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すごいぞ錦織!怖いぞデング熱?

いやぁ~、惜しかったですね!錦織選手!明日のニュースの一面は多分これ一色ですよね。全米オープンで準優勝なんて、今までの常識では考えられません。オリンピックの陸上100m走で、日本人が銀メダルをとるぐらいでしょうか?本当にアッパレですヽ(・∀・)ノ

 

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で、多分二番目に出てくる記事が・・・そう、『デング熱』です。前日(9月8日)の段階で感染者は15都道府県81人、9月9日には代々木公園はもちろん、東京に行っていない千葉県内の生活困窮者向け施設に住む60代の男性の感染も報告されています。8月27日の69年ぶりの国内感染報告から約2週間でこの人数ですので、正直そんなに大騒ぎする流行ではありませんが、エボラ出血熱で大騒ぎしている最中の報道だったことも影響しているかもしれません。

 

さて、デング熱。ウイルスの世界では結構古株で、16世紀後半には発見されており、20世紀の初頭にはウイルスが同定されています。日本では1950年代に太平洋戦争で東南アジアや南太平洋などから帰国した方々がウイルスを持ち帰り、日本にも生息するヒトスジシマカによって媒介され、西日本を中心に20万人の感染者を出したことがあります。今回の事例もそうですが、以前は熱帯地方の病気だったものが、今では世界人口の4割が感染の危機にさらされており、年間20万人の死亡者を出しているという報告もあります。

 

媒介する蚊はネッタイシマカ、ヒトスジシマカ、ポリネシアヤブカ、スクテラリスシマカですが、日本にはヒトスジシマカのみが生息しています。このヒトスジシマカ、以前は岩手県あたりが生息の北限でしたが、現在では5月~11月にかけてどこにでも生息しています。これはすべての蚊に共通ですが、吸血するのは雌だけで、産卵の栄養にするためだけに行います。今は憎まれ役になってしまっていますが、普段は花の蜜を主な餌にしている可愛らしいヤツなんです。しかも、仮に吸血されても約8割は不顕性感染です。ただ、デング熱以外にも黄熱、西ナイル熱、チクングニア熱などの感染症を吸血により媒介したり、犬糸状虫症の原因である犬糸状虫を運んでしまうところが厄介です。

 

発熱・発疹・疼痛がデング熱の三徴候です。3~14日(通常は4~7日)の潜伏期間後、突然の高熱(通常40℃以上)で始まり、頭痛、特に目の奥の痛さが出現します。筋肉痛・関節痛を伴うことが多く、食欲不振、腹痛、便秘や下痢など消化器症状を伴うこともあります。発熱のパターンは二峰性になることが多く、発症後3~6日の有熱期間の後、解熱とともに胸部・体幹から始まる掻痒を伴う斑状丘疹性の発疹が出現し、四肢・顔面へ広がります。血液所見では末梢血白血球の減少血小板の減少が特徴で、肝機能障害を伴うこともあります。CRPが陰性~弱陽性であることも検査前確率を上げる情報です。これらの急性期症状は一週間程度で終息し、通常は後遺症なく回復します。極まれにウイルス性脳炎、横断性脊髄炎、ギラン・バレー症候群、心筋炎などを来たすことがありますが、他のウイルスと比べて別段頻度が高い訳ではありません。つまり、『通常のウイルス感染症とあまり変わらない』のが特徴な訳です(ただし、自発的な出血傾向からhypovolemic shockを来たすデング出血熱も同様の症状で発症するため、注意深い経過観察が必要です)。

 

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診断には、血液からのウイルス分離やPCR法によるウイルス遺伝子の検出、血清中のウイルス非構造タンパク抗原(NS1抗原)や特異的IgM抗体の検出、ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇、が用いられますが、ほとんどの医療施設には用意されておらず、臨床の最前線での確定診断は難しいのが現状です。

 

診断基準は以下の通りです。CRP大活躍です(^^) ちなみに、ターニケットテストとは別名『駆血帯テスト』といいます。被験者の腕に駆血帯で収縮期と拡張期の中間程度の圧で3分間圧迫することにより、点状出血が増加するかを確認します。

 

(A)必須所見

1.突然の発熱(38℃以上) 2.急激な血小板減少(10万/μl以下)

(B)随伴所見

1.発疹、2.悪心・嘔吐、3.骨関節痛・筋肉痛、4.頭痛、5.白血球減少

6.点状出血(あるいはターニケットテスト陽性)

(C)除外所見

CRPが10mg/dl以上の患者

 

☆Aの2つの所見に加えて、Bの2つ以上の所見を認める場合にデング熱を疑う。ただしCの所見を認める場合は除外する。

 

もしかしたら、「代々木公園周辺に行った」何て病歴も診断基準にいれていいかもしれませんね(^^ゞ

 

ちなみに、デング出血熱への進行予測に使われる症状は①腹痛・腹部圧痛、②持続的な嘔吐、③腹水・胸水、④粘膜出血、⑤無気力・不穏、⑥肝腫大(2cm以上)、⑦ヘマトクリット値の増加(20%以上)ですので、デング熱を疑った場合は、合わせて評価が必要です。

 

4類感染症(ただちに最寄りの保健所に届出)ですので、強制的な入院の適応はもちろんありません。強いて入院適応をあげれば「デング出血熱、もしくはデング出血熱への移行が疑われる場合」だと思われますが、蚊による媒介の可能性や、現在の話題性(?)からも、急性期の入院管理は許容されるかもしれません。

 

最後に治療です。デングウイルスに有効な抗ウイルス薬はありませんので、水分補給や解熱剤(アセトアミノフェンなど)での対症療法が中心になります。アスピリンは出血傾向やアシドーシスを助長するため禁忌です。デング出血熱の治療はプライマリ・ケアのレベルを超えてしまいますので、成書を参照して下さい。

 

こういったことが起こると毎回思いますが、この国は感染症の流行に対して弱い傾向があるように思います。その原因の多くが、テレビや新聞はもちろん、ネット上の情報に踊らされてしまっているからだと思います。医療従事者である我々は、同じ情報で踊らされないようにしましょうね。

 

でんぐ

 

 

 

 

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