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アスペルガーという“個性”

吉四六(きっちょむ)さんの、代表的な昔話。

 

『柿の見張り番』

 

ある秋の事。家の人はみんな仕事に出かけるので、吉四六さんが留守番をする事になりました。出かける前に、父が吉四六に、カキが盗まれないようにしっかり見ているように言いつけました。でも、自分も柿が食べたいし、友達も吉四六さんにけしかけます。そこで、吉四六は頓智を働かせ、友人と一緒にほとんどの柿を食べてしまいまいた。仕事から戻ってきた親は吉四六をしかりつけますが、吉四六はこう言いました。「村の子どもたちが次々と来て、棒を使ってカキの実をもいでいきました。言われた通り、気をつけて見ていたから間違いありません」父は呆れて、開いた口が塞がりませんでした。

 

『頓智』というより『悪知恵』ですね(+o+)

 

なぜこんなことを書いたかというと、今回のテーマ『アスペルガー症候群(Asperger Syndrome,; AS)』の症状を説明したかったからです。実は、プライマリ・ケアの現場にも相当数の大人のアスペルガー症候群の患者様がいると言われているんです。

 

アスペルガー症候群は、『知的障害を伴わないものの、興味・コミュニケーションについて特異性が認められる広汎性発達障害』と定義されています。1944年にオーストリアの小児科医ハンス・アスペルガーが「小児期の自閉的精神病質」という4例の小児症例の報告をしたのが最初です。発病頻度は1,000人に5人と言われていますが、軽いものも含めると100人に1人という報告もあります。 男女比は3:1と男性に多い疾患です。はっきりした原因や発症メカニズムは現時点では分かっていませんが、自閉症に類似の症状が見られるため自閉症の場合と同じく胎児期に遺伝的、生物学的、免疫学的な様々な要因が複雑に作用した結果、中枢神経系の発育時に何らかの問題が生じたのではないかと考えられています(一卵性双生児の一致率が90%であるのに対して、二卵性双生児の一致率が10%以下であることも、遺伝的要因を支持します)。

 

前出の『自閉症』や『注意欠陥多動性障害(ADHD)』との線引きが、一般の方々はもちろん、非専門医の我々にとっても難しいですよね。語弊があるかもしれませんが、簡単に言えば『高機能障害(知能障害)を伴わない自閉症』です。

 

あすぺ

 

症状は、大きく分けて①想像力の障害、②対人関係・社会性の障害、③コミュニケーションの障害の3つに分類されます。小児の症状に対しては他のツールで確認していただくとして、ここでは、大人のアスペルガー症候群の症状をまとめてみます。

 

①想像力の障害

  • 相手の言葉を鵜呑みにしてしまう
  • 皮肉を理解できない
  • 暗黙のルールが分からない・急な変化に対応できない・先のみえないことを異常に不安を覚える・部分に注目し、全体像をつかめない
  • 同音異義語が理解できない
  • 何でも悲観的に考える
  • 同時に二つのことができない
  • 考えが偏っている
  • 冗談が通じない
  • 言葉の裏の意味を理解できない
  • 曖昧な指示を理解できない

 

②対人関係・社会性の障害

  • 些細な事で言い争いになる・スケジュール管理ができない
  • チームワークを必要とする作業ができない
  • 白黒はっきりつけたがる
  • お金の管理ができない
  • 友人を作る気がない
  • 退屈に耐えられない
  • 指示がないと動けない
  • 片付けができない
  • 興味のないことは絶対にしたがらない
  • 交渉ができない
  • 人を批判すると止まらなくなる
  • 騙されやすい

 

③コミュニケーションの障害

  • 夢中になると話し続けてしまう
  • 意見を求められるとフリーズする
  • 状況にあった表情が作れない(喜怒哀楽が分からない)
  • 相手の顔が覚えられない
  • 過剰にびっくりする
  • ガヤガヤした環境が苦手
  • 名前を呼ばれないと自分だと気づかない

 

もちろん、大人のアスペルガー症候群を発症している本人には、悪気は全くありません。しかし、一般的には悪意があると思われ、会社などで嫌われてしまうケースも多々見受けられます。こういった社会とのギャップからうつ病、不安障害、強迫性障害、睡眠障害などの二次性障害を併発してしまうこともあります。むしろ、うつ病や不安障害などを診断した際に、背後にアスペルガー症候群がないかを意識した医療面接を行うことが大切だと言えます

 

このように“障害”という書き方をするとネガティブなものとして捉えられてしまいそうですが、決してそうではありません。むしろ天才肌の人も多いです(アスペルガー症候群の有名人・芸能人)。この方々を“障害”なんて括りで話すなんて・・・ねぇ(^_^;)

 

一般的な対応の仕方も大切ですが、ここでは外来で「アスベルガー症候群?」に出会った時の注意点を挙げます。

 

  • 最初は開いた質問でもいいが、反応が乏しければすぐにやめる。長時間の沈黙はプレッシャーになる。
  • 通常よりも、より細かく質問をする。曖昧な表現は理解できない可能性があるため、極力具体的に質問する(「眠れていますか?」→「午後12時には布団に入っていますか?布団に入ってから30分以内に寝付けていますか?嫌な夢はみますか?寝ている途中で起きてしまいませんか?」)。
  • 説明するときは、可能な限り絵に書いて伝える
  • 複数の指示は混乱のもと。具体的で簡潔な指示を箇条書きで書いてわたす(「あまり考えこまないで下さい」→「悩み事が出てきたときは、それをメモ帳に書き留めておいて下さい。その場で考えるんじゃなくて、後でどうしたらよかったのか、他の人に相談しながら具体的な解決法を考えましょう。」)。

 

繰り返しになりますが、アスペルガー症候群の方は、決して障害者ではありません。いわば“個性”です。プライマリ・ケア医の役割は、先ほど述べた「うつ病、不安障害、強迫性障害、睡眠障害を診断した際に、背景にアスペルガー症候群がないか」を確認すること、それに加え、アスペルガー症候群と診断した際に「患者様本人、および周りの人に具体的な対応の仕方を伝える」ことなんだと思います。

 

あれ、よく考えたら確信犯的にやっている吉四六さんは『アスペルガー症候群』ではなく『ミュンヒハウゼン症候群』・・・て、話がややこしくなるのでこの辺で(^_^;)

 

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