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10年一昔 ~IgG4関連疾患~

10年前の総合診療のカンファランスではほとんど鑑別に挙がらず、仮に挙がったら「うぁ~、この先生スゲー\(◎o◎)/」ってなっていた疾患が、今では当たり前になっていることって結構あります。その代表的な疾患概念が、今回取り上げる『IgG4関連疾患』です。学生の皆さんにしてみたら当たり前の概念かもしれませんが、実は臨床経験10年以上の先生方にとっては、この疾患の診断にたどり着くと、ちょっとテンション上がっちゃうんです・・・て、患者様には失礼な話ですが(>_<)

 

IgG-4関連疾患(IgG-related disease; IgG-4RD)は、血清IgG4高値と病変部への著明なIgG4陽性形質細胞の浸潤を特徴とする疾患群です。疾患概念自体は1960年代から言われていたようですが、2001年に信州大学の浜野らが報告した硬化性胆管炎(自己免疫性膵炎)における高IgG4血症の報告を引き金に、日本を中心に非常に多岐にわたる疾患での同様の病態が報告されるようになりました。

 

疫学的なことはまだあまり分かっていません。っていうか、後述するとおり診断基準がしっかり確立されていないため、正確な疫学調査が出来ないんですね(^_^;) 本邦の難治性疾患研究班の推計では、発症患者の平均年齢は62歳、国内の患者数はおよそ26,000人と報告しています。自己免疫疾患的な側面を持つ一方、アレルギー性疾患の合併が高頻度に認められ、かつ慢性経過をとることから、持続的な抗原感作が起こっている可能性が指摘されています。しかし、通常のIgM、IgG1を介した免疫応答に対して、何故、IgG4だけが誘導されるのか未だに分かっていません。

 

あらゆる内科領域(神経、消化器、腎臓、呼吸器、循環器、内分泌、血液、免疫)や眼科、耳鼻科、口腔外科領域など、全身いずれの臓器でも発症しうる、“鑑別屋さん泣かせ”の疾患群です。

 

IgG4-Related Disease(IgG4-RD)

 IgG4-RD1

 

鑑別対象はぶっちゃけ“何でもアリ”です。特にシェーグレン症候群やGPA(granulomatosis with polyangitis:多発血管炎性肉芽腫症、ウェジナー肉芽腫症)などの自己免疫性疾患、キャッスルマン病や悪性リンパ腫などとの鑑別は困難です。今年ARTHRITIS & RHEUMATOLOGYに掲載された、日本を中心としたIgG4関連疾患のステートメントである『International Consensus Statement on the Management & Treatment of IgG4-Related Disease』では以下のような鑑別疾患を挙げていますが・・・挙がっている疾患自体がマニアック(´・ω・`)

 

IgG4関連疾患との鑑別を要する疾患

 IgG4-RD2

 

ま、「全身症状を伴っていて、画像上限局的な所見を認めた際は、一度は疑いましょう」って感じですかね。

 

 

さて診断。鑑別対象が非常に多岐に渡ることもあり、すべての症例を診断する単一基準を作るのは困難であると言われていました。2011年にIgG4関連疾患研究班のワーキンググループが、①専門医以外の一般臨床医でも使用できる、②各臓器の診断基準と整合性をもたせる、③出来る限り簡略化する、④悪性腫瘍を除外するために病理組織を重視する、⑤ステロイドの診断的治療は推奨しないというコンセプトのもと『IgG4関連疾患包括診断基準』が世界に先駆けて発表されています。

 

IgG4関連疾患包括診断基準2011

IgG4-RD3

 

ただし、『一般臨床で使いたいけど、病理診断がないと確定しない』という矛盾から、診断感度は必ずしも高くありません。凖確診群または疑診群には、すでに存在する臓器特異的IgG4関連疾患診断基準である『IgG4関連ミクリッツ病診断基準』、『IgG4関連自己免疫性膵炎診断基準』、『IgG4関連腎症診断基準』を使用する必要があります。

 

 

念のため治療もまとめておきましょう。IgG4-RDは中等量以下のステロイドが劇的に奏功し、通常は良好な経過をとります。自覚症状や全身症状が乏しい場合は無投薬での経過観察も選択されますが、膵臓、腎臓、後腹膜、肺、中枢神経などの病変が存在する場合は、治療の遅れが不可逆的な臓器障害をきたすこともあり、早期の治療開始が必要になります。投与方法はプレドニゾロンを0.6mg/kg/日(分3)より開始し、投与2週間ごとに10%ずつ漸減、10mgからは3ヶ月維持し、その後は症状やデータをもとに1mg/月程度のスピードで減量、最終的に5mg程度を維持量とするのが一般的です。

 

 

結局、ただの疾患解説になっちゃいましたね(^_^;) でも、お気づきかもしれませんが、今回のページだけで総合診療カンファランスで登場する「一枚上手の鑑別疾患」が沢山出てきているんです。是非押さえておきましょう。

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