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『レジオネラ注意!』の季節です(=_=)

埼玉・北本市の温泉施設で、利用客から『レジオネラ菌』が検出され、男性客1人が亡くなりました(http://mainichi.jp/select/news/20140615k0000m040047000c.html)。臨床現場ではレジオネラ肺炎が肺炎球菌性肺炎と並んで重症化しやすいことはほぼ常識ですが、一般の方々にとってはあまり聞き覚えのない名前だったのではないでしょうか。亡くなられた方は本当にお気の毒ですが、これを機会にレジオネラ肺炎への警戒が高まればと思います。

 

レジオネラの由来は有名ですよね。1976年にアメリカのペンシルベニア州で在郷軍人大会が開かれた際、参加者と周辺住民の計221人が通常の抗菌薬に反応の悪い原因不明の肺炎にかかり、34人が死亡しました。当時はウイルス感染やリケッチアなどが原因として考えられてようですが、最終的に未知のグラム陰性桿菌が患者の肺から検出されました。この菌を在郷軍人 (legionnaire) にちなんでLegionella pneumophila と名づけられました。土壌や河川、湖沼など自然界に生息するので、必ずしも温泉固有に生息しているものではありません。循環式浴槽など水が停滞する39℃前後の環境で増殖しやすいのですが、その水を飲んでもほとんど感染することはありません。この水中の微粒な菌が、シャワーや、湯気など空気中に浮遊する蒸気や、霧状となり、肺に入ると感染するとされています。近年では、空調設備の冷却塔水、循環式浴槽水、給湯器の水などに生息するバイオフィルムに寄生、増殖し、深刻な問題となっています。今回のニュースの舞台になった、いわゆる“スーパー銭湯”なんて、使用している人に温泉なんて自覚がないと思いますので、病歴聴取の際は“閉じた質問”が必要になります。

 

先にポイントだけ挙げておきます。

 

  • 喫煙者慢性肺疾患免疫低下など危険因子と関連
  • 軽度の低ナトリウム血症を伴うことが多い
  • 約40%に下痢を伴う(LR+:5.8)
  • 横紋筋融解症を伴い、CPK上昇を認めることがある(LR+:5.8 )
  • 頭痛や意識障害など中枢神経症状LDH>700U/ml、高熱も特徴的
  • 尿中抗原は感度70~80%、特異度100%とかなり有用

 

尿中レジオネラ抗原は重症度が高いほど、経過時間が長いほど、尿が濃縮するほど感度があがること、レジオネラには10種類以上の血清型が存在しますが、尿中抗原は1型しか感知しないことは覚えておく必要があります(Blazquez RM, et al. Eur J Clin Microbiol Infect Dis 2005;488-491)。

 

身体所見等については、以前のブログもご覧下さい(究極の肺炎診断法(^o^)?!)。

 

さて、色々な文献をみてみましょう。

 

最初は、スイスのパーゼル大学病院に入院した82人のレジオネラ肺炎患者と368人の非レジオネラ肺炎患者を背景とした『レジオネラ肺炎の予測因子』についての報告です。

 

Fiumefreddo et al. Clinical predictors for Legionella in patients presenting with community-acquired pneumonia to the emergency department. BMC Pulm Med (2009) vol. 9 (1) pp. 4

 

6つの項目のカットオフ値をそれぞれ①体温>39.4℃(p<0.0001)、②痰がない(p<0.0001)、③血清Na<133mEq/L(p=0.011)、④LDH>255U/L(p=0.007)、⑤CRP>18.7mg/dl(p<0.0001)、⑦血小板数 <17.1万(p<0.0001)それぞれを各1点として0~1点ならレジオネラ肺炎の確率は3%、4点以上でレジオネラ肺炎の確率は66%というものです。まずまず使えるかなってところです。

 

次は市中発症のレジオネラ肺炎540症例の『院内死亡の予測因子』を検討したフランスの報告です。

 

C. Chidiac, et al. Factors associated with hospital mortality in community-acquired legionellosis in France ERJ April 1, 2012 vol. 39 no. 4 963-970

 

540人中44人(8.1%)の患者が死亡し、生存の予測因子は①男性であること(p=0.01)、② 60歳未満(p=0.02)、③一般的な症状(p=0.006)、④ ICUへの滞在(p<0.001)、PSIスコアがclass II–IIIであること(p=0.004)が挙げられ、多変量解析により死亡の6つの予測因子を『女性』『年齢』、『ICU入室』、『腎不全』、『ステロイド治療』、『CRP>5mg/dl』と報告しています。

 

「あれ、低Na血症はないのかな?」なんて思っていたら、今年になってチリのサンチアゴ市の4つの病院のICU入院の重症成人患者の多施設前向き研究の報告があり、『Na<130mEq/L』を予後不良因子として報告しています。

 

Importance of Legionella pneumophila in the Etiology of Severe Community-Acquired Pneumonia in Santiago, ChileMgr Francisco Arancibia,et, al.

 

最後は治療についての292人のレジオネラ肺炎患者を対象にしたスペインからの前向きコホート研究です。マクロライドでの治療とレボフロキサシンでの治療を比較しています。

 

Blázquez Garrido et al. Antimicrobial chemotherapy for Legionnaires disease: levofloxacin versus macrolides. Clin Infect Dis (2005) vol. 40 (6) pp. 800-6

 

PORTスコア3点以下の軽~中等症の肺炎に対してはマクロライドとレボフロキサシンで有意差は認めていませんが、重症肺炎の場合は合併症率(27.2% vs 3.4%)、平均入院期間(11.3日 vs 5.5日)とレボフロキサシンの優位性が報告されています(死亡率自体は変わりがないようですが)。ちなみに、重症肺炎にリファンピシンを追加投与しても、治療効果は変わらないばかりか、副作用報告が増えてしまうようです。

 

2013年度の国民死亡原因の第三位は『肺炎』です。レジオネラ肺炎も絶対に押さえておきたいところです。

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