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“35%”

近藤誠先生の『「余命3ヵ月」のウソ』を読みました。『患者よ、がんと闘うな』という有名な著書で、医学会に衝撃を与えた先生です。ある程度の心構えを持って読んだのですが・・・いやぁ、激しい(。-_-。) 「余命3ヵ月なんて言う医者は、誠意がないか知識がないだけ」、「医者の仕事がなくなるから、余命で脅して治療する」、「がんの余命じゃなくて、治療のせいで余命が短くなる」、「手術をするから穏やかに死ねない」等々・・・もちろん根拠と経験に基づいて理論を展開されていますし、納得させられる内容も沢山あります。ただ、この本を読んだ患者様が増えると、日本のがん診療が混乱しちゃうんじゃ・・・と危惧します。あっ、この本自体を否定している訳ではないですよ。一般の方々向けに書かれてはいますが、医療従事者にとっても非常に勉強になる内容ですし、ためになるデータや患者様のアンケートが満載の良書です。是非一度手にとってみてください。

 

この本ではインフォームド・コンセントに関して色々触れられています。毎回思うのですが、本当に難しいですよね。安心していただこうと思って「9割方大丈夫です」とお伝えしても、「ひょっとしたら残りの1割かも」と思われたり、起こることを強調しようと思って「5%程度の確率で副作用が起こります」と説明しても、「じゃあ、ほとんど起こらないんだな」と受け取られたり。以前このブログでも書きましたが、具体的な数字は非常に挙げにくいものです。

 

科学誌『Newton』6月号に「損得勘定の脳科学」という面白い特集がされていました。人間の損得勘定には「癖」があり、確率の低いものを過大評価したり、確率の高いものを過小評価したりするもので、確率加重関数 (Probability weighted function)というんだそうです。確かに、「もしかしたら当たるかも?!」なんて思って買う宝くじなんかは過大評価の典型ですし、「80%程度の確率で南海トラフ地震が起きます」と言われても、何となく過ごしちゃっているのは過小評価の最たるものです。墜落の確率が低い飛行機に乗る時には怖がるくせに、飛行機に比べると何百倍も事故率の高い車に乗る時は、事故のことなんてほとんど考えない・・・なんていうのもそうですよね。じゃあ、我々が確率をそのまま受け止められるのはどの程度なんでしょうか?答えは“35%”です。

 

 確率加重関数

 

 ま、人間なんて勝手な生き物ってことです。でも、この理論、特に35%って数字を頭の片隅に入れておけば、貴方のインフォームド・コンセントもワンランクアップ・・・かな(^_^;)

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