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「タバコはダメ!」だけではね(´・ω・`)

いきなりですが、この画像をご覧下さい。

 

NEJM タバコ

 

これは、2006年のNEJMに掲載された有名な画像です(Radiographic Evidence Linking Tobacco Use and Lung Cancer)。進行性の咳嗽と呼吸困難感を主訴とした72歳男性で、15歳の頃からの喫煙歴(BI:30本/日×57年=1710)あり。画像上は右S5の腫瘤影、肺野全体の構造破壊といった肺癌+COPD所見を認めます。で、お気づきだとは思いますが、左の胸ポケットにタバコのパック・・・ある意味、非常に典型的な喫煙者の胸部CT写真な訳です(^_^;)

 

喫煙が身体に悪いなんて、誰だって知っています。実際、厚労省を中心として喫煙に対する啓蒙活動が進んだことにより、男女ともに喫煙率は下がってきています(最も男性の喫煙歴が高かったのは昭和41年の83.7%!)。ただ、男性に比べて女性の喫煙率の減少は非常に緩やかで、20代に関してはやや増加傾向にあるようです

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こういった、公衆衛生的な情報を押さえておくことも重要ですが、やはりプライマリケア医としては、「喫煙がいかに身体的な問題を引き起こすか」ということを知っておかなければなりません。一般的によくみられる疾患は以下の通りです。

 

喉頭がん、口腔・咽頭がん、肺がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、膵がん、膀胱がん、子宮がん、卵巣がん、脳出血、脳梗塞、COPD、慢性気管支炎、喘息、心筋梗塞、狭心症、メタボリック症候群、糖尿病、Buerger病、胃十二指腸潰瘍、歯周病、低出生体重児、勃起不全

 

がん発症の相対リスクには色々な報告があります。中には「喉頭がん32.5倍!」なんて報告もありますが、こういうデータは患者選択バイアスがかかりやすく、鵜呑みにしにくいものです。こういう時は、国立がんセンター頼み(笑)。こんな表が載っていました。

hatugannrisuku

 

この表を白衣のポケットに入れておくと便利です。「このままタバコを吸い続けると、一般的にタバコを吸わない方に比べて4.8倍肺がんになりやすいですよ」みたいな感じで使えます。

 

循環器系疾患に関しても、色々な報告があります。文部科学省が中心に行われた大規模コホート研究(JACC Study)では、喫煙者の死亡率は非喫煙者に比べて、男性/女性では脳卒中で1.4倍/1.7倍、虚血性心疾患で2.5倍/3.4倍、全循環器疾患で1.6倍/2.1倍と報告しています1)。メタボリックシンドロームの発症に関しては35-39歳の一般健診を受けた2,994人を対象とした本邦の追跡調査によると、1日21~30本の喫煙で1.45倍、31本以上の喫煙で1.59倍に上昇するとしています。さらに、喫煙者でメタボリックシンドロームの場合は、非喫煙者に比べて発症率が虚血性心疾患で3.0倍、脳梗塞で2.5倍になると報告しています2。さらに、海外25論文(その内、7論文は日本から)のメタアナリシスでは、喫煙者の糖尿病発症リスクを、非喫煙者の1.4倍と報告しています3)

 

1)中村正和.喫煙とメタボリックシンドローム発症の関係についての文献的考察.平成18年度厚生労働科学研究費補助金循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業「たばこに関する科学的知見の収集に係る研究」 2007. 59-66.

2)Iso H, et al: Metabolic syndrome and the risk of ischemic heart disease and stroke among Japanese men and women. Stroke. 2007 ; 38: 1744-1751.

3)Willi C, et al: Active smoking and the risk of type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis. JAMA. 2007; 298: 2654-2664.

 

最近のCMで医者が喫煙者の親を持つ子供達に「タバコを吸うと、余命が10年程度短くなるなんて報告もあるんだよ~」みたいなのがありますが、あれ本当なのでしょうか?イギリスのR.ドールという公衆衛生の大家の先生が、1951年から2001年までの50年間(!)、34,439人の男性医師の追跡研究を行った結果、35歳の人が70歳まで生きている割合は、非喫煙者で81%だったのに対して、喫煙者で58%、喫煙者は非喫煙者と比べると、概ね10歳程度余命が短いと報告しています(Mortality in relation to smoking: 50 years’ observations on male British doctors

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50年という追跡期間には説得力がありますが、現在の日本の医療レベルを考えると、「余命が10年縮まる!」はちょっと言い過ぎな感もあります。実際、日本で行われた男性14万人、女性15万人のデータを用いた報告では、40歳の時点で喫煙者は、男性で約5年、女性で約4年、非喫煙者に比べて余命が短いことが分かりました(平成18年度厚生労働省研究班・小笹ら)。

 

それ以外でも、『喫煙で加齢黄斑変性症進行のリスクが増大する』『喫煙者+PPIで骨折のリスクが50%増加する』『能動喫煙・受動喫煙ともに、閉経後乳がんリスクを高める』 、『1日10本以上の喫煙は結核再発のリスクを有意に上げる』等々、『喫煙はダメ!』の説明をするための報告は、枚挙に暇がありません

 

でも、ただ『禁煙!禁煙!』と言っていても、禁煙で得られるメリットを伝えなければ説得力がありません。禁煙後の一般的な経過は以下の通りです。これも患者様を禁煙に導くためには有用な情報です。

 

  • 数時間後:一酸化炭素レベルが非喫煙者と同じになる
  • 数日後:味覚・嗅覚が鋭敏になる
  • 1~2ヵ月後:慢性気管支炎の症状(咳嗽、喀痰、喘鳴)が改善する
  • 1年後:軽度~中等度のCOPD患者で肺機能が改善しはじめる
  • 2~4年後:冠動脈疾患のリスクが、喫煙継続者に比べてかなり低下する(冠動脈疾患患者では、再梗塞や死亡のリスクが約35%低下する
  • 5年後:肺機能の低下速度が非喫煙者と同等になる。
  • 5~9年:肺がんのリスクが、喫煙継続者に比べて明らかに低下する
  • 10~15年後:喉頭がんのリスクが、喫煙継続者より60%低下する(冠動脈疾患のリスクが非喫煙者と同じレベルになる(種々の報告あり))
  • 10~19年後:肺がんのリスクが、喫煙継続者より70%以上低下する
  • 20年:口腔がんのリスクが、非喫煙者と同じレベルになる

 

また、前述のR.ドールの報告では、禁煙を始める年齢が35歳なら+10年、40歳なら+9年、50歳なら+6年、60歳なら+3年、余命を取り戻せるとしています。

 

「禁煙してみましょう!」の情報は揃いましたよねヽ(・∀・)ノ?!次に、どうやって禁煙を達成させるかは・・・また別の機会に。

たばこ

 

 

 

 

 

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