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肺塞栓なら血栓溶解療法?

8月3日に行われた『救急総合内科セミナー』に多数参加していただき、本当に有難うございました!ICU部門、ER部門、GIM部門に加え、『文献の批判的吟味の仕方』『悪いニュースの伝え方』まで、お腹いっぱいになったんじゃないでしょうか(^_^;) 少しでも総合診療の魅力が伝わっていれば嬉しいです。

 

夏フェス

 

あと、私事で恐縮なんですが、以前からお伝えしている『週間医学界新聞』で、今回は管理人が執筆させていただきました。27歳女性、両手足のしびれを主訴に受診して・・・タイトルは「嗚呼、人生泣き笑い」(←実はこれもキーワードです!)。是非ご一読をm(_ _)m

 

さて、しばらく救急系の話題がなかったので、最近JAMAに紹介されていた『肺塞栓症』のメタアナリシスを一つ。ヘパリン単独の抗凝固療法に比べてウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アルテプラーゼなど血栓溶解療法は、早期に肺動脈内血栓の溶解が得られ、循環動態を改善するランダム化試験も多く報告されており、急性発症の肺塞栓症に対しては積極的に行われています。また、2005年にはt-PA誘導体であるモンテプラーゼ(クリアクタ)は、「不安定な血行動態を伴う急性肺塞栓症における肺動脈血栓の溶解」の適応が加えられています。ただ、実際はどの程度有害な問題が起こっているかの信頼できるデータがなかなかなかったようです。今回の報告は、その臨床的に重要な問題点に踏み込んだものです。

 

Thrombolysis for pulmonary embolism and risk of all-cause mortality,major bleeding,and intracranial hemorrhage. A meta-analysis

 

このスタディは、Cochrane Library、PubMed、EMBASE、EBSCO、Web of Science、CINAHLの各ツールから特定された16スタディ、2,115症例を対象としています。主要アウトカムは、全死亡と大出血、副次アウトカムは肺塞栓症の再発、および頭蓋内出血としています。この報告は、重症例に限らず、比較的血行動態が安定している中等度肺塞栓症(血行動態は安定しているが右心不全あり)の症例も1,775症例も含まれていますので、一般病棟でもある程度使える結果だと思われます。

 

結果は、血栓溶解療法は重症・中等症ともに有意に死亡を減らしました(オッズ比0.53、NNT59)。ただ、予測通り主要な大出血リスクは上昇し(オッズ比2.73、NNT18)、頭蓋内出血の発生も増加する(オッズ比4.63、NNT78)と報告しています。ただ、65歳以下に限れば、大出血のリスクは統計学的に有意差は出ませんでした(オッズ比1.25)。この傾向は、重症・中等症とも変わらないと報告しています。なお、副次アウトカムである肺塞栓症の再発は有意に低下(オッズ比0.4、NNT54)しています。

 

20140629164714

 

この解釈は難しいところですね。ICUなど救命が最優先なセッティングならば、間違いなく血栓溶解療法を行うべきだと思います。また、年齢で切るのも色々議論があるところだと思いますが、65歳以下ならヘパリンと併用して血栓溶解療法も選択するべきでしょう。では、高齢者や、大出血等への対応が難しいセッティングなら・・・ヘパリンだけで押すことも、決して間違いではないのではないかと思います

 

ただ、この報告がメタアナリシスに関わらず、わずか2,115症例のみの検討であることには注意が必要です。特に、今回のセミナーで『批判的吟味』を学んでしまうと、天下のJAMAでも「(=_=)?」になっちゃいますね(^_^;)

 

 

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