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とりあえずデ〇ス、何となくデ〇ス・・・

最近、覚醒剤や脱法ハーブといった薬物がらみの問題が取り沙汰されています。以前このブログでも“drug overdose”を扱いましたが、改めて対処法を確認しておく必要があります。

 

とは言え、やはり日本は世界の国々の中でも違法薬物の広がりの少ない国です。ただ、その理由が「ベンゾジアゼピンの投与が多いから」という説が・・・何とも複雑な問題です。

 

下の表をみて下さい。

 表

これは、各国の人口1000人あたりのベンゾジアゼピンの消費量です(国際麻薬統制委員会)。ベルギーが1位で日本が惜しくも2位・・・て、惜しくもなんともないですね(-_-;) しかも、この統計では、複数の診療科から重複して処方されているエチゾラム(デパスR)がカウントされておらず、実際には日本がダントツで1位なのではと言われています。なぜ日本でこのようにベンゾジアゼピンが蔓延してしまっているのか?それは、エチゾラムをはじめ、多くのベンゾジアゼピンに「向精神病薬の規制がかかっていないこと」「バルビツールの負の遺産」の2つの原因ではないかと思います。

 

まず「向精神病薬の規制がかかっていないこと」について。2014年3月に厚労省から「外来診療で服薬管理などをする際、抗不安薬か睡眠薬を3種類以上、または、統合失調症の治療に使われる抗精神病薬か、抗うつ薬を4種類以上、1回で処方した場合、診療報酬を請求できない」という通達が出ました。多少の抑止力にはなるかもしれませんが、投与期間の縛りもないですし、まだまだですよね。恐らく、現在の臨床現場の隅々までベンゾジアゼピンが蔓延してしまっているため、仕方なくこういった基準になったのだと思います。特に、前出のエチゾラムの適応をみたら納得です。

 

①   軽症における不安・緊張・抑欝・神経衰弱症状・睡眠障害

②   欝病における不安・緊張・睡眠障害

③   心身症(高血圧症、胃潰瘍・十二指腸潰瘍)における身体症候ならびに不安・緊張・抑欝・睡眠障害

④   統合失調症における睡眠障害

⑤   次記疾患における不安・緊張・抑欝及び筋緊張:頚椎症、腰痛症、筋収縮性頭痛

 

「どれだけ万能やねん!」と、思わず突っ込みたくなりますね(^_^;)

 

ちなみに、各国の適応はこんな感じです。

 

・イギリス:2~4週(短期間の救済措置のみ適応

・フランス:12週(不安に対して)、14日(不眠に対して)

・オランダ:最大8週(4ヵ月以上の服用は断薬を行うこと)

・スウェーデン:数週間以上の治療は推奨されない

・香港:4週間を超えないこと

 

特に、イギリスの適応には「4週以上の処方は自殺のリスクを高める」と注釈がついています。

 

もう一つの理由「バルビツールの負の遺産」について。ベンゾジアゼピンが登場するまでの睡眠導入剤の主流は、フェノバールなどのバルビツール酸系薬剤でした。確かに自殺にも使われてしまうバルビツール酸系薬剤に比べれば、ベンゾジアゼピンは安全です。管理人はベンゾジアゼピン発売当時のことはもちろん知りませんが、きっとかなり大規模な「安全ですよキャンペーン」がされたんじゃないかと思います。ただ、何十年も前の薬を比較対象として「安全です」なんて、何ともナンセンスです。でも、そのイメージが未だに医療界にはびこっており、安易に処方されているのです。

 

やはり問題は依存性です。どのくらいの期間で依存が生じてしまうのか検討した報告があります

 

Long-term diazepam therapy and clinical outcome. JAMA. 1983 Aug 12;250(6):767-71PMID: 6348314

 

3週間程度で依存が形成されてしまうという報告もあるようですが、おおよそ8か月間の使用で依存が形成されている可能性が高いようです。

 

漫然としたベンゾジアゼピンの投与に関しては、色々な報告があります。

 

Polypharmacy with antipsychotics, antidepressants, or benzodiazepines and mortality in schizophrenia. Arch Gen Psychiatry. 2012 May;69(5):476-83.

2588人の統合失調症患者を対象とした抗精神病薬、抗不安薬、またはベンゾジアゼピンを外来で使用した患者の全原因による死亡を検討したスタディ。抗精神病単剤に比べ薬を2剤以上使用しても死亡率は増加せず、抗鬱薬使用も死亡率を高めなかった(自殺死は減少)が、ベンゾジアゼピン使用で死亡率は増加(HR1.91)した。

 

Hypnotics’ association with mortality or cancer: a matched cohort study. BMJ Open 2012;2:e000850 doi:10.1136/bmjopen-2012-000850

睡眠薬と死亡率・癌の関係を検討したコホート研究。年に18錠未満の睡眠薬処方患者でも使用していない人に比べての死亡リスクは3.60 (2.92-4.44)に増加し、投与量に応じさらに死亡リスクは増加。

 

Benzodiazepine use and risk of dementia: evidence from the Caerphilly Prospective Study. J Epidemiol Community Health. 2011 Oct 27.

ベンゾジアゼピン服用で男性認知症リスクが3.5倍に増加

 

もちろん、「ベンゾジアゼピンを使うな!」という訳ではありません。SSRIやSNRIの抗うつ効果が現れるまで、もしくはSSRIやSNRIによる賦活化症候群による不安や焦燥には非常に有効です。不安障害などへの発作に屯用として使用るのも許容されます。ダメなのは背景の精神疾患のケアをせずに「とりあえず」処方したり、眠れないという訴えに対して「何となく」処方することです

 

では、不眠、特に不安を伴う不眠にはどう対応すればいいでしょうか。やはり最初は非ベンゾジアゼピン系睡眠薬のゾルピデム(マイスリーR)、ゾピクロン(アモバンR)、エスゾピクロン(ルネスタR)やメラトニン受容体作動薬のラメルテオン(ロゼレムR)など依存の少ない薬で始めたいところです。不安の強い症例に対しての選択肢として、ミアンセリン(テトラミドR)、トラゾドン(レスリンR)、ミルタザピン(リフレックスR)などの薬剤は眠気が強く出る傾向があり、不眠を訴える場合に有効です。

 

どこまで自分で抱え込むか・・・といった問題もあるかもしれませんが、選択肢を少しでも増やしておくことは非常に大切です。

くすり

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