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PMR⇒『名医もどき』製造疾患(゜∀。)?

・・・忘れていました(T▽T) このブログを始めて3年以上、総合診療のホームページなのに、『リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatic; PMR)』に触れていませんでした。総合診療外来には本当に沢山いらっしゃいますし、実は一般外来にも大勢受診しているハズの疾患です。

 

この疾患は1888年にスコットランドの内科医William Bruceによって「senile rheumatic gout(老人性リウマチ性痛風)」として初めて報告され、1957年に英国の内科医Stuart Barberによって現在の名称が提唱されています。つまり、少なくとも60年以上の歴史があるんです。それにも関わらず、この程度の知名度(・・;) 発症年齢は平均65~70歳(65歳以上が全体の約64%)、白人に多く、男女比は1:2、有病率は10万人あたり約500人と推定されています。両肩の痛みの訴えはほぼ必発で、多くの症例で頸部や股関節・腰部~臀部にかけての痛みや強張りを伴います。症状は明け方に強く、朝の手掌の強張りが1時間以上続きます。「痛くて寝返りが打てない」「洗濯物を干す時に、腕が肩より上に上がらない」といった訴えがあると「もしかして?!」と思うことが多いです。1985年にMcCartyがJAMAに報告したRS3PE (Remitting Seronegative Symmetrical Synovitis with Pitting Edema) は、PMRの病態に手背の圧痕性浮腫を認めるもので、PMR全体の10~20%を占めると言われています。その他、全身症状としては、あまり高くならない発熱(80%)、食欲不振(60%)、体重減少(50%)、全身倦怠感(30%)、抑うつ症状(30%)などがみられ、この疾患を知らない人からしたら「勘弁してくれよ(-_-;)」ってなりそうです。ちなみに、頭痛や発熱などの全身症状が強い場合は、巨細胞性動脈炎(giant cell arteritis; GCA)を疑う必要があります。

 PMR手

RS3PEでみられる圧痕性浮腫

 

検査所見に特異的なものはありません。一応、赤沈の亢進やCRPの上昇、抗核抗体・リウマトイド因子・抗CCP抗体陰性などが挙げられますが、赤沈やCRPは他の疾患でも容易に上がりますし、抗核抗体なんて以前このブログで取り上げた通り、正常でも半分は陽性ですので、大して役には立ちません。極端なことを言ってしまえば、PMRは臨床診断&除外診断です。鑑別対象は関節リウマチ、多発性筋炎、好酸球性筋膜炎、強直性脊椎炎、代謝性ミオパチー、線維筋痛症、傍腫瘍症候群で、特に高齢発症の関節リウマチの除外は非常に困難です(後述)。実際、1970年代から80年代にかけて、いくつかの診断基準が作成されました。以下に有名な診断基準を挙げます。

 PMR診断基準

 

いずれも典型的な臨床症状と炎症反応高値などを基準に作成されていますが、いずれもしっかりとした検討がされていませんでした。2012年に欧州リウマチ学会(EULAR)と米国リウマチ学会(ACR)から、暫定的な診断基準が発表されました。

PMR2012

 

今まで診断の決め手の一つに使っていたステロイドへの反応性が「有効ではない」と判断されているのがちょっと痛いですが、例え超音波の所見がなくてもまずまずの診断特性です。ただ、上記の暫定基準案は主に臨床研究のため作られており、そのまま実際の診断に用いるには限界があるので注意が必要です。

 

治療の柱はもちろんステロイドです。初期投与量については、多くの場合10~15mg/日(体重によってはMax20mg/日)の少量投与を行います。本当にPMRなら3日以内に50~70%の症例で劇的な改善を認めます。一週間以内に改善が認められなければ更に5~10mg/日程度増量し、それでも不十分なら最大30mg/日まで増量するよう勧められていますが、ここまで増やすのは、他疾患の見落としやステロイド合併症の管理も含めて、非専門医としてはちょっと不安(^_^;) その後は臨床症状や検査データを見ながら、ステロイドをテーパリングしていくことになります。テーパリングの例として、初回投与量が15mg/日の場合、2~3週間初回量を用いた後、12.5mg/日を2~3週、次に10mg/日を4~6週、それ以降は4~8週毎に1mg/日ずつ減量するような形になります。ちなみに、管理人の経験として減量して1週間程度は一時的に症状が悪化することが多いので、そのことはあらかじめ伝えておきましょう。15mg/日から開始して順調にいけば約1年でステロイドを中止できる方もいますが、これも経験上完全に終了することが難しく、症状の残存や再燃のため5mg以下の少量ステロイド投与を継続しなければいけないことが多い印象です。

 

その他の治療として、メトトレキサート(リウマトレックス)、TNF阻害薬(レミケード、ヒュミラ)、IL-6受容体阻害薬(アクテムラ)などの有効性の報告がありますが、まだ保険適応はありませんし、プライマリケアでここまで手を出すのはちょっと厳しいかもしれません。

 

最後に、PMR症例をフォローする時にいつも気になる「実はRAを見落としているんじゃ・・・」という不安。2001年のAnn Rheum Dis(60:1021-24)では、49歳以上、一ヶ月以上続く両肩痛、赤沈>40mm/hrを満たすPMR患者94名をprospectiveに12ヶ月追いかけたところ、経過中に19名が1987年ACR criteriaを満たしたと報告しています(脱落4名)。

 

この疾患、まるで自分が名医になったかのような錯覚に陥る、ある意味“危険な”疾患です。もちろん、知っていることで、長らく診断が付かず苦しまれている患者様を助けることができますので、すべての先生に知っていていただきたい疾患です。ただ、中途半端な知識だけで『名医気取り』で治療を始めてしまうのも考えものです(管理人、大いに反省(/ω\))。

 

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