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“FD spiral”をぶった切る!

 

「怒る」という表現は、一説には「胃を刈る」という言葉が短くなったと言われています。また、「急ぐ」という表現も、「胃を削ぐ」からきた何て説もあるそうです。また「あいつムカつくわ~」何て言い方も、おそらく消化器症状からきているんじゃないかと思います。さらに「胃もたれ」なんて表現、これを英語で訳すと“My stomach is irritated.”となりますが、直訳すると「私の胃はイライラしています」・・・日本における胃の症状の表現は実に多彩です。

 

この多彩な表現、実は厄介なこともあるんです。下の『機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia; FD)』の診断基準を見て下さい。

 

   1. 次のうちの1つ以上と、項目2の両者を満たす。

  • Bothersome postprandial fullness (辛いと感じる食後のもたれ感)
  • Early satiation (早期飽満感)
  • Epigastric pain (心窩部痛)
  • Epigastric burning (心窩部灼熱感)

 

2. 上部消化管内視鏡検査などにて症状を説明可能な器質的疾患がない

 

*以上が半年以上前からあり、少なくとも最近3ヶ月に上記診断基準を満たす

RomeIII診断基準(2006)より

 

この診断基準を日本で利用するのは、ちょっと注意が必要です。「もたれ感」「膨満感」「みぞおちの痛み」「胸焼け」は確かによくある訴えですが、先ほど挙げた「ムカつき感」の他、「シクシクする」「ど~んとする」など、患者様の胃の症状に対する表現はとにかく多彩。しかも、日本のように医療機関へのアクセスが非常によい環境の場合、『半年以上』という項目は診断の遅れを招くばかりか、半年後の外来で「あ、FDの診断基準満たした!治療変更!」何てなることも無いでしょうし(^_^;)。

 

だいぶ回りくどくなりましたが、『機能性ディスペプシア』についてまとめてみました。

 

  • 上腹部を中心に疼痛や食後の胃もたれを中心とする症状を慢性的に繰り返し訴えるにも関わらず、症状の原因となる器質的疾患を一般的な臨床検査で発見できない症候群
  • 本邦の有病率は10~20%程度と極めて頻度が高い
  • プライマリ・ケアを担当する診療所を受診する腹痛や胃もたれを主訴とする患者の約90%が本疾患であろうと考えられている

 

プライマリ・ケアのセッティングでは、絶対に押さえておかなければいけませんね(^-^) 病因は以下のように考えられています。

図1

 

このように病態生理は複雑ですが、ポイントになるは①消化管運動機能異常②内臓知覚過敏③心理的因子の3つです(以前勉強会で使用したスライドを添付します)。

図2図3

図4

これを図に表すと以下のようになります。

図1

 

シンプルに言ってしまえば、「ピロリ菌やらストレスやらで胃の動きが遅くなったり、胃が広がりにくくなったりした結果、胃の中に食べ物が長く留まり易くなり、胃酸が出過ぎたり、ちょっとした刺激で反応するぐらい胃が敏感になる」ということです。

 

このように、いくつかの病態が複雑に絡み合った“FD spiral”(管理人の造語ですが(^_^;))からの脱却が、FD治療のキモになります。ただ、複雑に絡み合っているからこそ、全てのFDに対して一律の治療をする訳にはいきません。そのため、実際の症例に対する時は、『どの病態からの症状がメインなのか』に注意しなければいけません。診断から治療までのアルゴリズムを作ってみました。

 

図6

 

『知覚過敏対策』とは、よく噛んで食べる、刺激物を避ける、腹八分、適度の運動、十分な睡眠などです。

 

プライマリ・ケアでは必須の知識、『機能性ディスペプシア』を是非押さえておいて下さい。

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