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あれも結核!?これも結核!?

このブログで、時々「~に関しては、また別の機会で書きたいと思います。」みたいなことを書くのですが、それ以来全然“別の機会”が来ないことも多いです(スミマセンm(> <*)m)。今回のテーマ、『プライマリ・ケアでの結核へのアプローチ』も、書くって言っていたのが3年以上前(終わりなき戦い~結核の集団感染~)・・・オオカミ少年にならないように今回取り上げます(^_^;)

 

 

日本が結核大国であることは、今更言うまでもありませんよね。もちろん、明治時代から昭和20年代までの「国民病」「亡国病」と恐れられた時代から比べれば劇的に減少 していますが、現在でも結核罹患率は2010年に人口10万人あたり18.2人で、10人以下となっている欧米諸国に比べまだまだ多く、5人前後のアメリカ、カナダ、イタリア、オーストラリア、ドイツなどの先進国に比べると、残念ながら相変わらずの『中蔓延国』です。「日本人である」というだけで、結核の検査前確率は上がる訳です

 

 

病歴はもちろん大切です。『3週間以上続く咳』という病歴で結核を疑うことは容易だと思いますが、実際は肺結核単独で発症するのは全体の80%で、20%は肺外結核(胸膜炎、リンパ節(大部分が頸部リンパ節)、粟粒結核、腹膜炎、心内膜炎、副腎、耳下腺、腸、脊椎、骨・関節、髄膜炎、尿路、膿胸、皮膚、性器など)です。リンパ節腫脹、体重減少、不明熱はもちろん、長引く症状は「とにもかくにも結核の否定」です。もちろん、塗抹陽性患者さんとの接触は大幅に感染率を上げます(家族内なら270倍、友人や同僚なら70倍:Bull Int Union Tuberc. 1975;50(1):90-106.)。

 

 

あと、『レボフロキサシンで治まった咳』というのも、“怪しい病歴”です。抗菌薬の勉強を始めると、始めの頃に「遷延する咳に対して漫然とレボフロキサシンを投与し続けることは、結核をマスクしてしまうから慎むべし」といった内容に出会うと思います。まるで、レボフロキサシンが『結核の敵』みたいになっちゃっていますが、実はレボフロキサシンは、もともとストレプトマイシンやリファンピシンといった第一選択薬が無効、あるいは副作用で使用できない場合の第二選択薬の位置づけです。しかも、第一選択薬に比べて副作用が少ないことから、日本結核学会推奨のもと、平成26年9月30日に「肺結核」および「その他結核」に対して適応の追加が申請され、現在最終報告待ちの状態です。むしろ、これからの結核治療にとって大切な薬なんです。もちろん、治療のための投与期間は長期に渡りますので、短期間の投与は厳に慎むべきなのは言うまでもありません(レボフロキサシン飲んで咳改善→止めたらまた咳が出てきたから受診して「この前の薬良く効いたから下さい」→何度も病院受診・・・は最悪のシナリオです(-_-;))。

 

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結核の問題点は、何といっても『再燃』です。結核菌に感染したもののうち一生のうちに発症するのは約10%で、残りの約90%は免疫防御機構により結核菌を封じ込めた潜在性結核(latent TB infection ;以下LTBI)になります。しかし、糖尿病、末期腎不全、アルコール多飲、悪性腫瘍、免疫抑制剤使用、HIV感染ではその確率は高くなり、特にLTBI患者がHIV感染を合併した場合、年間の結核発症リスクは5-9%と急増します(Clin Infection Dis 1996 Apr; 22(4):683-704.)。ちなみに、BCG接種の予防効果は52%で、50年~60年たっても一定の効果があるそうです(JAMA. 2004 May 5; 291(17): 2086-91.)。

 

 

さらに、管理人がかなり気にしているのが『結核の治療時期』です(何となく玄人っぽくみえて研修医の先生に偉そうに講釈を垂れてます(;・∀・))。例えば、90歳の女性が「わたしは昔結核の治療をしましたよ」と言われたとしましょう。その方が70歳の時に治療されたのなら、特に問題はありません(抗結核薬での治療がしっかり終了している場合、95%は再発しませんし、発症の大部分は治療終了後1年以内です)。ただ、その治療が20歳だったら、事情が大きく変わります。

 

 

下の表をご覧下さい。

 

Tb推移

 

今でも結核治療の柱になっているストレプトマイシンが臨床応用されていたのは1951年(昭和26年)です(1948年に肺結核患者107例に対しストレプトマイシンを使用する群と使用しない群に分けた無作為化比較試験が、British Medical Reserch Council (BMRC)から発表されており、ストレプトマイシンの有効性が報告されました。この研究は、質の高い臨床試験の草分けと言われています)。しかも、この時期の日本はまだまだ戦後の混乱期ですので、全員がストレプトマイシンでの治療を受けられたとは思えません。実際、ほとんどの結核患者様がストレプトマイシンでの治療を受けられるようになったのは、1960年代中盤だそうです。この前の時代に治療されていた方の治療方法は「空気の綺麗なところで寝ているだけ」の『安静療法』と、『人工気胸療法』『胸郭形成術』など補助的な外科的処置だけだった可能性が高い訳です。多分、こんな感じだったのでしょう。

 

けっかく

映画 『風立ちぬ』より

 

 

ただ、ご高齢の患者様に当時の治療内容を伺っても、覚えてらっしゃらないことが多いです。そこで管理人は、微妙な時期の患者様に対しては「どこか田舎の方にしばらく行っていたり、家の奥の部屋に隔離されたりしていませんでしたか?」「痛い筋肉注射を何回もうたれた記憶はありませんか?」といった聞き方をしています。これで、隔離されていたり、筋肉注射をされた記憶のない方は“結核治療歴なし”と同等の対応をするようにしています。

 

あと蛇足なんですが、ご高齢の方に「結核になったことありますか?」と伺って“なし”と答えられた時も注意が必要です。結核と認識していなくても、医者に『肋膜炎』『肺浸潤』なんて言われているかとがありますから。

 

相変わらずボリュームが多くなってしまいましたので、続きはまた別の機会・・・とりあえず一年以内には(^_^;)

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