Home > ブログ > 自己“炎症性”疾患・・・知っていますか?

自己“炎症性”疾患・・・知っていますか?

『自己炎症性疾患(autoinflammatory diseases)』を知っていますか?総合診療をやっていると時々頭に浮かんでくるんですが・・・そのまま消えていくことが多いです(^_^;) 長い経過の発熱で受診され、「膠原病かな?結核も否定しなくちゃ。もしかしたら悪性腫瘍かも・・・」なんて考えながらあれやこれや検査を行って、「何にも異常ないなぁ。どうやって患者さんに説明しよう」何て思いながら次回の外来に望むと、「先生、すっかり治っちゃいました」・・・。実際よくあるんです。で、カルテを遡ると、同じようなエピソードに遭遇(汗)。いやぁ、見落としているんだろうなぁ~。よし、勉強ヽ(´▽`)/

 

『自己炎症性疾患』は、1999年にKastner, O’Shea, McDermottらにより提唱された、比較的新しい疾患概念で、自然免疫の異常によって自己免疫や感染症の直接的な関与なしに全身の炎症を起こす疾患群です。 2008年には、Kastnerらによって『誘因が明らかではない炎症所見』『高力価の自己抗体や自己反応性T細胞が存在しない』『先天的な自然免疫の異常』の3項目によって再度定義付けられています。

 

この疾患を理解するには、ちょっと免疫のお勉強が必要になります。もともと、免疫には「獲得免疫」「自然免疫」の2つのシステムが存在します。「獲得免疫」は病原微生物に特異的に反応するのに対し、「自然免疫」は非特異的に、もしくは病原微生物の共通部分をパターン認識して応答します。通常、この2つの機構が共同で感染防御にあたります。

「獲得免疫」の異常は、ご存知の通り『自己免疫性疾患』です。『自己免疫疾患』では自己抗体や自己反応性Tリンパ球などを認めるため、これらを測定することで診断の助けとなります。それに対して、「自然免疫」はマクロファージ、樹状細胞、NK細胞、好中球を責任細胞とすると推測されていますが、残念ながら特徴的な自己抗体などは確認されていません。そのため、診断に際しては、臨床症状や、(同定されているものについては)遺伝子検査によるしかありません。おまけに『自己炎症性疾患』には、典型例とともに非典型例が存在するため、診断に苦慮するわけです。現在考えられえている疾患は以下の通りですが、「動脈硬化に伴う病態は全部自己炎症性疾患!」なんて考えもあって・・・もうパニックです(ToT)

 

《自己炎症性疾患の分類》

 

A.狭義の自己炎症性疾患

家族性地中海熱(familial Mediterranean fever:FMF)

クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)

家族性寒冷蕁麻疹

Muckle-Wells症候群

CINCA症候群/NOMID

TNF 受容体関連周期性症候群(TRAPS)

高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)

ブラウ症候群/若年発症サルコイドーシス

PAPA(化膿性関節炎・壊疽性膿皮症・ざ瘡)症候群

中條-西村症候群

Majeed症候群

NLRP12関連周期熱症候群(NAPS12)

インターロイキン1受容体アンタゴニスト欠損症(DIRA)

インターロイキン36受容体アンタゴニスト欠損症(DITRA)

フォスフォリパーゼCγ2関連抗体欠損・免疫異常症(PLAID)

 

B.広義の自己炎症性疾患

全身型若年性特発性関節炎

周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・リンパ節炎症候群(PFAPA)

成人スチル病

ベーチェット病

痛風

偽痛風

Schnitzler症候群

2型糖尿病 

慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)

 

ほとんどが小児の疾患ですが、『家族性地中海熱』『TNF 受容体関連周期性症候群(TRAPS)』は、成人でも出会う可能性があるので、押さえておきましょう。

 

家族性地中海熱(familial Mediterranean fever:FMF)

1945 年に始めて報告され、1958 年に『家族性地中海熱』と命名されました。遺伝形式は常染色体劣性で、原因遺伝子はpyrin と呼ばれる炎症制御蛋白をコードしているMEFV(Mediterranean fever)とされています。全世界で 10,000 人以上の症例が報告され、大部分は地中海沿岸地域の民族(ユダヤ人、アラブ人、トルコ人など)からのものです。日本での報告は現時点で100 例強ですが、かなりの症例が見落とされていると思います。

大部分は小児期に発症しますが、本邦では地中海沿岸地域よりも発症年齢が高く、1/3が青年期以降に発症すると報告されています。運動・心理的ストレス・感染・外傷などが引き金となることがあり、漿膜炎(腹膜炎>胸膜炎・心膜炎、関節炎)を伴う急激な発熱(38~40℃)が半日~3 日間持続します。本邦では腹痛の出現頻度は約60%と高率に報告されています

発熱発作時の採血では好中球増多、CRP 上昇、赤沈亢進などの強い炎症反応がみられますが、それ以外に目立った異常は認めません(そのため、「結局何かのウイルス感染だったんだね」で終わってしまう訳です)。ただ、非常に重要な合併症としてアミロイドーシスがありますので、“どこかで誰かが”気付く必要があります。診断は遺伝子検査になりますが、さすがにプライマリケアとはかけ離れちゃうんで省略!治療は免疫抑制剤やステロイドは無効で、コルヒチンが有効です(アミロイドーシス発症抑制効果もあります)。

 

 

TNF receptor-associated periodic syndrome(TRAPS)

遺伝性周期性発熱症候群のなかでは FMF に次いで頻度が高く,これまでに 150 例以上(本邦では10例)が報告されています。常染色体優性遺伝で、ほとんどは幼児期に発症しますが、発症年齢は様々で、発熱期間も5日~7日程度から、中には数か月にわたって持続したという報告もあります。筋痛結膜炎、眼窩周囲の浮腫、単関節炎、皮疹などの症状を認めることもあります。やはりアミロイドーシスの合併が問題です。発熱に対してNSAIDSは有効ですが、筋痛等への効果は乏しく、プレドニゾロン(1mg/kgを7~10日かけて減量)がよく反応します。

 

改めて勉強すると・・・やっぱ見落としているんだよなぁ(涙)。今度こそ・・・です(・∀・)

 netu

Home > ブログ > 自己“炎症性”疾患・・・知っていますか?

メタ情報

Return to page top