- 2014-03-23 (日) 22:48
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先日のブログで書かせていただいた『週間医学新聞』の『診断推論―キーワードからの攻略』、第三回は当科の田口先生が担当されました。今回のお題は『刺青を背負った男』・・・これだけでも、「早く診断をつけて、治療して、早々にお帰りいただこう(´・ω・)」って思っちゃいます。もちろん、医療の現場で患者様ごとに対応を変えてはいけないことは重々承知していますが、やっぱり人間ですからね。でも、だからって思い込みは厳禁!今回の症例は、そんな思い込みに「ちょっと待った!」な教育的な症例です。
今回は『若年者の高度な気流障害』がキーワードになっています。「気管異物」、「気道熱傷」、「急性喉頭蓋炎」、「喘息重責発作」、「アナフィラキシー」などが挙がっていますし、これらは救急外来でも一般外来でも重要な鑑別対象です。よく、主訴を『呼吸困難』としていることがありますが、これは鑑別として使うにはやや「大きすぎるカード」です。だって、救急外来にいらっしゃる患者様って、みなさん「ハーハー」されてますし・・・(´・ω・)
ここでちょっと『呼吸』のお勉強。基本的なことなんですけど、時間とともに忘れちゃっていますから、むしろ管理人の復習ですヾ(´▽`;)ゝ
そもそも、呼吸とひとことで言っても、『換気(ventilation)』と『呼吸(respiration)』に分かれます。『換気』は日常生活でも使いますよね。「空気が淀んでいるから、窓を開けて換気しよう」みたいな。つまり、単に「空気を出し入れすること」です。“Drive”ですね。それに対して『呼吸』は「酸素と二酸化炭素の交換」、つまり“Pump”です。だから、厳密に言えば人工呼吸器は酸素を送り出しているだけなので、『ベンチレーター』が正しい言い方なんです。多分(汗)。ちなみに、魚はエラ呼吸ですので、『換気』ができず、もちろんタバコも吸えません(当たり前ですが)。
さらに『呼吸』は『外呼吸』と『内呼吸』に分けられます。『外呼吸』は気道に吸い込まれた空気を肺胞レベルで酸素と二酸化炭素を交換し、『内呼吸』は組織内部で行われる酸素と二酸化炭素の交換です。
これを踏まえておくと、『呼吸困難』の鑑別診断がスムーズになります。今回の症例を『呼吸困難』として望むと戦う敵が多くなってしまいますが、『換気障害』となれば、相手の姿が見やすくなることが分かると思います。
色々な診察ポイントはありますが、今回は呼吸音の聴診だけ。とにかく「“Wheezing”と“Stridor”の違いが分かる」ことが大切です。“Wheezing”は気管支の痙攣で「息を吸えるけど吐けない状態」。腹筋と胸郭を使って一生懸命吐くから呼気時間が長くなります。それに対して“Stridor”は上気道の狭窄で「吸えないし吐けない状態」。ゆっくり聴診、というよりは、急いで耳鼻咽喉科か麻酔科など、挿管のプロの先生を呼ぶ必要があります。では、“Wheezing”も“Stridor”のいずれも聴取する病態は?ズバリ、アナフィラキシーです。『気管支痙攣+声門浮腫』によるもので、重症のサインですので、覚えておきましょう。
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