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厚生省もなかなかやりますな(o ̄∇ ̄o)♪

DICの診断は、臨床現場でしばしば困ります。以前もこのブログ(研修医勉強会〜今日のお台は“DIC”)で病態生理や治療について取り上げていますが、やっぱ難しいですね。とりあえず、以下の表を見ながら、前回のブログを見直していただけたら嬉しいです。

 

DICの発症機序(プライマリケア版) DIC

DICの病型分類

病型分類

 

今回の内容は、病態生理よりも悩ましい・・・かもしれない診断基準です。DICの診断基準は色々なものが発表されていますが、有名なのは3つ、1988年に改定された『厚生省DIC診断基準』、2001年に国際血栓止血学会(International Society on Thrombosis and Haemostasis;ISTH)により作成された『ISTH DIC診断基準』、2005年に日本救急医学会より発表された『急性期DIC診断基準』です。どの基準を使うかは、結構悩ましいところです。「この基準だとDICだけど、この基準だとDICじゃないヽ(`Д´)ノ」なんてことも経験します。使い分けについてまとめてみます。

 

  • 厚生省DIC診断基準のスコアに含まれる検査項目(血小板、FDP、PT、フィブリノーゲン)は、どこの施設でも簡単に測定ができ、汎用性が高いが、DICの早期診断には不向きで、治療開始の基準としてはイマイチ1)。
  • 厚労省DIC診断基準のスコアリングは血小板とFDPに重点が置かれており、白血病などの線溶亢進型DICのような出血傾向が著明でFDPも著増する病態の診断には有用だが、敗血症などFDPやD-dimerの上昇が軽度に留まる凝固亢進型DICの診断には不向き
  • ISTH DIC診断基準は、厚生省DIC診断基準を参考に、初期段階のDIC(non-overt DIC)と不可逆的な状態に近いDIC(overt DIC)に分けたもの2)。
  • ISTH DIC診断基準は、厚生省DIC基準の早期診断率の悪さを補うことを目的として作られたが、出血傾向や臓器障害などの臨床症状が考慮されておらず、プロテインCやトロンビン・アンチトロンビンⅢ複合体といった特殊なマーカーが利用されており、感度も厚生省DIC診断基準より低い3)。早期診断に関しても急性期DICよりも劣る
  • 急性期DIC診断基準の基本コンセプトは、①どの医療機関でも短時間で結果がでること、②重症度を定量化できること、③厚生省DIC診断基準より早期診断に優れること、④DIC治療の開始基準として利用できること
  • 急性期DIC診断基準は侵襲に伴う全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome; SIRS)の有無が項目に取り入れられており敗血症によるDICの早期診断には有用。侵襲時に増加してしまうフィブリノゲンを診断基準から除外したのもポイント。
  • 急性期DIC診断基準は骨髄抑制(造血器悪性腫瘍、血球貪食症候群、癌の骨髄浸潤、化学療法)、骨髄不全(再生不良性貧血、巨赤芽球性貧血、発作性夜間血色素尿症)、血小板破壊(TMA、TTP、HUS)など、DIC以外に血小板減少の原因が存在する場合は使用できない

 

いずれの基準も「帯に短し」な感じは否めませんが、少なくともプライマリケアのセッティングでISTH DIC診断基準の出番はなさそうです。では、厚生省DIC診断基準と、急性期DIC診断基準に使われている項目について、現在のDIC診断における位置づけについて少し触れておきます4)。

 

厚生省

 

急性期DIC

 

《基礎疾患/臨床症状》

基礎疾患のないDICは存在しないため、基礎疾患でのスコアリングはナンセンスという指摘。臨床症状が出現しないとDICと診断できないようでは予後改善に繋がらず、さらに臨床症状がDICによるものか基礎疾患やその他の合併症によるものかも分からず、スコアリングから除外することも検討されている。

 

《FDPとD-dimerの同時計測》

いずれも感度は高くスコアリング項目として有用だが、深部静脈血栓症、肺塞栓、大量胸腹水、大皮下血腫などで上昇するため特異度は低い。造血器悪性腫瘍など線溶系活性化を伴うDICではFDPが著増するのに対しD-dimerは中等度の上昇にとどまるため、同時測定には意味がある(ただし、地域により保険査定される場合があるため、漫然と測定するのは注意)。

 

《血小板》

造血障害症例で使用できないため、感度は高いものの特異度は低い項目。経時的な変化が重要であり、その点が考慮されている急性期DIC診断基準は秀逸。

 

《フィブリノゲン》

固形癌、造血器悪性腫瘍、産科合併症、頭部外傷、動脈瘤などにDICでは低下がみられるため有用。ただし、DICであっても、感染症によりフィビリノゲンがむしろ上昇することは少なくなく、感染症に伴うDICのスコアリングには不向き(そのため、急性期DIC診断基準からは削除されている)。

 

《PT》

肝不全やビタミンK欠乏症で容易に延長するため、DICに特異的なマーカーではない。ただ、PTは臓器障害を反映しており、特に感染症症例ではPT延長が予後不良という報告も多数あるため、診断基準に予後予測の意義を持たせる意味では必要

 

まだまだ完全な診断基準という訳ではなさそうです。現時点では「血液疾患・悪性腫瘍にはフィビリノゲンが使用されている厚生省DIC診断基準」「敗血症・重度外傷・急性膵炎・ショック・大手術などの高度侵襲状態には予後予測にも使える急性期DIC診断基準」「早期診断には急性期DIC診断基準」とシンプルに覚えておけば大丈夫そうですね。

 

  1. 青木延雄、長谷川淳.厚生省特定疾患血液凝固異常症調査研究班.昭和62年度業績報告集;1988:37-41.
  2. Taylor Jr FB, Toh CH, Hoots WK, Wada H, Levi M. Thromb Haemost 2001; 86: 1327-30.
  3. Gando S, Wada H, Asakura H et al: Evaluation of new Japanese diagnostic criteria for disseminated intravascular coagulation in critically ill patients. Clin Appl Thromb Hemost 11: 71-76, 2005.
  4. Asakura H: Classifying types of disseminated intravascular coagulation: Clinical and animal models. Journal of Intensive Care 2: 20, 2014.

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