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吹き荒れる猛威 ~ノロウイルス~

ノロウイルスが猛威を振るっています(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121225-00000004-cbn-soci)。もともと多かったのはご存知の通りですし、「胃腸風邪ですね~」で終わっていたんですが、ここまで被害が広がると軽々しく言えません。ワイドショーなんかでは毎日のように「ノロウイルスの猛威!」みたいな特集が組まれています(これはこれで問題なんですけどね)。少なくとも患者様はしっかり情報を持って受診される可能性があります。やっぱり医療のプロである我々が“お昼の司会者”に負ける訳にはいきませんヽ(´―`)ノ

 

有名なノロウイルスですが、発見されたのは1968年と、まだ40年程度の歴史しかありません。米国オハイオ州ノーウォークの小学校で集団発生した急性胃腸炎の便から検出されたウイルスが当初「ノーウォークウイルス」と呼ばれ、2002年の国際ウイルス学会で「ノロウイルス」と命名されました。感染経路は主に経口感染で、十二指腸から小腸上部で増殖し、上皮細胞を脱落させることで様々な症状を呈します。耳かき一杯分の便に10億個のウイルスがいるといわれますが、体内に10個程度のウイルスが入るだけで発症する可能性があると言われています。潜伏期間は12時間~72時間で、突然の嘔吐とその後の水様性下痢を特徴とします。急性期の症状は3日程度ですが、症状が収まった後も便からのウイルスの排出は1~3週間(最長7週間)程度続きます。「生命に関わることはほとんどないけど、激しくてしつこい」が本来のイメージだったのですが、これからは「激しくてしつこい上に、もしかしたら生命にも関わるかもしれない」という、厄介な存在になってしまいました。

死亡率については、その因果関係についてのいくつかの検討があります(Tarak K. Trivedi, et. Al:Hospitalizations and Mortality Associated With Norovirus Outbreaks in Nursing Homes, 2009-2010)。オレゴン州、ウィスコンチン州、ペンシルバニア州の308のナーシングホームにおける研究で、観察期間内の入院患者数67730人、死亡数26055人、ノロウイルス感染者407人で検討されています。その結果、ノロウイルスの感染は全原因死亡、入院率増加と関連し、特に流行期間中入院を9%、死亡を11%ほど増加させると報告しています。

医療現場におけるアウトブレイク対策のガイドラインに関しては、CDCのホームページに詳しく載っています(http://www.cdc.gov/hicpac/norovirus/002_norovirus-toc.html)。ポイントは、「疑わしい場合は個室で接触予防策の下に置く(カテゴリーIB))、「アウトブレイクの間は、症状が収まってから少なくとも48時間は接触予防策の下に置く(カテゴリーIB)」、「病棟あるいは部署内での患者の動きを最小にすることを検討する(カテゴリーII)」、「グループ活動(例えば、食事会)を延期することを検討する(カテゴリーII)」など、とのかく『隔離』です。「ノロウイルスに罹患した疑いがあり、そこから回復した職員は、アウトブレイクが終息するまで、有症状患者のケアに最も適している(カテゴリーII)」という点も、見落としがちだけど大切な点ですね(^-^)

 

あと、大切なのは患者様への説明です。感染予防に関しては以下の点をおさえておきましょう。

 

  • 調理者が十分に手洗いすること、そして調理器具を衛生的に保つことが最重要
  • 逆性石鹸(塩化ベンザルコニウム)、消毒用エタノールには抵抗性が強いが、手洗いによって物理的に洗い流す
  • 85℃以上1分間以上の加熱!特にカキなどの食品は中心部まで充分加熱する
  • 生のカキを扱った包丁やまな板、食器などを、そのまま生野菜など生食するものに用いない
  • 洗浄と充分なすすぎ→消毒の順番が有効
  • 塩素系漂白剤は有効だが、使用法のエビデンスは少ない
  • 生食用カキの食品衛生法の規格基準においてノロウイルスに関する基準は設定されていない(「生食用」=「ノロウイルスがいない」ではない!
  • 有効なワクチンは開発されていない.また、ウイルスに対する免疫は感染者でも1~2年で失われる

 

最後に感染してしまった時の注意点です。

 

  • 感染者の糞便や嘔吐物を処理する場合は、手袋・マスクを使用し直接手で触れないよう注意し、作業後は手をよく洗うよう心掛ける.汚染物は飛散せぬよう袋に密閉し処分する
  • 汚染された場所を消毒する際、次亜塩素酸ナトリウム(「混ぜるな危険!」の洗剤.あまりエビデンスはないけど・・・)を使用する
  • 感染者のいる場合、トイレ・ドアノブ・蛇口・手すりなどは汚染しやすい箇所であるため、汚れを落とした後に消毒する.消毒対象が布などの耐熱性のあるものの場合、スチームアイロンの活用も有効
  • ノロウイルスは症状が消失した後も3~7日(場合によっては2週間以上)はウイルスが排出されることに留意する

 

定点報告では、発症のピークを過ぎたと報告していますが・・・これ以上被害が広がらないことを祈るばかりです。

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