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バルサルタン問題について

「先生、私の飲んでいる血圧の薬は、今テレビで話題になっている薬でしょ?あの薬、変えて欲しいんだけど・・・」今月に入って、何人かの患者様にこのように言われました。バルサルタン(ディオバンRの効果に関しては、実感としても感じてはいるものの、患者様のアドヒアランスが低下しては元も子もありません。もちろん、快く変更しています。

 

患者様は、そういう情報に敏感になっています。我々も事実をしっかり把握しておく必要がありますね。今回はちょっと社会派でいきます(゚ー゚☆ (決して個人や団体の批判や中傷ではありませんので、ご了承下さい)

 

まず、今回の経過を、朝日新聞の記事を参考に時系列で並べてみます。

 

2000年11月:ノバルディス社よりディオバンR販売開始

2002年1月:望月正武元慈恵医科大学教授らが臨床研究を開始

2004年1月:松原弘明元京都府立医科大学教授らが臨床研究を開始

2007年7月:Lancetが慈恵医大の臨床研究(Jikei Heart Study)を掲載

2009年8月:European Society of Cardiology(欧州心臓病学会)が京都府立医大の臨床研究(Kyoto Heart Study)を掲載

2012年4月: LancetがJikei Heart Studyに対する疑惑指摘の論文を掲載

2013年2月:European Society of CardiologyがKyoto Heart Studyの掲載を撤回

2013年3月:ノバルディス法人が社内調査を開始

2013年5月:社内調査により元社員が身分を明示せずに研究に携わっていたことが判明

2013年7月11日:京都府立医大が、Kyoto Heart Studyに対する調査報告を発表

2013年7月29日:ノバルディスが、第三者調査委員会の報告書を発表

2013年7月30日:慈恵医大が、Jikei Heart Studyに対する調査報告書を発表

 

ここで重要になってくるのが、2012年のLancetに掲載された、京都大学医学部附属病院循環器内科由井芳樹教授が報告した論文です(Concerns about the Jikei Heart Study)。まずKyoto Heart Studyに関しては、①Webで収集されたデータ、解析用のデータ、論文のデータの症例数が違うこと、②Web収集データと解析用データでの解析期間が違うこと、③論文では患者背景に多少のバラつきがあったが、報告書では解析方法が変わっておりバラつきがないことになっているといった指摘がされています。一方、Jikei Heart Studyでは①大学が保有しているWebデータと最終的な解析データの血圧分布が異なっている、②大学保有データでは6ヵ月と12ヵ月の段階で血圧推移に統計学的な有意差が出ているが、最終データでは有意差がなくなっている(イベント抑制効果を単に血圧コントロールの差と指摘されることを危惧して?)、③母集団が大きい割に、試験開始前の血圧値が揃いすぎている、といった疑問点があるようです。まだ最終報告ではないようですので、今後ますます問題点が抽出される可能性があります。

 

少し難しい話になってしまったので、問題となっている構図を簡単に言うと、『京都府立医大、慈恵医大、滋賀医大、千葉大、名大が関与したバルサルタンと非ARBとを比較した大規模な臨床試験に、名前を隠してノバルディス社の社員が参加し、出てきたデータ(他の薬に比べて脳卒中や狭心症などの発症リスクが下がりますよ)を利用して宣伝をした結果、年間1千億円以上を売上げた』といった感じです。しかも、Jikei Heart Studyに関しては、その元社員が一人でデータの解析を行っていた。しかもしかも、元社員の所属先として記された大阪市立大の研究グループは存在しない・・・(-。-;

 

 

個人のブログではないのでこの辺で止めておきます。ただ、ここだけは是非患者様に伝えて下さい。「確かに今回のことは非常に大きな問題です。そういった薬を飲み続けるのも抵抗があると思いますので、もちろん変更します。でも、今回は販売された後に行った研究に問題があったわけで、販売の認可が下りる前には問題ないんです。世界でもトップクラスを誇る、日本の承認審査で合格して販売された薬なので、薬自体には何も問題はないんです。決して貴方にとって害になっている訳ではないので安心して下さい。

 

――会社がどうこう何て、この際大した問題じゃありません!我々ができることは、可能な限り患者様の持っている不安に答え、安心していただくことです(・∀・)

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