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低血糖の恐怖(||゚Д゚)

医学書院が刊行している『週刊医学界新聞』をご存知ですか?医学関係で勉強になるウェブは沢山ありますが、このページは研修医からベテランの先生まで、どの世代の先生が読んでも勉強になります・・・って、実はちょっと宣伝(笑)。今年一年間、『週刊医学界新聞』で当科が連載を持ちます。タイトルはズバリ『診断推論―キーワードからの攻略』。教育的な症例をどんどん紹介していきますのでお楽しみに。

 

連載の第一回で、当科の山中教授が取り上げたテーマは『薬剤性低血糖』でした。透析患者様に対して透析で除去されない抗不整脈薬(シベノール®)が投与されていたことによる医原性の低血糖・・・失敗症例って学ぶところが多いですよね。もちろん、失敗はしないに越したことはありませんが(^_^;)

 

 

まず、2型糖尿病に対する厳格なコントロールと従来のコントロールを検討したランドマークスタディであるUKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)の中から、低血糖に関する部分のポイントを挙げます。

 

 

 

厳格コントロール群の約4分の1で、少なくとも1年に1回の低血糖発作を認めた

・従来のゆるやかなコントロール群では、低血糖発作の割合は1年目で約5%と低かったが、経過観察中に次第に増加し、12年後には約20%に認めた(SU剤やインスリンで治療を受けた患者とほぼ同程度)。

・厳格コントロール群と、従来のゆるやかなコントロール群とを無作為に解析した結果、1年間に低血糖発作を有するのはクロルプロパマイド群で11.0%(医療介入が必要な低血糖は0.4%)、グリベンクラミド群で17.7%(0.6%)、インスリン群で36.5%2.3%)、メトフォルミン群で4.2%(0%)だった。

・低血糖により死に至ったのは、インスリン投与の厳格コントロール群で1例のみ認められた。

 

 

また、2010年にNEJMに掲載された、低血糖のみを解析対象としたADNANCE study もおさえておきたいところです。

 

・厳格コントロール群vs従来のコントロール群での重篤な低血糖の発症率は2.7% vs 1.5%

・重篤な低血糖から 大血管イベント発症までの期間は1.56年vs 1.05年

重篤な低血糖は低血糖を起こさない患者に比べて、大血管イベントが2.88倍、微小血管イベントが2.68 倍、死亡が2.69倍

・繰り返す重篤な低血糖自身は心血管イベント発生率や死亡率と関係しない(一度でも低血糖を起こしたらアウトΣ(゚д゚;)?!)。

 ・頻回に低血糖発作を起こす人の年死亡率は、強化療法の方が、標準療法より少ない(低血糖がなければ両群の年死亡率は同じ)。

 

 これらをまとめると、「低血糖はゆるやかなコントロールをした方が低血糖発作を起こしにくく、結果として心血管イベントの発症率や死亡といったアウトカムを改善する」ということになります。

 

「低血糖状態が遷延することは悪い」ってことは、みなさんも十分承知されていると思います。ただ、遷延する低血糖が後遺症や死亡率にどの程度影響を与えるかといった検討は、実はあまりされていません。ただ、Case Reportレベルでの報告をみても「失外套状態」、「高次機能障害」、「失見当識」、「痙攣」等、その後のADL低下の原因となる病態が挙げられていますので、当然見落とし厳禁です。特に、何らかの原因による二次的な低血糖は、我々が気づかないと、その患者様の人生を台無ししてしまうかもしれません。薬剤性低血糖に関しては、山中先生が詳細に書かれていますので、ここでは二次的に低血糖を来す疾患や病態を挙げておきます(Service FJ:N Engl J Med 332:1144,(1995))。

 

1.各種ホルモン分泌不全

  下垂体機能不全・成長ホルモン単独欠損症・ACTH単独欠損症副腎不全

2.敗血症

3.腎不全

4.肝不全

5.うっ血性心不全

6.乳酸アシドーシス

7.飢餓状態、神経性食思不振症

8.ショック

9.非β細胞腫瘍(IGF-1 or -2産生腫瘍)

10.褐色細胞腫の切除後

 

低血糖について記載し始めるとキリがなくなりますので、とりあえずこのあたりで。最後にプライマリ・ケアらしく「低血糖について患者様に伝えておくこと」を載せておきますので参考にして下さい(・∀・)

 

運動は食前や食後すぐに行うことを避け、食後1時間以降に行なうように指導する。

・インスリン治療中の患者に対しては自分勝手に判断せず、決められたインスリン量をきちんと守る

・間食を摂るように指示されている患者では低血糖の危険性を説明し、必ず間食を摂るように指導する。

・入浴もインスリンの吸収を高めブドウ糖を消費するので、インスリン治療中の患者には食前に入浴しないように注意する

「低血糖の予兆」を知ってもらうことが大切。一般に意識障害のような重い低血糖症状が現れる前に「目の前がチカチカする」、「考えがまとまらない」、「動悸がする」など比較的軽い交感神経系の亢進症状が現れる。また個々の患者毎に低血糖発作前に現れる症状の特徴を知っておくことが、重篤な低血糖発作を予防する上で重要。

・低血糖状態が起こってしまった場合には一刻も早く糖分の補給を行なう。経口摂取が可能な場合は、ブドウ糖(5~10 g)またはブドウ糖を含む清涼飲料水(150~200ml)を飲ませる。砂糖の場合は少なくとも倍量(10~20g)飲ませる必要がある。低血糖の遷延を防ぐため、可能ならばスナックなどの炭水化物も。

・αグルコシダーゼ阻害薬を服用している患者では、砂糖を含む食品を摂っても血中のブドウ糖が増えにくいため、ブドウ糖を常備させておくこと。

・患者が昏睡状態に陥ってしまった場合は、上記の処置を自分で出来ないので、家族がグルカゴンを筋注あるいは皮下注射する必要がある。

 

低血糖

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