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「そこにカネがあるからさ」

アメリカの有名な銀行強盗であるウィリー・サットン(1901-1980)、変装の名人で、79歳で他界するまでに総額200万ドルを強奪した大泥棒です。そのサットンが逮捕された際、「何故銀行ばかり狙うんだ?」と聞かれて、こう答えました。「そこにカネがあるからさ」 ―― 実際、後日サットンはそのようなことは言っていないとはっきり言っているようですが、この「カネが確実にある場所に盗みに入る方が確実だ」という意味が、医学教育の場面で「所見のある場所を狙って検査を行うこと、最も確実で効率がいい」とう戒めとして使われるようになりました。

 

3d white person. Bank robber with a safe on his back. 3d image. Isolated white background.

 

さて、今回はその『サットンの法則』が最も議論の対象になる『リンパ節腫脹』です。これも「救急外来ではそこまでメインの訴えじゃないけど、その他の現場ではしょっちゅう出会うし困るし・・・」の代表みたいな主訴ですよね。診察の際にはあーだこーだと色々鑑別を挙げるんですが、結局確実な診断を付けるためにはリンパ節生検(できれば郭清)するしかない。でも、何でもかんでも刺す訳にいかないし・・・って、どなたも一度は経験されているんじゃないでしょうか。

 

 

まずは、リンパ節腫脹の一般的な知識について。こういった知識を持っているかいないかで、漠然としたリンパ節の触診がちょっと変わってきますよ(・∀・)

 

  • 頸部や腋窩のリンパ節は直径1cm、鼠径リンパ節は直径1.5cm(特に素足で生活している人)までは正常範囲。
  • 2週間以内に消退するものは感染症、1年以上の経過は非特異的な原因の場合が多い。
  • 過去にその近傍で感染症を起こしたことがある場合、リンパ節を触知しやすい。
  • 小児では成人に比較してリンパ節を触知することが多い.
  • リンパ節腫脹の約1%はがんの転移、もしくはリンパ腫による
  • 頸部リンパ節腫脹は、腫れている部位が重要。顎下・前頸部は口腔内~咽喉頭の炎症、後頸部は伝染性単核球症、耳介前リンパ節は眼瞼結膜の炎症、後頭リンパ節・後耳介リンパ節は風疹を疑う
  • 右鎖骨上リンパ節は胸腔内(縦隔・肺・食道)、および腹部(消化管、肝胆膵・腎臓・精巣・前立腺・卵巣)からのリンパの流れをうけるため、触知した際は悪性腫瘍の可能性が高まる咽頭炎→単独で右鎖骨上リンパ節はない!
  • 滑車上リンパ節(Epitrochlear node)の腫脹は、前腕の炎症がない場合は、全身性リンパ節腫脹を反映している。
  • HIV感染症の診断において、滑車上リンパ節腫脹は非常に重要。0.5cm以上で臨床的意義が高くなる(感度84%、特異度81%、陽性尤度比4.5、陰性尤度比0.2)。腋窩リンパ節腫脹を認める女性の場合、腋の剃毛処理による皮膚病変の有無を確認する。
  • 大胸筋に沿ったリンパ節腫脹は、乳癌の可能性がある。
  • 鼠径リンパ節は2カ所に分けて考える。Horizontal nodeは腹腔内、骨盤腔内、陰部からのリンパの流れを、Vertical nodeは下肢からのリンパの流れを受ける。
  • リンパ節サイズが大きい、増大傾向がある、リンパ節が硬い、周囲組織と癒着しているといったリンパ節所見の他、体重減少、寝汗、掻痒感、耳鼻咽喉科領域の症状(嗄声・嚥下困難)を認める場合は、悪性腫瘍の可能性が高くなる。
  • 固形癌で全身性リンパ節転移は稀である。

 

リンパ節

 

 

全身リンパ節腫脹をきたす疾患は、やっぱり押さえておく必要があります。特に考えなければいけない疾患は悪性リンパ腫、リンパ球性白血病、結核、HIV感染症、伝染性単核球症、B型肝炎、梅毒、猫ひっかき病などです。このうち、肝脾腫を伴う場合は悪性リンパ腫、リンパ球性白血病、結核、伝染性単核球症の可能性が高くなります。

 

多発リンパ節

 

また、全身リンパ節腫脹をきたす疾患には“CHICAGO”なんて覚え方もあります(Iran J Med Sci Supplement March 2014; Vol 39 No 2: 158-170)。

 

C:Cancers:血液腫瘍、リンパ腫、転移(乳癌, 肺癌, 腎癌 等)

H:Hypersensitivity syndrome:血清病、薬剤

I:Infection:ウイルス(EBV, CMV, HIV)、細菌、真菌、Protozoan、リケッチア、Helminthes

C:Connective Tissue disorders:SLE、RA、皮膚筋炎

A:Atypical lymphoproliferative disorders:Casleman病、Wegener病

G:Granulomatous:Histoplasmosis、Mycobacterial infections、Cryptococcus、Berylliosis、猫引っ掻き病、Silicosis

O:Others

 

 

こうやって色々考えながら診察するわけですが、結局のところ、診断をつけるためには『サットンの法則』なんです。もちろん悪性腫瘍の確認が最も大切なんですが、壊死性リンパ節炎(菊池病)のように生検されない限り診断されない疾患もあるんです(蝶形紅斑・関節炎・白血球減少・抗核抗体陽性を認めることもあり、SLEとの鑑別やSLEへの移行が問題となることもあります)。生検をするかしないかに関しては、今まで書いてきた情報で出来る限り検査前確率を上げたり下げたりするしかないですし、患者様の意志も大切になってきます(経過観察できそうな場合も、患者様の不安をとるために生検を行うことは、個人的に有りだと思います)。こんな予測モデルもあるので参考にしてみて下さい。

 

リンパ節モデル

 

そこにカネがあっても、盗みに行くか行かないかはよく考えましょうねヾ(´▽`;)ゝ

 

 

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