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10年生存率・・・6割 (@_@;)!?

国立がん研究センターが、『すべてのがんの全臨床病期の10年相対生存率が58.2%だった』と発表しました。これは、全国がん(成人病)協議会に加盟する16施設で1999年から2002年にかけて診断治療された35,287症例を対象とした大規模な報告です。自分の施設で診断されそのまま治療された症例だけでなく、他の施設で診断され自分の施設で治療された症例も解析しています(診断のみの症例は除外されています)。『しっかり診断されて、しっかり治療されたらどのような経過をとるか?』という、実臨床において非常に意義の高い報告です。

 

 

ただ、この報告のネットで付けられているタイトルは、概ね『がんの10年生存率58.2%!』って、ショッキングなものがほとんどです。もちろん、記事を読めばしっかり解説されているのですが、一般の方からするとどうしても専門用語が多く、場合によってはネガティブに受け取られるかもと危惧します。『S○AP解散(か?)』とは訳が違いますし、もう少し丁寧に扱って欲しいな~って、思います(ファンの皆さんスミマセンm(_ _)m💦)。少なくとも、我々医療関係者はこのデータの意味をしっかり押さえておく必要があります。数字だけが独り歩きしてしまうと危険ですので、少し解説させて下さい。

 

 

まず、以下の表をご覧ください。

 

ひょう

 

母数が多く、脱落数も少ない報告です。出されているデータもただの「生存率」ではなく「相対生存率」(老衰や交通事故などほかの原因での死亡を除き、純粋に「がんと診断されてから10年後に何%の人ががんで亡くならずに生きているか」)で報告しており、質の高い報告だと思います(「お前は何様だ!」と突っ込みが入りそうですが(^^;))。

 

 

ざっくりまとめると以下の通りです。比較的予後が良いと言えそうなのは、甲状腺がん、前立腺がん、子宮がん、大腸がん、胃がん辺りでしょうか。一般的な感覚とも近いですよね(‘ω’)ノ

 

 

  • 90%以上:甲状腺(90.9%)
  • 70%~90% :前立腺(84.4%)、子宮体(83.1%)、 乳(80.4%)、子宮頸(73.6%)など
  • 50%~70%:大腸(69.8%)、胃(69.0%)、腎(62.8%)、 卵巣(51.7%)など
  • 30%~50%:肺(33.2%)など
  • 30%未満:食道(29.7%)、胆嚢・胆道(19.7%)、 肝(15.3%)、膵(4.9%)など

 

 

また、同じ母集団ではありませんが、全国がん(成人病)協議会が同じ条件で5年生存率も発表していますので、5年目以降の経過もある程度推測できます。主ながんの5年生存率と10年生存率は以下の通りです(http://www.gunma-cc.jp/sarukihan/seizonritu/seizonritu2007.html より)。

 

 

  • 食道:42.4%→29.7%(5年目以降も低下し続ける)
  • 胃:73.0%→69.0%(5年目以降はほぼ横ばい
  • 大腸:78.8%→70.4%(5年目以降はほぼ横ばい
  • 肝:58.7%→29.8%(5年目以降も同じ割合で低下し続ける
  • 胆嚢・胆道:42.1%→32.2%(5年目以降も同じ割合で低下し続ける
  • 膵:22.4%→11.1%(5年目以降も同じ割合で低下し続ける
  • 気管・肺:77.1%→57.8%(5年目以降も同じ割合で低下し続ける
  • 乳:95.4%→82.8%(5年目以降も同じ割合で低下し続ける
  • 卵巣:65.4%→56.8%(5年目以降も緩やかに低下し続ける)
  • 前立腺:100%→84.4%(5年生存率はいいが、それ以降はやや低下する)
  • 甲状腺:91.5%→90.9%(5年目以降はほぼ横ばい)

 

 

ほとんどのがんが、5年目以降も定期的な検査が必要であることが分かります。管理人は以前、「とりあえず5年たてば再発率は下がりますから、そこまで頑張りましょう!」なんて外来で言ったこともありますが、それが言えるのはせいぜい胃、大腸、甲状腺・・・今思えば何て無責任なことを言っていたんだろう(+o+)

 

Im-Sorry

 

 

とにかく、これらのデータをすべてまとめて『58.2%』な訳ですので、そういった意味では、ネット上のタイトルは、事実としては間違っていません。でも、当然この数字を何でもかんでも用いることはできませんよね

 

 

まず、“すべてのがん”と言っていますが、実際には上記のとおり“すべて”ではありません。28種類のがんがピックアップされていますが、上皮内がん、粘膜内がん、臨床病期0は含まれていませんし、予後があまり良いとはいえない白血病は入っていません。また、すべてのステージをまとめて報告しているのも紛らわしいところですし、年齢も全く考慮されていません(実はこの報告は、5~95歳までの幅があるんです!)。極端なことを言えば、40歳でステージⅠの甲状腺がん(未分化癌以外)の患者様が「自分は50歳までに死んでしまう確率は4割・・・」なんて誤解してしまうことがあるかもしれません。また、再発率の高い乳がんや比較的経過がゆっくりな前立腺がんがまとめて報告されているため、男女間での解釈にも注意が必要になります。もう少し言うと、この症例登録期間は1999年~2002年、つまり約15年も前です(仕方ありませんが)。15年もたてばかなり治療も進歩していますので、現段階で診断された患者様にそのまま当てはまるものでもありません。個々の症例によって全く違ってきますので、極端なことを言えば、この『58.2%』には、ほとんど意味がないんです

 

 

もちろん、今回の報告を否定している訳じゃないですよ。改めて言うまでもなく、非常に有意義な報告です。だからこそ、我々医療関係者が、一般のネットレベルの知識に留まっていてはいけません。不安な気持ちを訴える患者様に、先ほどの表を提示しながら「いや、実際○○さんは大腸がんのステージⅡと診断されていますから、一般的な10年生存率は85%程度です。しかも、診断から5年以上たっていますし、かなり安全な時期に入っていますよ。」なんてコメントを返せたら、それだけで立派な“ケア”になると思います

 

 

・・・何か今回、ちょっと偉そうでしたね(;・∀・)

 

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