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実るほど頭を垂れる・・・

初期研修のゴールが見え始めた研修医の皆さん、2年間お疲れ様でした。この2年間で学んだことは、今後の皆さんの医者人生の『幹』になると思います。特に、この先何かに躓きそうになった時に、研修中に得た経験がきっと役に立つはずです。・・・ま、管理人の研修終了の時なんて、「やっと終わった~!もうこんな面倒なこと二度とゴメンだ( ̄▽ ̄)」って感じだったんで、偉そうなこと言える立場ではありませんが(^_^;)

 

さて、今回は「研修中にはあんまり気にしないけど、一般外来では結構悩む」内容を一つ。例えば救急外来で上室性期外収縮(PAC)を見つけた場合、皆さんはどうしていますか?おそらく、よほど主訴と関係ない限り「PACならまいっか」みたいな対応になっているんじゃないかと思います。しかも、それが救急車で搬送されてきた患者様なら、PACがあることすら伝えずに終わってしまうことも・・・。その場限りのことが多い救急外来(なんて言い方は救急外来を主戦場にしている先生方に失礼かもしれませんが)のセッティングならそれでもいいかもしれませんが、一般外来ではそういう訳にいきません。「ところで先生、この前の健診で上室性なんとかって書かれていたんだけど、これってこのままにしておいていいの?」なんて聞かれたら、貴方はどう答えますか?

 

この質問に対する答えの一つが、2014年10月のEuropean Heart Journalで発表された日本人を対象にした報告です。

 

Prognostic impact of supraventricular premature complexes in community-based health checkups: The Ibaraki Prefectural Health Study.

 

1993年から2008年にかけて、茨城県の健康診断に参加した63,197人(平均年齢58.8±9.9歳、男性20,476人、女性42,721人)の一般住民を対象に、一次エンドポイントを脳卒中死、心血管死、全死亡、二次エンドポイントを自己申告で心疾患や心房細動の既往がない患者の新規心房細動としています。

 

健診時にPACがなかった群を対象としたハザード比は、一次エンドポイント(脳卒中死、心血管死、全死亡)に対しては男性で1.24(0.98~1.56)、女性で1.63(1.30~2.05)、二次エンドポイント(新規心房細動発症)に対しては男性で4.87(3.61~6.57)、女性で3.87(2.69~5.57)と報告しています。

 

既往のある、なしが自己申告制になっていることや、その他の背景因子(家族歴、喫煙、アルコールなど)を検討していないことを考えると、この結果をそのまま鵜呑みにすることは出来ません。実際、PACのある群はない群に比べて高齢者、喫煙者、飲酒者、肥満、高血圧症を有する割合が高いほか、総コレステロールや中性脂肪の値も高いようです。ただ、逆に言えば、より一般の外来で出会うセッティングに近いとも言えますし、少なくとも「健診で行われた12誘導心電図で確認される上室性期外収縮は、心房細動発症のリスクを明らかに増加させる」と言い切ることはできそうです。

 

つまり、先ほどの患者様からの質問への返事は「上室性期外収縮自体は、今すぐ問題になるものではありません。でも、上室性期外収縮がある方は、ない方に比べて4倍程度心房細動という脳梗塞の原因になる不整脈を引き起こすことが分かっていますし、恐らく脳卒中や心筋梗塞などの発症率も高くなるだろうと報告されています。よりしっかりした生活習慣病の管理が必要だという心臓からのサインですので、これを機会に頑張ってみてはどうですか?」が、一つの正解です(もちろん、このスタディの結果では、ということですが)。

 

皆さんも、この先こういった「研修中にはあんまり気にしないけど、一般外来では結構悩む」問題に沢山出会うと思います。最初のうちはそういった問題にも真剣に向き合うのですが、“何となくこなせてしまう時期”になると、忙しさを理由にどうしてもこういった副次的な問題はおざなりになりがちです。是非、今のフレッシュな気持ちを忘れずに、これからも患者様のために頑張って下さいね(^^) (自戒の念を込めて)

 

胸痛

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