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知ったもの勝ち!“SAPHO症候群”

SAPHO症候群――先日NHKの『総合診療医ドクターG』で扱われていたそうです(観てませんが(^_^;))。総合診療領域ではほぼcommon disease化していますが、よく考えたら一般的には“?”な病気ですよね。ただ、今回調べるにあたってネット上では「私の症状もこの病気かも?!」みたいな書き込みが多数ありました。こういった病気は、医者側が知っているか知らないかで、患者様の人生が大きく変わってしまいます。是非さえておいて下さい。

 

SAPHO症候群は滑膜炎(synovitis)座瘡(acne)膿疱症(pustulosis)骨化症(hyperostosis)骨炎(osteitis)の頭文字をとったもので、独特な骨・関節・皮膚の症状を呈する症候群です。提唱されたのは1987年ですので、まだ四半世紀程度しか経っていません。原因はまだ不明ですが、遺伝的素因個人において、微生物によって引き起こされる自己免疫反応に起因して”反応性関節炎”につながる、という仮説がたてられています(テトラサイクリンやアジスロマイシンの長期的投与後による症状改善の報告もあるようです)。

 

主に前胸部で無菌性の骨炎を認め、鎖骨と第一肋骨部に骨硬化と腫大が見られるため、胸痛を主訴に受診される方もいらっしゃいます『“急がない胸痛”もあるんです』もご覧下さい)。ひどくなると、胸鎖部に骨性膨隆がみられることもあります。脊椎骨盤、表在関節、下顎骨が障害されることもあります。HLA-B27陽性、Crohn病、潰瘍性大腸炎を合併することもあり、体軸の関節が侵されやすいことより脊椎関節症との関連も示唆されています。皮膚症状は掌蹠膿疱症重症座瘡があり、稀にSweet病や壊疽性膿皮症といった、いわゆる好中球由来の皮疹を認めることもあります。ちなみに、尋常性乾癬もよくみられますが、SAPHO症候群の一病型に含めるかは、まだ結論が出ていません。手掌足底に掌蹠膿疱症などがある場合は比較的疑いやすいのですが、皮膚症状と関節症状が数年の期間をおいて発症することもあり、注意深い医療面接が必要です。

 

SAPHO

 

骨糜爛と骨新生が混在しますが最終的に骨化しますので、胸部X線では骨濃度の上昇を認めるようですが・・・なかなか胸部X線のみで見つけるのは難しいです。可能ならば骨シンチをとりましょう。胸鎖関節、胸骨柄、胸骨に、特徴的な“bullhead sign”を認めます。

 

 SAPHOgazou

 

皮膚症状と関節症状のどちらが先行するかはまだ分かっていませんが、23年間、120例(男性50例、女性70例)の検討では、皮膚症状の先行した症例が39%、関節症状が先行した症例が32%、同時期であった症例が29%と報告しています。また、皮膚症状は全体の84%にみられ、その内訳は掌蹠膿疱症32%、尋常性乾癬10%、重症座瘡18%、掌蹠膿疱症と尋常性乾癬の合併が18%、掌蹠膿疱症、尋常性乾癬、重症座瘡の3つの合併が7%とも報告しています。

 

Hayem G, Bouchaud-Chabot A , et al; SAPHO syndrome: a long-term follow-up study of 120 case. Semin Arthritis Rheum. 29(3): 159-71. 1999.

 

このスタディが最も大きなものなようで、まだ確定した診断基準は存在しません。イタリアからコホート研究の報告もありますが、これもわずかに71症例です(Arthritis Rheumatism 2009:61;813-821)

 

 

治療に使用される薬剤はNSAIDs、経口および関節内コルチコステロイド、抗菌薬、ビスフォスホネート、生物学的製剤などがありますが、残念ながら現段階で確立した治療法はありません。先程のイタリアのスタディでは71症例中49症例(68%)はNSAIDS単独での疼痛コントロールができず、ステロイド(10-25mg/日)が必要となったこと、ステロイドの投与量を減らすため21症例でDMARDS(サラゾスルファピリジン2-3g、メトトレキサート10-20mg、レフルノミド20mg)の投与を受けたことを報告しています。アジスロマイシン(500 mg/週×25)を使用して27人のSAPHO症候群症例で、治療16週間後に骨炎のMRIスコアの有意な改善を示した研究もあります。また、難治症例に対する抗TNF-αも報告されています。さらに、症例報告レベルでは、ビスホスフォネートで疼痛コントロールを行っているものもあるようです。

Rheum Dis Clin North Am. 2013 May;39(2):401-18.

 

この病気に限りませんが、医療者側が知ることが大切です。それによって症例が蓄積され、診断基準が確立し、治療法が確立していくのです。

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