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測ってみたものの・・・(´・_・`)

「とりあえず測ってみたんだけど・・・」シリーズです。もちろん、何となく検査なんて御法度なのは重々承知しているのですが・・・ま、測ってしまうんです。どうしても(^_^;) で、解釈に困る・・・。今回は『何となくTSH・フリーT4』の結果出会う、『潜在性甲状腺機能亢進症』のお話です。

 

『潜在性甲状腺機能亢進症』は、TSHが低下(一般的には測定0.1mU/L以下)しており、血中T3値とT4値は正常範囲にある状態です。これは、甲状腺の機能亢進症状が出てくる前に、甲状腺ホルモンの増加に下垂体からのTSHが反応して抑制され、甲状腺ホルモンを正常範囲内に留めていると考えられています。以前は、症状のないものを『潜在性甲状腺機能亢進症』と言っていましたが、今は軽度の甲状腺機能亢進症の症状がある場合も含みます。ちなみに、甲状腺ホルモン薬以外にドパミン製剤副腎皮質ホルモン剤アミオダロン(ヨードを含有しています)などの薬剤投与、下垂体性、視床下部性の中枢性甲状腺機能低下症なども同じパターンを示すので、まずはそちらの否定をしましょう。

 

さて、症状がない、もしくはほとんどない場合のスクリーニングの是非に関しては、高齢者、特に女性で見逃されている甲状腺機能低下症の頻度の高さから、アメリカ甲状腺学会では成人に対してTSHでスクリーニングをすることを勧めています。イギリスで行なわれた研究では、外来を受診した甲状腺ホルモンを服用していない1,210人の患者のうち、16人(1.3%)でTSH値が抑制されていて、その16例を一年間経過観察したところ、1人が甲状腺機能亢進症になり、2人がTSH値は正常化した、と報告しています1)。

 

治療するかどうかですが、多結節性甲状腺腫による潜在性甲状腺機能亢進症に対する治療は、放置すれば顕性甲状腺機能亢進症になる可能性が高いので、治療することが正当化されています。しかし、結節を認めない潜在性甲状腺機能亢進症に対して治療を行うかどうかの世界的なコンセンサスはまだありません。王立ロンドン内科医会や、アメリカ内科医会は潜在性甲状腺機能亢進症は診断・治療の必要がないとしていますが、アメリカ臨床内分泌医学会は、治療をすべきであるとの立場をとっています。

 

そもそも、潜在性甲状腺機能亢進症は、放置されたときの自然経過がまだ分かっていません。特に、どの程度の割合で顕性甲状腺機能亢進症に進展するのか、といったデータはあまりないようです(恐らく、潜在性甲状腺機能亢進症の定義自体がまだ曖昧だからだと思います)。ただ、問題となる合併症の心房細動骨粗鬆症に関しては、しっかりしたデータがあります。まず心房細動。結論から先に言えば、潜在性甲状腺機能亢進症は心房細動の危険因子になります。有名なフラミンガム研究では、観察開始時の血清TSH値が0.1mU/L未満の心房細動になる確率は、正常群に比べて3.1倍と報告しています2)。骨粗鬆症に関しては、多結節性甲状腺腫による潜在性甲状腺機能亢進症患者を対象としたいくつかの研究では、正常者に比べて骨量が有意に減少していることや、TSHを補正することにより骨量減少のスピードを低下させたことが報告されています3)-6)。これらの合併症は高齢者で出やすいようです。また、60歳以上の潜在性甲状腺機能亢進症を持つ患者では、心血管系の病気で死亡する危険性が高いという論文もあります(Lancet 358; 861-865, 2001)。

 

結局、潜在性甲状腺機能亢進症をどういった場合に治療するかというと、①結節性甲状腺腫を持つ場合、②60歳以上・・・というとことでしょうか?もちろん、「将来、心房細動や骨粗鬆症になりたくない!」と患者様が強く希望された場合も治療するべきです。

 

本当は『潜在性甲状腺機能低下症』(頻度はこっちの方が多いです)についても書きたかったのですが、いつも通り“ボリューム・オーバー”になってしまいましたので、今回はここまで(^_^;)

 

1) Parle JV, Franklyn JA, Cross KW, Jones SC, Sheppard       MC. Prevalence and follow-up of abnormal thyrotrophin (TSH) concentrations       in the elderly in the United Kingdom. Clin Endocrinol (Oxf) 1991; 34: 77-83.

2) Sawin CT, Geller A, Wolf PA, et al. Low serum thyrotropin concentrations as a risk factor for atrial fibrillation in older patients. N Engl J Med 1994; 331: 1249-1252

3) Mudde AH, Reijnders FJL, Kruseman AC. Peripheral bone density in women with untreated multinodular goitre. Clin Endocrinol (Oxf) 1992; 37: 35-39

4) Foldes J, Tarjan G, Szathmari M, Varga F, Krasznai I, Horvath CS. Bone mineral density in patients with endogenous subclinical hyperthyroidism: is this thyroid status a risk factor for osteoporosis? Clin Endocrinol (Oxf) 1993; 39: 521-527.

5) Mudde AH, Houben AJHM, Nieuwenhuijzen Kruseman AC. Bone metabolism during anti-thyroid drug treatment of endogenous subclinical hyperthyroidism. Clin Endocrinol (Oxf) 1994; 41: 421-424.

6) Faber J, Jensen IW, Petersen L, Nygaard B, Hegedus L, Siersbaek-Nielsen K. Normalization of serum thyrotrophin by means of radioiodine treatment in subclinical hyperthyroidism: effect on bone loss in postmenopausal women. Clin Endocrinol (Oxf) 1998; 48: 285-290.

 

潜伏中・・・

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