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ヘルペス脳炎

入院中の患者様で、脳炎の可能性が高まってきました。よくある話ですが、当初は精神症状が全面にたっていた上に、その他の所見が目立っていなかったこともあり、「精神疾患かも・・・」と流れかけていました。何とか診断に辿り着けそうでひと安心。あとは患者様が後遺症なく治っていただくのを祈るばかりです。

 

当科のパワフルドクター達が、患者様のマネージメントについて喧々諤々とディスカッションをしていました。そういえば自分も、入局して間もない頃にこんなことしてたなぁ~と思い出にふけ・・・ってる場合じゃない!脳炎について勉強勉強!青木先生の『レジデントのための感染症診療マニュアル』から単純ヘルペス脳炎(herpes simplex encephalitis; HSE)を中心にポイントをピックアップしました(恐れ多くも、一部管理人の補足情報をつけました)。

 

 

  • 治療法があり、治療の有無が患者の予後を左右する最重要疾患の1つ。
  • ウイルス性の中枢神経感染症は髄膜炎や脳炎という形をとる。脳炎の場合は人格の変化、記憶・感情、幻臭という症状が全面にたつ。しかし、両者を明確に分ける事はできず『どちらの要素が目立つか』という程度の話。
  • ウイルスが培養できる環境でも半数以上の症例では検出できず、実際に役に立つのはペア血清。
  • 脳炎の原因になるウイルスはコクサッキーウイルス、エコーウイルス、ヒトヘルペスウイルス、HIV、アデノウイルス、ムンプス、EBウイルス等々様々だが、患者の予後を左右する最も大切なものは単純ヘルペスウイルスによるもの。
  • HSEは、基本的に1週間以内の経過で発症する発熱と側頭葉の症状(嚥下困難、異常感覚、幻臭)を呈することが多い。同様の症状を呈することがある脳血管障害や脳膿瘍などが鑑別対象。
  • 発症のピークは50~60歳だが、いずれの年齢でも起こり得る
  • 最も多い1型の場合、角・結膜炎、口唇ヘルペス、Kaposi水痘様発疹症、ヘルペス性ひょう疽などの先行は少なく、またそれらとの関連も不明(2型による髄膜炎では性器ヘルペスを認めることがある)。
  • 発熱は最も高頻度にみられ、頭痛も90%以上にみられる。人格変化(意識低下や意識の変動が多い)、見当識障害は75%程度、片麻痺、嚥下障害などの巣症状も1/3でみられる。頻度は不明だが失語、幻聴、視野障害、記名力低下、ミオクローヌスなども認めるが、人格変化のためしっかり評価することは難しい
  • 側頭葉の症状が特徴的とされるが、実際には硬膜下膿瘍、脳膿瘍、結核、クリプトコッカス症、トキソプラズマ症、サイトメガロウイルス感染症、腫瘍、硬膜下血腫なども側頭葉症状を呈することがある。
  • 髄液のPCRは感度98%、特異度94%と極めて有用。治療開始後1週間以内であれば陽性になる可能性が高い。
  • ルーチンの髄液検査が診断に結び付くことは非常に少ない。糖や蛋白は正常で、白血球や赤血球が多少増加する程度。数%の症例では髄液が全く正常だったとされる。培養の感度は4%以下でほとんど役に立たない。
  • MRIの典型例はT2で高信号が側頭葉(特に下面)、前頭葉に非対象性に障害される。MRIで正常ならばHSEの可能性は非常に低くなる
  •  CTでも側頭葉付近に局剤するmass effectをもったlow density areaを半数以上示す。
  • 脳波はCTよりも早期に異常を示すとされ、特徴的なspike & slow波を8割以上の症例で認める。
  • HSEを疑えば、臨床像が典型的でなくても直ちにアシクロビル(10mg/kg×3/日/14~21日)を投与する。治療効果は不十分なら再度髄液PCRを行い、陽性ならばさらに1~2週間治療を追加。
  • アシクロビルの副作用は肝機能異常、骨髄抑制、腎機能低下、神経障害などがあるが、頻度は比較的少ない
  • ステロイドが投与されることがあるが、積極的使用に対してのエビデンスはない。
  • 治療されない症例の6~8割が死亡し、適切な治療を行っても5~10%が再発する。

 

とにかく「頭の片隅にいつも脳炎」、「非典型的でもやっぱり脳炎」「検査が正常でももしかしたら脳炎」です。研修医の先生にとってはアシクロビルは少し敷居が高いかもしれませんが、副作用も比較的少ないですし、何より患者様のために『少しでも疑ったら迷わずアシクロビル』!

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