酸素血症で認めるけど、Hbが5.0g/dl以下になるとチアノーゼはみられなくなりますチアノーゼがなくても低酸素血症は否定できません!)。

 

次に、日常診療で押さえておくと便利なポイントを並べておきます。

・赤血球は1日で全体の1/120が作られ、脾臓で1/120が壊される。⇒鉄剤投与1週間で7/120の回復(Hb換算で1程度)があれば、貧血の原因は単に鉄不足・・・と予測できる。

・Hbの値はあくまで濃度。出血の急性期は失血量を反映しない(必ずバイタルサインで評価すること!)。

・体液喪失の大まかな予想

起立性低血圧 or タール便→>1,000ml

直腸診でタール便+肉眼的潜血が付or tilt test陽性(臥位→座位で心拍数が30回以上上昇)or 収縮期血圧<80mmHg→>1,500ml

・急性の正球性正色素性貧血は大抵の場合は消化管出血。

・急性出血の場合、ヘマトクリットはあとから下がってくるから、30未満なら輸血を考慮。

・網状赤血球はわずかな出血では上昇しないが、急性の大量出血だったら始めから反応して上昇する。

・MDSは小球性、正球性、大球性のいずれのパターンもとり得る(多くの場合は汎血球減少として認める)。

・大球性貧血パターンの悪性疾患は非常に稀(もちろんMDSは除く)。

・T-Bilの軽度増加とLDH増加は悪性貧血でも認める。安易に溶血性貧血と診断しない。

・悪性貧血では、ハンター舌炎による味覚障害、食欲不振、体重減少をきたし、LDHが高値となる。⇒消化管の癌と間違えられやすい!

・高齢者で骨痛と貧血をみたら、多発性骨髄腫を疑うこと。

・多発性骨髄腫にはγグロブリンが著明に増加してTPが上昇する典型例(IgG型やIgA型)と、γグロブリンが減少しTPが逆に減少する非典型例(BJP型やIgD型、非分泌型)がある。

・多発性骨髄腫を疑えば、血清と尿の免疫電気泳動、骨の画像診断、骨髄生検は必須。

・間接グロブリン優位の黄疸と貧血をみたら、溶血性貧血を疑う。

・溶血の検査で最も感度がいいのはハプトグロビン(LDHやRetじゃない)。

・溶血性貧血の診断だけで終わってはいけない。そのタイプが重要⇒クームステスト。

・溶血性貧血は悪性リンパ腫などに伴う二次性のものや、SLEに合併する劇症型のものがある。

・HbA1cは貧血(特に溶血性貧血)で低下する。もちろん、その場合は糖尿病コントロールの指標にならない。

 

・・・何かとりとめないですね(*_*) でも、大切なポイントばかりですので是非覚えておいて下さい。

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