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糖尿病診療・・・「何となく」になっていませんか?

プライマリ・ケアの場面で、糖尿病のアセスメントが大切なことは言うまでもありません。治療の選択肢としてDPP-4が定着してきたなと思ったら、今度は選択的SGLT2阻害剤なんて新顔も出てきてしまい、実は結構現場は混乱気味です(汗)。いずれも低血糖のリスクが少なく、「プライマリ・ケアの現場でどんどん使ってください」みたいなプロモーションがされていますが、この流れはちょっと危険です。選択的SGLT2阻害剤の副作用(体重減少、利尿作用で血圧低下、尿路感染症、膣カンジダ等の性器感染症のリスク増加など)の問題もありますが、何より気になるのは「医師側が頭を使わずに糖尿病診療をしてしまうのでは」ということです。2012年のNEJMでも取り上げられていましたが(Glycemic Management of Type 2 Diabetes Mellitus)、糖尿病の内服薬の主役はビグアナイドであるべきだと思いますが、「とりあえずDPP-4やSGLT2出しておけばいっか」なんてことになるんじゃ・・・偉そうなことは言えませんが(^_^;)

 

治療選択に関してはまた別の機会に取り上げるとして、とりあえず、今回は絶対に押さえておきたい糖尿病の検査について。以下に、日本糖尿病学会から発表されている『糖尿病の臨床診断のフローチャート』を見てください。

 flowchart

 

どういった患者様にどの検査を行うか、その検査をどう解釈するかをまとめてみます。専門の先生はもちろん、勉強したばかりの学生さん何かには「何を今さら・・・」な内容ですが、まぁ、復習ぐらいのつもりで読んで下さい。

 

経口ブドウ糖負荷試験Oral glucose tolerance test; OGTT

 「糖尿病が疑われているが、数回の検査でも確定が難しい場合」に行う検査です。つまり、「Hba1c(国際基準値)≧6.5%でFPG≧126mg/dL」の糖尿病の診断基準を既に満たしている場合は意味がありません。糖代謝異常のスクリーングにも有用です。また、最近では耐糖能異常の段階でも糖尿病と同様に動脈硬化のリスクを高めることが報告されていますので、家族歴やメタボリック症候群などを根拠にOGTTを行うことは問題ありません。さらに、経過中にかなり改善した際の評価にも使えます。

 

HbA1c

 細かい説明は不要ですよね。「2~3ヵ月前から現在までの血糖値の平均値」です。これを根拠に患者様に説明することは多いですし、ある程度の説得力を持ちます。ただ、経過が長い患者様にとっては、だんだん効果が・・・。京都大学の田中先生達が提唱した説明方法(HbA1cの値に30を足して、体温で説明する方法)は、説得力があります。また、HbA1cが1%上がると、1日の平均血糖値が約25mg/dL上昇することも、覚えておくと便利です。

 

グリコアルブミン(glycoalbumin; GA

 イメージとしては「HbA1cの1~2週間バージョン」です。アルブミンの寿命の短さ(10日~14日)を利用しています。その鋭敏さから今後HbA1cに取って代わる可能性もありますが、低アルブミン血症や肝機能異常、甲状腺機能異常の場合は参考になりません

 

1,5-AG1,5-アンヒドロ-D-グルシトール

 1,5-AGは、血糖とよく似た構造をしている上、血中濃度がほとんど変動しない糖類です。血糖と同じように腎臓で濾過された後、そのほとんどが再吸収されますが、一部は尿中に排泄され血中濃度を一定に保とうとします。血糖値が高いときは腎臓で濾過されて再吸収される血糖も多くなりますので、構造のよく似た1,5-AGはその煽りを食って再吸収が阻害され、尿中に多く排泄→血中濃度が低くなります。過去数日間の血糖(特に食後高血糖)をよく反映しますが、HbA1c≧8。0%だと異常低値となり不適当です。腎機能の悪い場合も当てになりません

 

CPRC-ペプチド)

 インスリンが合成される前段階のプロインスリンが、分解されるときに発生する物質で、インスリンと同程度の割合で血液中に分泌され、ほとんどが分解されないまま血液中を循環し、尿とともに排出されます。もちろん、インスリンの分泌能の評価に使いますが、何より「インスリン投与中でも、現時点でのインスリン分泌能を評価できる」のが最大の強みです。血中CPRは蓄尿の煩わしさがなく外来で使いやすいのですが、測定時間により変動があるのが難点です。尿中CPRは正確ですが、蓄尿の煩わしさ以外に腎機能障害時は十分な評価に使えません。

 

抗GAD抗体(Anti-GAD Antibody

 膵β細胞への自己抗体の確認ですので、もちろん陽性なら1型糖尿病です。2型糖尿病がメインとなるプライマリ・ケアの場面ではあまり出番がなさそうですが、「2型糖尿病でずっとフォローしていたのに、急に血糖コントロールが悪くなった!」なんて時には測定の意味があります。一見2型糖尿病のようであっても、抗GAD抗体が陽性で『膵島炎』が隠れている『緩徐進行1型糖尿病(Slowly Progressive Insulin Dependent Diabetes Melitus; SPIDDM)』という病態の可能性があるからです

 

以上をまとめるとこんな感じです。

 

・HbA1cやFPGだけでは糖尿病の診断がつけられない⇒OGTT

・糖尿病の診断は満たさないが、家族歴等で耐糖能異常が疑われる⇒OGTT

・肝機能等異常なく、HbA1cだけでは説得力がない場合⇒GA

・比較的軽症の糖尿病で、最近の血糖値の変動(特に空腹時血糖)⇒1,5-AG

・インスリン投与下での、現在のインスリン分泌能の評価⇒CPR

・若年発症の糖尿病、もしくは2型糖尿病の急性増悪時⇒SPIDDM

 

もちろんすべてを網羅している訳ではありませんが、ご参考までに。あと、インスリン抵抗性を評価する『HOMA-IR』も押えておきましょう。

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