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夕暮れに映える“花”

先日、103歳の女性の患者様を診察させていただく機会がありました。受診日前日からの発熱で受診されたのですが、とにかくしっかりされているんです。ご自分の症状をしっかり説明されますし、礼節もしっかりされています。見た目もふっくらとしていて健康的。診察中もずっと笑顔で、こちらの気持ちがほっこりしました。 「お元気の秘訣はなんですか?」と伺ったのでが「いえいえ、何にも考えてないからですよ。お恥ずかしい限りです。」と照れ笑いされていました。素敵な歳の重ね方ですよね(^-^)

 

そんな“ほっこり気分”の中で、また物議をかもすような発言がメディアに取り上げられました。1月21日に麻生太郎副総理が社会保障制度改革国民会議の会合で、高齢者の終末期医療に関して「さっさと死ねるようにしてもらうとか…」と発言したことです(Yahooニュース)。このブログでは政治色をあまり出したくないのですが・・・この方の失言癖は治らないですね。管理人は決して嫌いではありませんが(^_^;)

 

実際の発言はこんな感じです。

「私は遺書を書いて『そういうこと(延命治療)はしてもらう必要はない、さっさと死ぬんだから』と渡してある。そういうことができないと、なかなか死ねない。いいかげん死にてぇなと思っても、とにかく生きられますから。しかもその金は政府のお金でやってもらっているなんて思うと、ますます目覚めが悪い。さっさと死ねるようにしてもらうとか、いろんなことを考えないと、これ一つの話だけじゃなくて総合的なことを考えないと、この種の話は解決することはないんだと…」

後に「私の個人的なことを申し上げた。別に終末期医療のあるべき姿について意見を申し上げたものではない」と釈明していますが、今後国会で火種になることは間違いないと思います。

 

この発言、誤解を恐れずに敢えて言わせてもらえば、「あながち間違ってないけど・・・」というのが正解でしょう。高齢者の医療費に関して、厚生労働省は「年齢別に見ると、一番医療費がかかっているのが後期高齢者であるから、この部分の医療費を適正化していかなければならない」と説明しています。特に、ICUなどの救命救急センターにおける医療には「3日で500万円、1週間で1000万円もかかっているケースがある」と報告しています。当院でも、施設に入所されていた御高齢の患者様が急変して救急搬送されてくると、挿管されてそのままICUへ・・・そういった医療を否定するつもりはありませんが、正直「?」と思うこともしばしばです

 

だからといって、「じゃあ、高齢者に対する医療行為は消極的にいこう」というのはもちろん暴論です。高齢者の方の急変にも、治療可逆性のあることはたくさんあります。中には、一時的な人工呼吸器管理により改善が期待できることもあります。単に、『若い人より治りにくい』だけです。実際、一人当たりの死亡前医療費の平均額は3日間9~10万円で、前述の『3日で500万円、1週間で1000万円』は、かなり希なケースです。少し古いデータですが、日本医師会の平成19年の推計では、高齢者の終末期入院医療費は1年間で約4600億円であり、高齢者医療保険費全体の約3.4%に過ぎないと報告しています。高齢者の終末期医療は、決して“目覚めが悪い”ものではありません。何より怖いのは、国のトップのこういった認識が『「高齢者」=「積極的な治療が必要ない人」』といった風潮を助長させるかもしれない、ということです。医師側の客観的なトリアージの判断を妨げてしまうことも心配です。

 

今年の1月20日に101歳で亡くなった詩人の柴田トヨさん。息子さんの勧めで92歳から詩を書きはじめ、98歳の時に出版された処女作『くじけないで』が160万部を超える大ヒットを記録しました。2011年に出版された第2詩集『百歳』は、東日本大震災で被災した多くの方々の心の支えになったそうです。ごく一部の詩を紹介します。

 

『私』

九十を過ぎてから 詩を書くようになって
毎日が 生きがいなんです
体は やせ細って いるけれど
目は 人の心を 見ぬけるし
耳は 風の囁きが よく聞こえる
口はね とっても達者なの
「しっかり してますね」
皆さん ほめて下さいます
それが うれしくて
またがんばれるの

 

『返事』

風が耳元で
「もうそろそろ あの世に 行きましょう」 なんて
猫撫で声で 誘うのよ
だから私 すぐに返事をしたの
「あと少し こっちに居るわ やり残した 事があるから」
風は 困った顔をして すーっと帰って行った

 

『被災者の皆様に』

あぁ なんということでしょう
テレビをみながら 唯 手をあわすばかりです
皆様の心の中は 今も余震がきて
傷痕がさらに 深くなっていると思います
その傷痕に 薬を塗ってあげたい
人間誰しもの気持ちです
私も出来ることはないだろうか?
考えます
もうすぐ百歳になる私
天国に行く日も 近いでしょう
その時は 日射しとなり そよ風になって
皆様を応援します
これから 辛い日々が 続くでしょうが
朝はかならず やってきます
くじけないで!

 

人生の最期に、こんなに素敵な花を咲かせる方もいらっしゃるんです。いや、こんな大輪の花でなくても、その方その方の美しい花があるはずです。「さっさと死ねるように」・・・何だか軽い発言に聞こえてきます

 

もちろん、『高齢者の延命治療の是非』について、軽々しく言えるはずがありません。多分、答えなんてないと思います。“延命治療”の解釈も人それぞれでしょう。ただ、まだ咲いている花を前に「どうせもうすぐ枯れちゃうんだし、水あげなくていいでしょ」なんて考え方の先生に、自分の最期をみてもらいたい人なんて、あんまりいませんよね。

タンポポ

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