Home > ブログ > 「あれ?効いてない?」の“Following action”

「あれ?効いてない?」の“Following action”

今回、主に研修医の先生を対象に『抗菌薬』の話をさせていただきました。一時間半程度で抗菌薬の総論から各論を話すって・・・無謀でしたね(-_-;) 説明が雑になってしまってすみませんm(_ _)m💦

 

 

今回のポイントは色々あるんですが、一番伝えたかったことは『抗菌薬が効かなかった時は何を考える?』ということです。恐らく、感染臓器が分かっている時の最初の抗菌薬の選択に迷うことはあまりないと思います(いい本がいっぱいありますからね)。実際の臨床現場で困るのは、『最初に選択した抗菌薬が効かなかった時の“次”のアクション』です。詳しく書き出したらきりがない(というか、管理人が説明できない(-_-;))ので、今回は最低限抑えておきたい、「ここまで知っていたら出来る研修医“風”」なポイントをまとめます(笑)。管理人が普段考える順番で記載しますので、感染症診療に慣れていない先生は、思考パターン作りの参考にしていただければ幸いです。

 

 

      ①  抗菌薬の投与方法(量・回数・時間)が間違っていないか?

②  標的臓器に移行の悪い抗菌薬ではないか?

③  スペクトラムから外れた菌(特に緑膿菌や耐性菌)が関与していないか?

④  薬剤耐性菌が出現していないか?

⑤  新たに院内感染症を起こしていないか?

⑥  抗菌薬の届かない場所(髄腔、前立腺、眼内、膿瘍)の感染症ではないか?

⑦  実は自然経過で説明できるのではないか?

⑧  そもそも本当に感染症か?

 

 

① 抗菌薬の投与方法が間違っていないか?

 

まずは、謙虚に「自分が悪いんじゃないか?」と疑ってみましょう(笑)。投与方法に関してはPK/PD理論やらPAEやらバイオアベイラビリティやらが絡んできてとても書ききれないので、ここではサンフォードで推奨されている投与量を載せてきます(詳しくは以前のブログ『抗菌薬の“小難しい”話』をご覧下さいm(_ _)m)。ただ、この投与量はあくまでPK/PDから導かれた理想的な投与量であって、日本の保険適応量より総じて多いことはご注意下さい

 

さんふぉーど

 

 

② 標的臓器に移行の悪い抗菌薬ではないか?

 

もうちょっと自分を疑ってみましょう。組織への移行性って普段はあまり意識しないかもしれませんが、実は抗菌薬によって結構違います(下図)。また、組織ごとによっても随分違います。例えば、尿中には1,000μg/ml以上、血中には静注投与によって100μg/ml以上移行しますし、胆汁中には胆汁移行性のよい抗菌薬では1,000μg/ml程度移行すると言われています。それに対して髄液中にも多くて20~30μg/mlしか移行しませんし、喀痰中に至っては多くても2~3μg/mlしか移行しません。PK/PD理論に則っていれば(かつ、診断が間違っていなければ)、だいたいの感染症の場合は問題ありませんが、抗菌薬の効果がイマイチな場合は少し疑ってみてもいいかもしれません。

 

そしきいこう

 

 

③ スペクトラムから外れた菌(特に緑膿菌や耐性菌)が関与していないか?

④ 薬剤耐性菌が出現していないか?

⑤ 新たに院内感染症を起こしていないか?

 

ここからちょっと気合入れて読んで下さい(‘◇’)ゞ 治療開始時から原因菌が緑膿菌や薬剤耐性菌だった、なんてことはもちろん考えると思いますし、治療経過中の耐性菌出現に関しても自然に頭に浮かんでくると思いますのでここでは省略します。 “SPACE”なんて有名ですよね(^-^) 念のため説明すると、医療関連感染症の原因になるグラム陰性桿菌群で、Serratia、Pseudomonas、 Acinetobacter、 Citrobacter、 Enterobacter頭文字をとったものですβラクタム系とモノバクタム系に耐性があり、後述するESBL産生菌の可能性もあります。使える抗菌薬が限られるため、臨床的に重要になってきます。

 

“SPACE”以外にも色々考えなければいけないのですが・・・多分大混乱です(^^;) そこで、頻度の多い以下のパターンだけ覚えておきましょう。結構戦えますよ!

 

  • 陽性球菌って分かっているけど効かない!?⇒腸球菌かも・・・
  • 陰性桿菌って分かっているけど効かない!?⇒ESBL産生菌かも・・・
  • カルペネムが効かない!?⇒MRSA、腸球菌(特にE.faecalis)、非定型菌、真菌、Stenotrophomonas maltophiliaかも・・・

 

『腸球菌』はしょっちゅう出現する、非常に悩ましい菌です市中感染なら尿路か消化管、院内関連感染なら尿路かデバイスが感染源になることが多く、敗血症や感染性心内膜炎の原因になります。一般的に、腸球菌のペニシリン結合蛋白はセフェム系と親和性が低く、治療には使用できません。市中感染は主にE.faecalisでセフェム系には耐性を持ちますので、感受性のあるアンピシリンで治療を行います。医療関連感染は主にE.faeciumでセフェム系はもちろん、アンピシリン、トブラマイシン、アミカシンにも耐性を示すため、バンコマイシン(VCM)での治療になります。ただ、ダラダラとVCMを使用し続けると、バンコマイシン耐性腸球菌(Vancomycin Resistant Enterococci;VRE)が出現・・・厄介ですね(-“-)

 

『ESBL(Extended Spectrum β‐Lactamase)産生菌』はペニシリンしか分解しないはずのペニシリナーゼが広域セフェム系まで分解するようになった(つまり、広がった=Extended Spectrum)菌です。もともとは、肺炎桿菌や大腸菌が中心でしたが、最近は前述のSPACEにまで広がっています(市中感染の大腸菌のうち、約10%がESBL産生菌と言われています)。β-ラクタム環を分解するβ‐ラクタマーゼを持つためペニシリン系、セファロスポリン系、モノバクタム系が無効!治療選択はカルバペネム系かニューキノロン系になります。この菌は、単に感受性試験だけだと“Sensitive”と報告されることがありますので、報告の際に『ESBL産生菌』のコメントが付いているときは要注意です。

 

「カルバペネム無敵!」なんて感覚、そんなにないかもしれませんが、実際の臨床では「カルバペネム効かなかったら次どうしよう?」なんてことはしょっちゅうあります。誤解を与えるかもしれませんが、カルバペネムのイメージは、ザックリ言うと「抗緑膿菌ペニシリン(タゾバクタム)よりさらに嫌気性菌カバーが良くなっているけど、腸球菌には効かなくなった薬」です。MRSAや腸球菌(特にE.faecalis)はもちろん、レジオネラ、クラミジア、マイコプラズマ、真菌、Stenotrophomonas maltophilia(医療関連感染症を起こすグラム陰性桿菌でカルバペネム耐性)には効きません。全然無敵じゃないですね

 

 

⑥ 抗菌薬の届かない場所(髄腔、前立腺、眼内、膿瘍)の感染症ではないか?

 

どんなに抗菌薬を投与しても、移行しにくい場所があります。代表的な場所は髄腔内ですが、前立腺眼内にも移行が悪く、不明熱診療の“キモ”になります。膿瘍に関しては、内部に血流がないので、当然抗菌薬は届きません。膿瘍の出来やすい場所に関しては、“Top to bottom approach”です!頭の中で全身CTを撮っているようなイメージで、頭の先からつま先までギュイ~ンとスキャンをかけてみましょう(^o^)丿

のうよう

 

 

⑦ 実は自然経過で説明できるのではないか?

 

実は治ってきているのに、「あれ、熱が出ている。CRPも高い。治ってない(>_<)!」ってパターンです。感染症のnatural courseは抑えておきたいところです。具体的な例を挙げておきますので、参考にして下さい。

 

  • 肺炎球菌は菌壁の抗原性が強いため、治療が奏効しても発熱が持続したり、一時的に胸部XPの陰影が悪化したりすることがある
  • 脱水が改善すると、一時的に胸部XPの陰影が増悪することがある
  • 腎盂腎炎の平均解熱時間は約34時間で、72時間後でも13%が発熱している
  • 重症感染症や高齢者の感染症、解熱剤やステロイド投与下では発熱は当てにならない
  • 好中球減少時は検査所見が当てにならない

 

 

⑧ そもそも本当に感染症か?

 

実際はこのパターンが一番多いかもしれません。これも書き出したら、管理人も読んでいただいている皆さんも疲れてしまうと思いますので(汗)、不明熱の原因疾患としてまとめておきます。“発熱”という括りで臨床的に特に大切なのは、悪性リンパ腫、腎癌、成人型スティル病、側頭動脈炎、偽痛風、高安動脈炎、薬剤熱、亜急性甲状腺炎、甲状腺機能亢進症、肺塞栓症、サルコイドーシスあたりです。

FUO

 

また、もともとの感染症に肺塞栓、うっ血性心不全、心筋梗塞、胸水、無気肺、ARDS、BOOP(器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎)、気腫性腎盂腎炎などを併発している場合もあり、特にリスクの高い場合は常に注意を払う必要があります。

 

 

・・・確実にボリュームオーバーですね(*_*) ただ、これは患者様の生死に関わる重要な知識です。是非抑えておいて下さい。

 

Home > ブログ > 「あれ?効いてない?」の“Following action”

メタ情報

Return to page top