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『新専門医制度』・・・どこへ行く!?

新専門医制度が“迷走”しています。いや、この表現は適切ではないかもしれません。そこまで言うと言い過ぎかもしれませんが、“風前の灯火”という表現の方が近いかも・・・なんて思ってしまいます。少なくとも、順風満帆でないことは確かです。この制度に関わる人、特に研修医の先生や学生の方々にとっては人生に関わる大きな問題だと思いますので、ここで少し整理したいと思います。

 

 

これらの話を考える前に、まず現行の内科専門医制度と、新内科専門医制度がどういった経緯をとってここまで来ているかを確認しておきましょう。

 

図1

 

これが、現行の制度です。一番下の初期臨床研修は国が決めたもの、認定内科医は内科学会が決めたもの、上に乗っかっている柱はそれぞれの学会が決めたものと、バラバラな認定制度になっています(それぞれがそれぞれの制度を利用して成り立っている、という表現が正しいかもしれません)。この制度に関して、以下のような問題点が言われていました。

 

  1. 多くの若手医師が “学位” ではなくて、“専門医” 取得を目指す事で、Physician Scientist 育成がすすまない。
  2. サブスペシャルティ専門医の内科診療能力が低下する。
  3. サブスペシャルティ専門医を取得する迄に長い年月を要すると、各サブスペシャルティ領域に従事する医師が減少する(専門医とったらサヨナラ!)。

 

特に問題になっていたのは2で、「高度な医療は出来るけど、風邪もしっかり診られない医者が増えたことにより、地域医療が崩壊した!」なんて、極論まで出ていました。それを補うために新臨床研修制度がスタートしたハズですが、どうやらそれも空振り・・・(ま、その隙間をぬって存在意義を高めてきたのが総合診療なんですが(^^;))。

 

 

『バラバラになっている専門医制度を統一する』『各科専門医の臨床能力を担保する』といった目的で、平成19年頃から日本の専門医制度の標準化を目指す動きが出始め、平成23年秋には厚生労働省の『専門医の在り方に関する検討会』が発足、平成25年4月に以下の方向性が提示されました。

 

  • 専門医制度は二段階制とする (基本領域とサブスペシャルティ領域)
  • 専門医の認定は各学会ではなく、中立的第三者機関で行う
  • 専門医育成は研修プログラムに従って行い、中立的第三者機関は研修プログラムの評価・認定、研修施設のサイトビジットを行う
  • 総合診療専門医を基本領域に位置づける

 

図2

 

図3

 

図4

 

この制度の目指す医師像は『適切な診断と治療をもって一定数以上の内科症例を経験し、かつ医師としての倫理観と安全に関する知識を有し、内科全般にわたる標準的な知識と技能を修得した、チーム医療のマネージャーとして全人的な診療にあたる医師』日本内科学会:新・内科専門医制度に向けて)と、非常に崇高なものです。

 

ここまでが、予定されていた新内科専門医制度の骨組みです。この指針が出された平成25年4月の段階では、制度開始に向けて以下のような予定が立てられていました。

 

図5

 

今は2016年度、ということは初期研修2年目の先生が養成プログラムに応募して・・・なんて動き、全然ないですよね(*_*; 実際、今はほぼ頓挫してしまっていると言ってもいいような状況です。そもそも雲行きが怪しくなってきたのが平成25年9月頃、つまり前出の指針が提示されてすぐのことです。まず、今回の柱の一つであった総合診療医の領域が、「内科専門医と何が違うねん!」という突っ込みの元、フワーとした扱いになりました。その後、「2017年の開始なんて、対応できへんわ!」といった大学等の各施設の意見を追い風にして、あろうことか今回の改革の本丸である『日本専門医機構』の中からも開始時期延長の意見が出始めました。さらに、遅ればせながら各サブスペシャリティ領域の学会から「そんな不十分な議論の上に、専門乗せられたらたまったもんじゃねぇ!」みたいな意見も出始めて・・・登場人物達の口が悪いですが(笑)、とにかく大混乱です。

 

さらに追い打ちをかけたのが、今年2月に開催された『社会保障審議会医療部会』です。ここで散々叩かれた訳です(内部の人間関係等がかなり絡んでいる感じもしますが・・・)。この会で、日本専門医機構理事長の池田康夫氏が新専門医制度の準備状況を説明したのですが、かなり厳しい口調で懸念や疑念を指摘され、議論は予定していた2時間を大幅に超えたようです。噴出した反対意見をまとめてみました。

 

 

地域医療への影響

 

「医師偏在をさらに強くする。地域医療に配慮していると言うが逆行している」、「地域包括ケア構想に支障が出る。来年4月からの開始は延期すべきだ。」(日本医師会副会長中川俊男氏)

 

「準備不足。地方では、(研修施設の基準となる)指導医数をクリアできる病院はなかなかない。次の医療崩壊の先駆けだ。」(全国自治体病院協議会会長邉見公雄氏)

 

「(地域連絡協議会の推進は)全然進んでいない。聞いたことが無い。地域医療にどう寄与するのか明確でなく、来年4月からやるのは拙速。」(全国知事会荒井正吾氏)

 

 

専攻医の待遇

 

「複数の施設で研修する新専門医制度では、国公立や私立の複数病院で短期間のローテーションが想定される。待遇や職場環境も含めて、専攻医が技術向上に集中できるサポートが必要だ。」(日本赤十字社医療センター木戸道子氏)

 

 

医師の診療科の偏在

 

「現在ホームページ等で記載されている領域別の労働環境や勤務条件などがかなり違う。産婦人科、救急、小児科など仕事がきつい診療科に進む人数がさらに減ってしまうのではないか。」(日本赤十字社医療センター木戸道子氏)

 

 

機構の組織

 

「新制度策定の柱の一つである『日本プライマリ・ケア連合学会』が社員ではないため、一日も早く他の18の学会と同じように社員とし、運営を委託すべきだ。」(日本医師会常任理事釜萢敏氏)

 

「研修施設群の認定評価が大学ばかりで病院はどうなるのかと不安がある」(日本病院会副会長相澤孝夫氏)

 

 

どの意見も正当性のあるものばかりで、これらに対する機構側の答弁は、客観的にみてもあまり説得力のあるものではありませんでした。で、結局どうなったかというと「もうちょっとしっかり話し合いましょう」って・・・(-_-;) 最新の話し合い(平成28年4月6日)では「延期ありきではないが、懸念が払拭されないなら延期も止む無し。何より機構側のガバナンスに問題があり、開始時期に合わせて無理やりスケジュールを組んでいるようで、議論の順番が逆。」と、「結局どっち?」といった感じで、さらに混迷を深めている訳です。

 

 

いつもこのブログでは私見を述べないようにしているのですが・・・「今更何を言ってるんだ!」というのが本音です。10年近く前から話が始まっており、制度としての骨組みが出来てから、あーだこーだ言い出すのは、ちょっと違うんじゃないか・・・別に、言ってる方々が悪い訳ではなくて、こういった問題点が出てくると予想できたはずなのに、それを先送りにしてきたことが問題だと思います。「厚労省+専門医機構」vs「その他団体」みたいなキナ臭さも見え隠れして・・・って、さすがにこの話はやめておきます(^^;) そして、管理人が一番腹立たしく思っていることは「実際にその制度を利用するであろう、研修医の先生方の利益・不利益が全然話題に出てこない」ということです。これで振り回されている先生方は大勢いると思いますし、ひいてはそれが患者様にも影響していく訳です。

 

 

繰り返しになりますが、『適切な診断と治療をもって一定数以上の内科症例を経験し、かつ医師としての倫理観と安全に関する知識を有し、内科全般にわたる標準的な知識と技能を修得した、チーム医療のマネージャーとして全人的な診療にあたる医師』という理念は素晴らしいものです。是非、最善の形で専門医制度がスタートすることを切に願います。

 

戦艦

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