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あぁ悩ましき甲状腺(´ε`;)

一般外来の“あるある話”。「最近体がだるくて何となく浮腫んだ感じがして・・・」で受診。「心臓も腎臓も肝臓も問題なさそうだし――よし、甲状腺だ!」・・・ハズレ(+o+)!もう一つは「病態がイマイチ分からないからとりあえずチェックしておくか」・・・TSH軽度上昇(T_T)  甲状腺機能低下症って、どう評価していいか結構悩みます。

 

まず前半の“あるある話”ですが、身体所見から出来るだけ検査前確率を上げるのが理想です。こんな時はやっぱりマクギーです。

表

 

「ざらざら皮膚」「かすれ声」は使えそうですが、何となく主観が入ってしまいそうです。それぞれの所見を単独で使用するのは躊躇してしまいますし、やっぱり組み合わせることが大切です。ちなみに、浮腫は水分ではなく水分を多く含むムコポリサッカライドの沈着が原因ですので、圧迫しても圧痕を残しません。声の変化を「かすれ声」と表記しましたが、実際は「鼻が詰まった人が口に何かを含んでモゴモゴ言っているようで、それがかすれた感じ」って、文章で表現するとよくわからない声です(^^ゞ

 

所見の組み合わせとしては『Billewiczスコア』という有用なツールがあります。所見があれば足し算、なければ引き算をします(高齢者では使いにくいので要注意です)。

 

  • 発汗減少:+6/-2
  • 皮膚乾燥:+3/-6
  • 寒がり:+4/-5
  • 体重増加:+1/-1
  • 便秘:+2/-1
  • さ声:+5/-6
  • 異常感覚:+5/-4
  • 難聴:+2/-0
  • 動作緩慢:+11/-3
  • ザラザラした皮膚:+7/-7
  • 皮膚の冷寒:+3/-2
  • 眼瞼浮腫:+4/-6
  • 脈拍<75:+4/-4
  • 緩慢なアキレス腱反射:+15/-6

 

30点以上なら甲状腺機能低下症の可能性が非常に高くなり(感度57-61%、特異度90-99%、LR+18.8)、-15点未満なら低くなります(感度3-4%、特異度28-68%、LR+0.1)。

 

後半の“あるある話”に移りましょう。TSHは上昇しているけどFree T4は正常範囲のいわゆる『潜在性甲状腺機能低下症』の扱い方についてです。わかりやすく言えば「超ゆ~くりな経過でサイロキシン(T3・T4)が減っているけど、下垂体が頑張っているからまだ大丈夫!」な状態です。報告によりばらつきはありますが4~10%の有病率で、高齢女性の場合は7~17%にみられる極めてcommonな病態です

 

こういった検査所見をみたときに最初に考えなければいけないことは、つまり真の甲状腺機能低下かどうかの判断です。亜急性甲状腺炎や橋本病の経過中に一過性の甲状腺機能低下症を来たすことはありますし、消耗性疾患や腎不全の際におこる異化亢進からの防御反応であるnon-thyroidal illnessの可能性もあります。また、日本人では昆布などヨードの過剰摂取の場合も多く見受けられます。いずれにしても、これらの原因を除外した上で、1~3ヶ月後に再検査することが重要です

 

どのような場合に治療するかですが、以前は「経過観察のみで症状が出てきたら治療」というのが一般的でしたが、現在は、「妊婦、あるいは妊娠希望女性、もしくはTSH10μU/mL以上」が治療対象になります。

 

『妊婦』を治療対象としている理由は、「甲状腺機能低下症の母親から生まれた子供は、10歳の段階での知能指数が約5程度、平均より低下する」という欧米からの報告があるためです。ヨード摂取量の多い日本にはあまり当てはまらない気がしますが、統一性を持たせるために日本のガイドラインも同様の記載があります。

 

『TSH10μU/mL以上』に関しては様々なデータが蓄積されてきています。Up To Dateの『Subclinical hypothyroidism』から抜粋すると「潜在性甲状腺機能低下症の半分は顕性の機能低下症に至る。特に冠動脈疾患や心不全発症リスクの高いTSH10μU/mL以上の患者には甲状腺ホルモン(T4)の治療を勧める。TSH 4.5-10μU/mLの非高齢者(70歳未満)で甲状腺機能低下症の症状を有する患者にもT4の治療を勧める。TSH 4.5-10mU/mLの場合でも、甲状腺ペルオキシダーゼ抗体が高い場合は明らかな甲状腺機能低下症や甲状腺腫に至ることが予測されるためT4の治療を考慮する」といった内容が掲載されています。

 

なお、TSH4.5‐10.0mU/L未満の70歳以上の高齢者には「利益が明らかでなく、また不注意なovertreatmentによる心血管系の罹病率、骨格筋の病気の罹患率に関連するかもしれないため、現時点では治療を勧めない」としています。

 

潜在性甲状腺機能低下症のアプローチをまとめるとこんな感じです。

 

  1. まずは真の甲状腺機能低下症かどうかの確認(ヨード過剰摂取、消耗性疾患、亜急性甲状腺炎・橋本病の否定)
  2. 一過性の可能性もあり1~3ヶ月後に再検
  3. それでも上昇している場合は甲状腺ペルオキシダーゼの追加
  • TSH10μU/mL以上→治療開始
  • TSH 4.5-10mU/mL+甲状腺ペルオキシダーゼ抗体高値→治療を勧める
  • TSH 4.5-10mU/mLで70歳以上→経過観察のみ
  • TSH 4.5-10μU/mLで70歳未満+症状あり→治療を勧める
  • 妊娠、もしくは妊娠希望あり→治療開始

 

その他、個人的には治療反応の悪い高LDLコレステロール血症の症例なども、治療対象にしてもいいのではと思います。

ちなみに、臨床的に頻度は少ないですが、以前に潜在性甲状腺機能亢進症もとり上げていますので、興味のある方はどうぞ(・∀・)

 

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