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帰してはいけない疾患を除外した後の・・・

少し遅くなりましたが、JIMの10月号の特集は斬新でした。『帰したくない疾患を除外した後の外来診療』――当科の神宮司先生、岩田先生も執筆に参加しているんですが、「いいとこ突いてくるな~」ってのが管理人の感想です。実際、我々が悩むところはこの辺なんですよね。一般的に研修医が活躍する救急外来では、「とにかく見逃すと怖い疾患の除外を!」という空気一色ですし、これは非常に大切なことです。そういった救急外来での経験がなければ、絶対に一般外来は出来ません。

 

ただ、この感覚をそのまま一般外来に持ってくると落とし穴にハマります(“大きな”落とし穴ではなくて、“沢山の”落とし穴です)。一般外来に来院される患者様の多くは、緊急性の否定をして欲しくて来られる訳ではありません。診断を求めて来られるんです。でも、一般外来に慣れるまでは“緊急性の否定”という、本来ならば最後に抜かなければいけない“伝家の宝刀”に逃げ込んでしまいがちです

 

「~という訳で、緊急性の高い疾患は否定的です。」

「あ・・・、はい(いや、そうじゃなくて( ̄◇ ̄;))」

 

・・・みたいな(^_^;)

 

総合診療のフィールドに限らず、一つでも多く疾患の引き出しを増やしておくことは大切です。そこで、今回の特集で扱われた3つの疾患について、恐らく先生方が紙面の都合で書ききれなかっただろう内容も含めて書いてみます(『“急がない胸痛”もあるんです』も、合わせてご確認下さい)。

 

《Mondor病》

  • 1939年にフランスの外科医アンリ・モンドール(1885年~1962年)が報告した、中年女性の乳房や前胸壁に好発する浅静脈の血栓性静脈炎(男性の冠状溝、陰茎背に発症することもある)。
  • 有痛性の索状物や皮膚陥凹、牽引痛が特徴。索状物は上肢を挙上して初めて分かることもある。長さは数cm~20cmと様々で、1~3ヵ月で消失する。
  • 手術、外傷、感染、過度な運動、圧迫などが原因になると言われるが、原因不明の場合も多い。
  • 診断はほぼSnap Diagnosis。エコーを用いることもある。正確な頻度は不明だが、やや乳癌の合併率が上がるという報告もあり、診断の際に乳癌の否定は必要。

モンドール

 

Achenbach(アッヘンバッハ)症候群》

  • 1955年にAchenbachにより提唱された疾患概念で、その報告以降に、同一病態と考えられる症例が、「finger apoplexy」「acute blue fingers」「the non-ischemic blue finger」などと異なる名称で報告されている(現在は『Achenbach症候群』で統一)。
  • 50歳代以降の女性に多いく原因は不明(「加齢に伴う局所の血管の脆弱性→僅かに刺激で微小血管が破綻」が疑われている)。
  • 特に誘因なく、突然、手指(主に示指、中指)手掌、まれに足趾・足底などに痛みや痺れ、つっぱりといった異常感覚が生じ、同部位に血腫が形成される。その後、浸潤性の皮下出血や紫斑を残し、数日から数週間持続した後に自然消失する(年単位での再燃もあり)。治療は冷却や安静。
  • 鑑別対象は、psychogenic purpura、Davis紫斑などの紫斑を呈する疾患。鑑別のために血小板数、血液凝固機能などの一般的な検査は必要(膠原病の否定はケースバイケースで)。

あせんばっく

 

Bornholm症候群(流行性筋痛症)》

  • 主にコクサッキーB群ウイルスによって起こる疾患で、小児にも成人にもおこりうるが、30歳以下にみられることが多い(胸郭、横隔膜、腹部の筋肉で局所的にウイルスが増殖するためと考えられている)。
  • 4日程度の潜伏期後、突然の発熱とともに胸部や上腹部の激しい痛み(胸壁痛)を発症する。痛みは頸、体幹、四肢に放散ることもあり、「ペンも握れないほど」の握力低下を認めることもある。(子供の夏風邪の原因となるパレコウイルス3型による筋痛症の場合は、30-40歳を中心とした若い成人(特に男性)の上下肢近位筋(上腕や大腿)に多くみられることが報告されている)。
  • 発熱、頭痛、咽頭痛、筋肉痛などの「インフルエンザもどき」の症状に加え、髄膜炎や睾丸炎を合併することもある。
  • NSAIDSが有効で通常は数日で軽快するが、再燃することもある。また、意識障害を来たした症例の報告もある。

 

いずれの疾患も、決して緊急性は高くありません。でも、医者側が知らないことで患者様が不安になり、ドクターショッピングを繰り返す可能性の高い疾患です。是非おさえておきましょう。

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