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その処置、意味あるの(´・ω・`)?

管理人は2週間に1回のペースで救急外来をさせていただいています。以前は頻繁にやっていたのですが、片手間で出来るほどプライマリケアは甘くないですからね。ただ、一般外来で適切なマネジメントを行うためには、救急外来での経験が必要なのは言うまでもありません。

 

今回は緊急性の高い『上部消化管出血』のマネジメントに関してです。救急外来では日常茶飯事ですよね。ただ、あまりにも日常茶飯事すぎて、各施設での『慣例的な治療』みたいなものがまかり通っているのではないでしょうか。

 

何よりバイタルサインを安定させるのが最優先させるのは当然。①心拍数>100回/分、②収縮期血圧<100 mmHg、③臥位から起立した際の心拍数20回/分以上の増加もしくは収縮期血圧20 mmHg以上の低下、の3点は緊急性を要するポイントになります。バイタルサインと簡単な採血項目で入院の要否を選別できる『Blackford risk score』は押さえておきたいところです。このスコアが2点以上なら入院を考慮、1点以下なら専門外来への受診を指示して帰宅可としています。さらに、合計点数が入院日数や必要な輸血単位数とも相関している、良くできたスコアです。

すこあ

さて、実際の対応についてです。多くの施設で行われているであろう処置についてポイントをまとめてみました。もちろん最も大切なのは上部消化管内視鏡ですが、それについては、頼れる先輩消化器内科医を捕まえて聞いてみて下さい(^-^)

 

胃管挿入/胃洗浄

病歴(胃・十二指腸潰瘍の既往、肝疾患、鎮痛薬、・抗血小板薬内服など)や身体所見から消化管出血を疑う場合は、胃管からの吸引物で出血の確認を行うことが出来ます(感度42%・特異度91%、陽性尤度比11.1・陰性尤度比0.56→確定診断に有用)1)。胃洗浄に関しては、冷水による出血の是正や内視鏡処置の際の視界確保などといった利点が挙げられますが、残念ながらあまり有効な報告はみられません2)。

1)     Zuckerman GR,et al. An objective measure of stool color for differentiating upper from lower gastrointestinal bleeding. Dig Dis Sci.1995;40:1614-21.

2)     Am J Emerg Med. 2006 Mey;24(3):280-5 predictors of upper gastoinstestinal tract bleeding in patients without hematemesis.

 

黒色便/便鮮血反応

上部消化管出血に対する黒色便の検査特性は、感度71%・特異度88%(陽性尤度比5.92・陰性尤度比0.33)であり、黒色便の訴えがなくても否定は出来ません。上部消化管出血に対する便鮮血反応の感度・特異度は見つけられませんでした。ただ、これが陰性でも上部消化管出血は除外しないでください。便潜血検査には鋭敏な化学法とヒトヘモグロビンにのみ反応する免疫法の2種類がありますが、前者は食物の血液や鉄剤にも反応してしまうこと、後者は上部消化管出血に対しては大量でない限りヘモグロビンが消化液によって変性を受けるため陽性にはならないからです。

 

アドナ/トランサミン

恐らく多くの施設で慣例的に「とりあえずアド・トラ入れといて~」ってなっているんじゃないでしょうか?残念ながら、アドナに関してはワシントンマニュアルはもちろん、Pub Medでもまともな文献はヒットしませんでした。トランサミンに関してはいくつかヒットしますが、多くはかなり古い報告です。メタ解析された報告もあり死亡率を改善したという報告もありますが、すべて日本の保険容量をよりかなり高容量なようです(何より、トランサミン自体に上部消化管出血の適応がありません)。

3)     Effect of fibrinolytic inhibitors on mortality from upper gastorointestinal haemorrhage. BMJ 1989 Apr 29;298(6681):1142-6

 

PPI/H2RA

消化管出血に対する胃酸分泌抑制剤は、ガイドラインでも高いエビデンスレベルで紹介されています(グレードA)。胃酸分泌には基礎分泌と刺激分泌があり、PPIは両者を抑制するが効果発現まで時間がかかり、H2RAは刺激分泌は弱いですが効果発現が早いという特徴があります。胃酸は凝固系・血小板凝集を阻害するため、PPIにて胃内酸性度を低下させることが望ましく、最近のCochrane Libraryのメタアナリシスから、LeontiadisらはPPIは出血性潰瘍の輸血量と入院日数を有意に低下させることを報告しています(ただし、胃潰瘍単独の報告ではありません)4)。H2RAも輸血量等を有意に減少させたという報告はありますが、PPIに比べるとやや弱いレベルの報告が多いようです。

4)   Leontiadis GI/Sharma VK/Howden CW et al.;  Systematic review and meta-analysis: proton-pump inhibitor treatment for ulcer bleeding reduces transfusion requirements and hospital stay–results from the Cochrane Collaboration. 169-74; 2005.

 

輸血

何でもかんでも輸血することに、待ったをかける報告が増えています。スペインでの900人以上を対象としたスタディでは、急性上部消化管出血では、ヘモグロビン7g/dL未満で輸血する方が、ヘモグロビン9g/dL未満で輸血をするよりも再出血率(10% vs 16%)、6週間後の生存率(95% vs 91%)ともに良好なアウトカムをもたらすと報告しています5)。

5)     Villanueva C et al. Transfusion strategies for acute upper gastrointestinal bleeding. N Engl J Med. 2013 Jan 3;368(1):11-21.

 

その他

補助的薬物治療の基本はバソプレシンなどの強力な血管収縮剤ですが、その副作用のために24時間以上の使用は推奨されていません。また、日本では保険適用外ですが、オクトレオチド(サンドスタチン)は米国では標準的治療になっています。

 

というわけでまとめると・・・

 

☆病歴から疑わしければ胃管挿入/胃洗浄はどちらでも・・・

☆黒色便がなくても関係なし/便鮮血反応も当てにしない

☆アドナは意味なし!トランサミンは・・・やってもいいかな?

☆とにもかくにもPPI/手元になければ仕方なくH2RA

☆輸血をするのはHb7.0g/dL未満を目安に

 

といったところです。参考にして下さい(´∀`)

 

いかん

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