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高血糖→専門科お任せ・・・では、つまらないですよ!

賭博問題、覚醒剤問題、チーム内金銭授受など、プロ野球界で残念なニュースが続いています。スッキリしない状態で開幕を迎えたことに賛否が挙がっていますが、長い目でみたらマズいんじゃないかって、個人的に思います。・・・ま、例の如く個人の見解は置いておきます。

 

野球

 

 

今回、一連の騒動に関与している元選手が、糖尿病の治療のため入院になりました。何でも血糖900㎎/dL以上・・・「これはアカンやろ」と、思わず突っ込みを入れたくなる数字です。というわけで、こんな症例を作ってみました。今回は、『非専門医で押さえておくべき糖尿病診療』です。皆さんはどう介入しますか?

 

 

48歳男性、元スポーツ選手。幼少期からスポーツをしており、18歳から40歳までプロとして活躍していた。もともとの体形はBMI23.7(188㎝、84㎏)、その後筋肉量増加に伴い、体重108㎏まで増加した。引退後は特に運動をしておらず、現在の体重は120㎏(BMI33.95)。飲酒・喫煙歴は30年で、その間はずっと暴飲暴食をしている。現役引退後は特に運動もしていない。今回、「意識がボーとする」という主訴で初診外来を受診。空腹時血糖914㎎/dLと異常高値を認めたため入院となった。

 

 

・・・あくまで仮想症例ですm(_ _)m 実際、我々がするべきことは、「医療のプロとしてどう対応するか」ですし、印象に残る症例から学ぶことは大切ですから。

 

 

―救急外来―

 

「意識がボーっとする」→『意識障害の鑑別』ってところはとりあえず置いておきましょう(その感覚は非常に大切ですが)。まずは何をするか?もちろん、救命を第一に考えて血糖を下げるわけですが、インスリンが入ると評価しにくくなる項目もありますので、先に検査オーダーを立てましょう(救急外来で提出できない場合も、オーダーだけして検体はとっておいて下さい)。具体的には、動脈血ガス、血糖値、電解質、肝腎機能、CBC(含血液像)、CRP、PCT、HbA1c、C‐ペプチド、抗GAD抗体、血漿浸透圧、血中ケトン体、ケトン体分画、尿一般(含尿中ケトン)・沈査、尿生化学、尿浸透圧、各種培養などです。特に感染症に関するものは重要で、高血糖緊急症の20~40%に感染が合併していると言われています

 

で、鑑別を進めていく訳ですが、ここではすっきり『糖尿病ケトアシドーシス(DKA)』vs『高血糖高浸透圧症候群(HHS)』の考え方で行きましょう。

 

     〈糖尿病ケトアシドーシス(DKA)〉

高血糖(≧250mg/dL)、高ケトン血症(0.6mmol/L以上でケトーシス、3.8mmol/L以上でDKAの診断的特性高い)、アシドーシス(pH≦7.30、HCO3<18mmol/L)

 

〈高血糖高浸透圧症候群(HHS)〉

意識障害と脱水による症状+高血糖(≧600mg/dL)、高浸透圧血症(≧320mOsm/L)、ケトーシスはあっても軽度でアシドーシスなし

 

というわけで、血ガスとケトン、浸透圧は必須です。あと、これから沢山点滴もすることになりますので、心電図、胸部XP、心エコーもお忘れなく。

 

さて治療。最初はDKAもHHSも一緒、『ガンガン輸液』です。

 

  1. 初期輸液として、生食15~20ml/㎏/h、もしくは1~1.5L/hでバイタルサインが落ち着くまで投与
  2. 低Na血症なら生食を250~500ml/h、高~正常Na血症なら1/2生食を250~500ml/hで投与。
  3.  5%ブドウ糖を、DKAなら血糖200㎎/dLになった段階でケトン血症が改善されるまで点滴に追加(目標血糖150~200㎎/dL)、HHSなら血糖300㎎/dLになった段階で高浸透圧が改善されるまで点滴に追加(目標血糖250~300㎎/dL)

Evidence-based management of hyperglycemic emergencies in diabetes mellitus. Diabetes Res Clin Pract. 2011 Dec, 94(3): 340-51.

 

②は主に脳浮腫予防です。また、高Cl性代謝性アシドーシスの予防にもなります。③はもちろん、低血糖の予防のためです。

 

並行して速効型インスリン少量持続投与を開始します。投与方法は色々検討されていますが、Diabetes Care(31: 2081-2085,2008)では、「適切な血糖降下が得られれば、どのような投与方法でも予後に差はない」と報告しています。ヒューマリンR0.1U/㎏/hr×体重で開始する報告が多い様ですので、管理人は以下のようにしています。

 

ヒューマリンR 50単位(0.5ml)+生食49.5mlで1U/mlのインスリンを作成。DKAなら0.05U/㎏、HHSなら0.1U/㎏をボーラス投与し、その後0.1U/㎏/hで持続静注

 

大体体重を10で割った量が0.1Uになりますので、それだけ押さえておけば大丈夫。今回の症例はかなりの巨体ですので、10~12Uをボーラスで投与、時間10で持続投与開始が目安です。ちなみに、K<3.3mEq/Lの時はインスリン投与前にカリウムの補正もしておきましょう。

 

 

―病棟―

 

何とか血糖値も200台まで改善、意識もクリアになり病棟入院となりました。通常ならここで研修医の先生の仕事は終わり、後は専門の先生に・・・となるかと思いますが、もうしばらくこの患者さんにお付き合い下さい。この症例は以下のようなデータだったとしましょう。

 

  • 血糖923㎎/dL、Na143mEq/L、推定血漿浸透圧379mOsm/L(実測値388mOsm/L)⇒著しい高血糖、および高浸透圧血症
  • HbA1c13.6%、血中Cペプチド0.38ng/ml⇒インスリン依存状態あり
  • 血中ケトン体 0.0mmol/L⇒ケトーシスなし
  • BUN116.2mg/dL、Cr2.14㎎/dL、IVC虚脱⇒脱水、腎性腎不全あり(糖尿病性?)

 

HHSによる高度脱水です。おそらく高血糖の持続によりインスリン分泌低下とインスリン抵抗性が助長され、さらに高血糖を引き起こすという悪循環に陥っているのでしょう。この状態が『糖毒性』ですので、何よりこの糖毒性の解除が最優先になります。まずは、血中インスリン濃度で分泌能の確認をします。インスリン抵抗性に関してはHOMA-IRが用いられることが多いですが、これは空腹時血糖140㎎/dLでは評価に使えません。じゃあ血糖値が高い時はどう評価すればいいかってところですが、正直色々な計算式はあるものの、使い勝手のよいものはあまりありません。高トリグリセリド血症、高血圧、内臓脂肪型肥満、低HDL血症などから、「インスリン抵抗性が高そう」と予測するほうが現実的です。

 

この症例はインスリン依存状態ですので問答無用にインスリンが必要そうですが、念のため早朝空腹時のCペプチドインデックス(CPI)も確認しておきましょう。CPI=血中CPR÷血糖値×100で求められ、CPI≧1.2なら食事・運動・経口治療薬での治療、CPI<0.8ならインスリン治療がメインになります(この症例はCPI=0.04と、余裕でアウト💦)。

 

では、強化療法を始めましょう・・・って、もうちょい待って!血糖を急激に下げますので、進行した糖尿病網膜症(眼科依頼)と神経障害(神経伝導速度)の合併を事前に確認しましょう。緊急という訳ではありませんが、心拍数変動検査(心電図R-R間隔)トレッドミル負荷心電図ABI/PWV心エコー頸動脈エコーで合併症の評価を。あと、入院の時点で栄養指導の依頼も忘れずに。

 

インスリン

 

 

では、インスリンを導入します。ここで、インスリン依存状態がない、つまり血中C-ペプチド>0.5ng/mLの 2型糖尿病なら、毎食前の速効型ないし超速効型インスリン注射から開始します。開始時のインスリン用量は体重1kgあたり0.2~0.3単位(8~12単位)、所要量は0.4~0.5単位(20~30単位)まで増量することが多いです。ここで計算した開始時のインスリン用量を朝>夕>昼の順で配分します。例えば、体重60㎏なら60×0.2=12単位を5-3-4・・・ま、面倒なら4-4-4でもOKです。そこからターゲス(一日の血糖変動)や朝>夕>昼を意識して追加していきましょう。

 

問題は、この患者さん。完全にインスリン依存状態ですもんね。この場合は、1日に必要なインスリン総量から基礎インスリン量と追加インスリン量を算出します。1日インスリン総量は先ほどの体重×0.2~0.3でもいいですが、恐らく空腹時血糖も高いですので、以下の計算式(伊藤の計算法)で算出してみましょう。

 

・1日インスリン総量=(空腹時血糖-20)÷10(ただし、上限は20単位)

 

で、基礎インスリン量を出します。

 

・基礎インスリン量=患者の体重(kg)÷5

 

最後に追加インスリン量(いわゆるBolus量)の計算です。

 

・追加インスリン量(Bolus量)=(1日インスリン総量-基礎インスリン量)÷3

 

ただ、肝障害、感染,ステロイド投与などインスリン感受性の低下がある場合には、このインスリンの必要量が通常の1.5~3倍となることもあります。

 

この患者さんの場合1日インスリン総量を体重で計算すると120㎏×0.2=60単位・・・やっぱ、体重が多いのは問題ですね(~_~;) で、基礎インスリン量=120÷5=24単位、追加インスリン=(60‐24)÷3=12単位になります。よって、眠前に24単位の持効型をうって、日中に4単位-4単位-4単位・・・ちょっと持効型多すぎて心配になりますね(~_~;) ま、計算上はこんな感じです。

 

 

  • インスリン非依存状態(空腹時血中CPR>0.5ng/ml or 24時間尿中CPR>20μg/日)

⇒体重×0.2~0.3単位の速効型インスリンを朝>夕>昼の割合を基本に分配

  • インスリン依存状態(空腹時血中CPR≦0.5ng/ml or 24時間尿中CPR≦20μg/日)

⇒1日インスリン総量=(空腹時血糖-20)÷10(ただし、上限は20単位)

基礎インスリン量=患者の体重(kg)÷5

追加インスリン量(Bolus量)=(1日インスリン総量-基礎インスリン量)÷3

⇒基礎インスリン量分の待効型インスリンを眠前に、追加インスリン量分の速効型インスリンを朝>夕>昼の割合を基本に分配

 

あとは、インスリン量を2日ごとに2~6単位/日ずつ増減して、必要な投与量を調節していけばOKです。

 

 

本当は内服への切り替えも書こうと思ってのですが、完全にボリュームオーバー(+o+) 以前のブログも参照してください(プライマリ・ケアの基本は、やっぱり糖尿病でしょ(゚∀゚))。

 

 

今回は、まもなく研修を修了する2年目の先生を意識して書いてみました。2年間本当にお疲れさまでした(^-^) 少しでも皆さんのこれからの診療に役立てば嬉しいです。

 

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