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迷子の迷子の“総合診療医”

中日新聞の『LINKED』は、毎回非常に面白い特集をしています。一般の方を対象に、昨今の医療問題を分かりやすく解説しているのですが、我々医療従事者にとっても非常にためになる内容です。むしろ、最前線で働いている研修医の先生方が、意外に気付きにくい内容かもしれません。

 

さて、この特集をみていると、『医療崩壊』や『病病連携』といった『地域医療』を取り上げた内容が多く、その解決方法として「研修医時代から総合的な研修を行い、どんな状況にも対応できる“総合診療医”を育てましょう」といった内容が挙げられています。ずっと総合診療一筋で来た管理人にとっては「やっと認めてもらえた!」っと感慨もひとしおではあるのですが・・・ずっとこの領域に携わっているからこそ、色々と考えることも出てきました。もし総合診療の道を考えている先生がいらっしゃいましたら、参考にしていただければ有難いです。

 

このコラムでもよく取り上げている『総合診療医ドクターG』。毎回、総合診療をはじめ、感染症、救急医療、地域医療といった全人的医療が求められる分野の“スーパー・ドクター”が登場します。どの先生も高い臨床能力と素晴らしい人間性を持たれていますし、こういった先生方は、どこの場面に行かれても優れた診療をされるでしょう。研修医の先生方はもちろん、我々も目標とするべき姿だと思いますが・・・現実的に、ここまで辿り着ける先生はほとんどいないと思います。当たり前ですが、“スーパー・ドクター”達は極少数派なんです。しかも、ある程度この分野にも歴史ができてきましたので、一時期に比べて“スーパー・ドクター”の受容が少なくなっているような印象もあります。まぁ、どの分野でもそうだと思いますが、かなり目立った存在にならない限り、先人達に勝つことは難しいですからね(-_-;) でも、実際にはそれでいいと思います。全員が“スーパー・ドクター”になるなんていうのは、現実的に不可能です。以前のブログ(日本における総合診療の“ジレンマ”)でも書きましたが、『総合診療マインド』を持った医師が増えることが、日本の医療レベルを挙げる・・・管理人は本気でそう思っています。

 

ただ、これはある意味、“理想論”です。総合診療を志している医師の大部分は“そこそこドクター”になっていきます(管理人もこのグループです(^_^;))。これは決して悪い意味ではありません。そこそこの医療が出来るということは素晴らしいことです。特に、この分野のそこそこは「そこそこの鑑別診断ができて、そこそこの救急対応ができて、そこそこの生活習慣病の管理ができて、そこそこの地域に根ざした医療ができる」ことを意味しますので、地域の求める医師像に合っていると思います。総合診療を学んでいる先生の中には地域医療を目指す方も多いと思いますので、その点で『LINKED』で取り上げられている理論は正しいと思います。また、そういった先生方が中核病院に残り、若手医師達に“そこそこの医療”を伝えていくことは、非常に意味深いことです。

 

では、そういった“そこそこドクター”達が地域にスムーズに帰れるか?・・・残念ながら、まだ地域の方にはそういった土壌がないように思います。言い換えれば、「そこそこの診療能力と全人的医療を行おうというそこそこの志だけを武器に、地域に帰るのはまだ難しい」ということです。いや、比較的知名度の高い総合診療部門がある病院の周囲では、ある程度の土壌があるのかもしれません。ただ、そういった地域はごく一部です。特に良い意味でも悪い意味でも医局の影響力が残っている多くの地域では、まだ“学位”や“専門医資格”が重要視されます(それはそれで大切だと思いますが)。地域の非医療者が求める医師と、地域の医療者が求める医師が解離しているとも言えるかもしれません。「全人的医療を実践するぞ!」という心意気だけで戦うのは、まだまだ難しい時代です。

 

おそらく、総合診療を学ぶ医師は、今後さらに増えていくと思います。数年後に近付いている後期研修制度改革により、「総合診療は出来て当たり前」の時代ももうすぐです。学んで得ることが非常に多い分野ですので、是非みなさんに学んで欲しいと思います。ただ、そういった総合診療の普及は、イコール“そこそこドクター”の増加に繋がります。その結果、行き先に迷う『迷子の中堅総合診療医』が増えていく訳です。政府が、これから総合診療を地域に根付かせようとするなら、“総合診療医を増やす政策”とともに、“総合診療医をスムーズに受け入れる(医療者側の)土壌作り”が必要になると強く感じる今日この頃です。

 

まいごの子猫

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