Home > ブログ > プライマリケア医だった『帯状疱疹』(・∀・)!

プライマリケア医だった『帯状疱疹』(・∀・)!

“50-50-50ルール”を御存じでしょうか?帯状疱疹に対しての抗ウイルス薬は一般的に「50歳以上」、「50時間(48-72時間)以内」、「50個以上の皮疹」に有効、という覚えやすいルールです。ただ、帯状疱疹後神経痛の発症を抑制するものは抗ウイルス薬程度程度しかないので、結局のところ「どんな症例にも抗ウイルス薬」になっちゃうんですが(^^ゞ

 

いきなり結論みたいになっちゃいましたが、今回は一般外来でもよく遭遇する『帯状疱疹』について。神経節に潜伏感染した水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus: VZV)が再活性化しておこる疾患なのは、説明の必要もないと思います。加齢、疲労、ストレスなどで細胞性免疫が低下することによって起こるこの病気、「高齢化社会」、「ストレス社会」と言われる現代にとって、知ってないわけにはいかない疾患です。

 

VZVは初感染では上気道から侵入し、水痘を発症させます。その後VZVは知覚神経を上向し、生涯に渡り神経節に潜伏感染します。宿主の免疫力が低下して再活性化すると・・・ま、これは当たり前すぎるからいいですね(・∀・) 皮疹は全身のどこにでも生じますが、胸神経領域が最も多く、顔面では三叉神経第一枝が好発部位です。ただ、稀に2箇所以上、あるいは両側性に生じる症例もありますので注意が必要です。また、皮疹発現から2、3日前、早い場合は1週間以上前に神経痛がみられることは、帯状疱疹を診察する上でのピットフォールです

 

自然経過を知っていることは大切です。前駆症状の疼痛と同じ部位に紅斑・丘疹→水疱・膿疱→びらん・潰瘍→痂皮の順番で経過し、約3週間で自然治癒していきます一つの水疱が大きく、水疱のまわりに紅斑がない場合、あるいは血疱を伴う場合は重症化しやすいと言われています。

ぞすたーのず

 

帯状疱疹を診た場合、「おぉ~、帯状疱疹だぁ」だけで終わってはもちろんダメ!「何か背景因子があるかも?!」と、条件反射で思えるようにしましょう(^-^) 東京慈恵会医科大学で行われた患者背景の検討では、疲労49.0%、アトピー性疾患34.3%、アトピー性皮膚炎3.4%、悪性腫瘍14.7%、糖尿病2.5%、膠原病2.0%、その他4.4%と報告しています。疲労が約半数ですが、これを軽視してはいけません。十分な休養をとらないことで死亡に至るケースもあるそうです。糖尿病も注意が必要です。特に血糖コントロール不良例は帯状疱疹が重症化することが多く、また糖尿病自体も悪化することがあります。さらには、上記の経過より治癒が遅れている場合や再燃する場合はHIVの確認も必須です。

 

さらに、プライマリケアの場面でも絶対に見落としたくないのが『ラムゼイ・ハント症候群』と『眼部帯状疱疹』!『ラムゼイ・ハント症候群』は、顔面神経の膝神経節に潜伏感染したVZVの再活性化によるもので、顔面神経麻痺に加え、耳介の帯状疱疹、難聴、めまいなどの第8脳神経の症状を呈します。これらの症状が同時に出てきてくれれば診断も楽なのですが、最初は耳鳴や肩こり、後頭部痛や舌のしびれのみ、皮疹も軽度の発赤のみ、なんてこともザラです。自然治癒しないことも多く、疑ったらすぐに専門医に紹介するほうが無難です。『眼部帯状疱疹』も厄介な病気です。顔面神経第1枝は鼻部から眼球、結膜など分布しているため、鼻背部や鼻尖部の皮疹(ハッチンソン徴候)を認めた場合は、高率に眼合併症を来たします。結膜炎、角膜炎、虹彩毛様体炎、網膜炎など、非専門医にはお手上げの病態ばかりなので、早めに眼科に紹介しましょう。

 

治療はもちろん抗ヘルペスウイルス薬の投与です。ポイントは①例え軽度にみえてもその後拡大する可能性があるため、特別な理由がないかぎり外用薬は使わない、②免疫不全者は入院しての点滴静注を行うこと、③皮疹が出現した段階は既にウイルス増殖が盛んな時期なので、出来る限り早期に投与を行う、④腎機能を考慮しつつ、十分量を投与する、⑤即効性はなく翌々日ぐらいまでは皮疹が増悪する可能性があるが、重症化や副作用確認のため早めに受診してもらう、⑥症状が軽快しても、必ず7日間飲みきってもらうことです。なお、急性期の痛みはNSAIDSなど通常の鎮痛薬でOKです。

 

あと、問題となるのは『帯状疱疹後神経痛(post-herpetic neuralgia; PHN)』ですよね。実際の発症頻度は軽度のもので13%、中等度以上のもので2%という報告があります(50歳以下での発症は0%となっていて、この辺りは何か印象と違うような・・・)1)。最初に紹介した“50-50-50”はそのままPHNの発症リスクですし、血糖コントロール不良例などもPHNの発症が増えると言われています。抗ウイルス薬の投与が早ければ早いほど発症頻度が下がるという報告があります(バルトレックス>ゾビラックス)。

1)     Helgason S et al. Prevalence of postherpetic neuralgia after episode of herpes zoster. Prospective study with long term follow up. BMJ. 2000 Sep 30; 321(7264): 794-6.

 

痛みのコントロールは、神経障害疼痛に対する治療になります。米国神経学会(American Academy of Neurology)ではPHNの治療として三環系抗うつ薬(トリプタノールR)、ガバペンチン(ガバペンR)、プレガバリン(リリカR)、オピオイド、局所リドカインパッチを推奨しています2)。ただ、プレガバリンとオピオイドに関しては、本邦で承認されていません。承認されている薬としてノイロトロピンがありますが、こちらは副作用が少なく安価なので効果があれば処方してもいいと思います。また、アロディニアのような電撃痛を伴う場合はカルバマゼピン(テグレトールR)なども良い適応です。

2)     Dubinsky, R.M, et al.: neurology, 63, 959(2004).

 

何か今回は教科書的なブログになってしましました。ま、基本が大切ってことです(๑≧౪≦)

Home > ブログ > プライマリケア医だった『帯状疱疹』(・∀・)!

メタ情報

Return to page top