Home > ブログ > 『検査陽性⇔病気』←落とし穴(T ^ T)

『検査陽性⇔病気』←落とし穴(T ^ T)

明けましておめでとうございます。今年もこのブログにお付き合いいただければ幸いです。

 
さて、今年の一発目は、年始に何の関係もない『抗核抗体』です。総合診療の外来をしていると、正直まったく見当もつかないような愁訴に出会うことがあります。その際にスクリーニングとして色々な採血を提出するんですが・・・あるんです。“抗核抗体だけ陽性”ってパターンが。それ以外は全く正常。こういった患者様に「大丈夫ですよ」って自信を持って言いたいところですが、本当のところどうなんでしょうか。 

 

最初に、抗核抗体の偽陽性率について確認しておきましょう。国際抗核抗体標準化委員会の報告では、健常人でも40倍希釈で31.7%、80倍希釈で13.3%、160倍希釈で5%、320倍希釈で3.3%に陽性が見られると報告しています1)。実に50%以上の方が、陽性になってしまうんです。また、年齢や性別で陽性率は異なり、10代の女性で最も高い陽性率を示すこと、高齢者の場合は約20~40%で陽性を示すことが知られています。抗核抗体の検査には定性検査もありますが、少なくとも『抗核抗体(+)』の報告は、何の意味もない訳です

 

健常人以外にも慢性甲状腺炎、原発性胆汁性肝硬変症、自己免疫性肝炎 、重症筋無力症でも陽性を示します。また、抗核抗体は薬剤にも誘発され、降圧薬(ヒドララジン)、抗リウマチ薬(D-ペニシラミン)、抗不整脈剤(プロカインアミド)、抗精神薬(クロルプロマジン)、抗結核薬(イソニアジド)などを内服している場合は、可能ならば内服していない状態で再検査することが必要でしょう。

 

じゃあ、症状がなければ抗核抗体が陽性でも無視しちゃっていいか・・・ここからが今回のポイントです。実際の臨床現場で抗核抗体陽性をきっかけに見落としてはいけない疾患は『SLE』『シェーグレン症候群』です。何より発症初期から完成までの症状が多彩のため、「この症状だからSLE(シェーグレン症候群)じゃない」と言えないからです。この2疾患は関節リウマチとの合併も多いため、仮に臨床経過から関節リウマチが疑われる場合も抗核抗体が陽性であれば、SLEの自己抗体である抗dsDNA抗体、抗Sm抗体、シェーグレン症候群の自己抗体である抗SS-A/Ro抗体、抗SS-B/La抗体のチェックが必要です。その他の膠原病は、強皮症ならレイノー症状、手指腫脹、皮膚硬化、多発性筋炎であれば筋肉痛、CK上昇、皮膚筋炎であれば筋症状、ゴットロン徴候、ヘリオトロープ疹など、臨床症状から疑うことが重要といわれています。

 

ここまでは抗核抗体80倍までの低力価の話。じゃあ160 倍以上の高力価の場合はどうでしょうか。これに対しては、多くの健常者を長い期間追跡しなければならず、前向きの検討は難しそうです。かといって、後ろ向きの検討のために健常人の血液が都合よく保存されている訳が・・・ありました!アメリカの国防総省に保管されている、軍人500万人以上からあらかじめ採取された約3,000 万例の内、最終的にSLE と診断された130症例を対象とした検討です2)(アメリカって国は・・・(--;))。

 

SLE130症例中、抗核抗体は全体の 78%(120 希釈以上)に認められ、診断のおよそ3年半前から陽性だったと報告しています(ただ、多くの症例では、入手可能な最初の検体が陽性であったため、診断までの時間を実際より短く見積もっています)。なお、27症例は身体所見が出現したタイミングと診断が同時で、そのほかの症例では診断前から症状は出現しており、21症例では診断の3年前から認められています(平均1.5年前)。

 

この検討は力価120倍をカットオフ値にいていることもあり、そのまま日本の現状に当てはめることは出来ないかもしれません。実際、低力価の場合((40 倍、80 倍)は、臨床症状がなければ経過観察で良いと思われます。ただ、低力価の場合でも、疑わしい症状があれば3年程度の期間は定期採血を行うことは有用かもしれません。160倍以上の高力価ならば、その他の諸検査で異常を認めない場合でも、将来の膠原病発症の可能性を考慮して、年に1~2回程度の各種自己抗体の確認が必要でしょう。

 

“検査前確率の低い場合の検査結果陽性”は、その解釈に悩むことが多いです。実際、検査結果に振り回されて、必要のない検査をどんどん追加したり、病気ではない患者様に無用な不安感を与えてしまう可能性もあります。だからといって「症状がないからこの結果は無視」では、SLEなどの早期発見が重要な疾患の診断が遅れることも・・・難しいですね(´・_・`)  きっと我々にとって大切なことは「その検査が陽性(陰性)であることが、目の前の患者様にとってどんな意味があるのか」を知っていることなんだと思います。

 

1) Tan EM, Feltkamp TEW, Smolen JS, et al: Range of antinuclear antibodies in healthy individuals. Arthritis Rheum 40: 1601-1611, 1997.

2) Arbuckle MR, McClain MT, Rubertone M, et al : Development of autoantibodies before the clinical onset of systemic lupus erythemato- sus. N Engl J Med 349 : 1526-1533, 2003.

‚Í‚ª‚«-cŒ³i100“j

Home > ブログ > 『検査陽性⇔病気』←落とし穴(T ^ T)

メタ情報

Return to page top