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「エビデンスなし!」・・・じゃあ、どうする?

今年に入り、BMJでめまいに対するベタヒスチン(メリスロンR)の効果を検討したレビューが出ました(出ていたんですが、スルーしちゃっていました💦)。「海外ではメイロンRすら使わないんだから、メリスロンRのレビューなんて日本からだろ。」なんて思っていたら、なんとドイツのミュンヘン大学病院からの報告です。どういう流れでこの研究しようと思ったんですかね(*_*)?

 

 

さて、まずはメイロンRの話。一般名は『7%炭酸水素ナトリウム』なんですが、何でメイロンRなんておしゃれな(?)名前になったか?洋名は『MEYLON』になるんですが、対象疾患である動揺病やメニエール症候群が内耳の迷路(『MEYLO』)に関連しているから・・・て、ダジャレかよヾ(- -;)笑 とにかく、『めまいに使うために生まれてきたような薬』です。実際、戦争中に戦闘機に乗られる方のめまい止めとして開発されたんだそうです(こういった戦争によって開発された薬って、結構沢山あります)。

 

 

作用機序に関して復習しておきましょう。機序は二つ、①血中HCO3濃度↑⇒代謝されてCO2濃度↑⇒血管拡張、②血中Na濃度↑⇒血漿浸透圧↑⇒血流量↑で内耳の血流を改善させる・・・と動物実験による仮説が立てられています。論文がないわけではないのですが日本のみからの報告で、少なくとも抗めまい薬としての質の高い臨床試験はされていません。でも、だからといって効かないか、と言えばそんなことはないと個人的には思っています。だって、効きもしない薬が急性期のめまい治療にずっと使われ続けるハズないですもんね

 

 

ただ、投与するからには副作用はしっかり押さえておきましょう。メイロンRのインタビューフォームには、以下のような副作用が載っていました。

 

副作用

 

 

よく考えたら、管理人自身もめまいの患者様に「口がしびれたり、体が冷たく感じたり、場合によっては不整脈起こしたりしますよ~」なんて、あんまり言った記憶がない(@_@;) 特に、ナトリウム負荷に関してはしっかり押さえておかないといけません。メイロンRのナトリウム濃度は833mEq/Lととんでもない量です。めまいの際には、一般的に20~40ml程度の投与にとどまりますが、それでも16.7mEq~33.4mEq。「結構な量を入れているんだな。」という意識を持つ必要がありますね(循環障害なんかの時のメイロンR250mlをダーと落とすのって、何と208mEqの大量ナトリウム負荷(>_<)!)。

 

 

ついでなんで、アデノシン三リン酸(アデホスR)のことも触れておきましょう。当然のごとくめまいに対してのエビデンスはほとんど見当たらず、ほぼ日本のローカル ルールです。以前は脳循環代謝改善薬の位置づけで、その流れでめまいにも使われていたのですが、1998年の再審査により、その適応もなくなってしまいました。何より、アデホスって半減期めちゃめちゃ短いんですよね。せいぜい数十秒ってところなので、それを点滴に入れて投与することにどれだけの意味が・・・。作用は強くないけど、副作用も少ないっていう、“毒にも薬にもならない”薬?です。もちろん、静注で発作性上室性頻拍などに使うこともありますので、多少なりとも注意が・・・て、そう考えたら“毒”か(汗)。

 

 

だいぶ前置きが長くなっちゃいましたが、冒頭のメリスロンRのBMJの論文について。この薬、H1受容体作動薬かつH3受容体拮抗薬ですので、血管拡張作用、気管支収縮作用、嘔吐中枢抑制作用などを持ちます。何となくめまいに効きそうですが、メイロンと同様根拠となる質の高い報告はなく、米国FDAは認可していません(日本や欧州の一部では保険適応があります)。

 

 

今回の報告は、2008年3月~2012年11月にかけて、21歳~81歳の片側性・両側性メニエール病患者221例(喘息患者、抗ヒスタミン薬内服中、胃十二指腸潰瘍を除外)を対象に行われた無作為化試験です。被験者を①低用量ベタヒスチン(1回24㎎/1日2回)73例、②高用量ベタヒスチン(1回48㎎/1日3回)74例、③プラセボ74例に分け、それぞれ9カ月間投与し、プライマリアウトカムを患者の日誌に基づく30日間ごとの発作回数、セカンダリアウトカムを発作の持続時間や重症度、QOLスコアの変化で評価しています。

 

 

結果は・・・皆さんの予想通りです。プライマリアウトカムである、7~9ヶ月の発作平均回数/月は、低用量群で 3.204回(1.345-7.929)、高用量群で 3.258(1.685-7.266)、プラセボで2.722(1.3-4-6.309)と有意差はなく、セカンダリアウトカムもすべて有意差なしと報告されています。結局、“自然に治る”ってことなんですね(^^;) 

 

BMJ 2016; 352 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6816 (Published 21 January 2016) Cite this as: BMJ 2016;352:h6816

 

ちなみに、副作用の比較も有意差なしでしたので、「飲んでも飲まなくても同じ程度回復するけど、副作用も少ないから飲んでおいてもいいんじゃない?」ってことなんだと思います。

 

 

「結局何使えばいいの(*_*)?」ってなっちゃいますよね。天下のHarrionやUp To Dateでは、めまいの効果的な治療として抗ヒスタミン薬(cyclizine, dimenhydrinate, diphenhydramine, Meclizune)、抗コリン薬(スコポラミンの経皮的パッチ)、フェノチアジン系薬剤(promethazine)、ジアゼパム(セルシンRなど)、エフェドリンと記載されています。抗ヒスタミン薬の中ではレスタミン(diphenhydramine)以外は一般的でありませんし、第一世代抗ヒスタミン薬ですので、かなり眠くなります。スコポラミンの経皮的パッチは日本未承認です。エフェドリンを直接処方することはあまりなく、代用するなら麻黄湯になりますかね?

 

 

というわけで、結局こんな処方が無難なのかもしれません。

 

・メリスロンR(レスタミンの代用)

・セルシンR

・麻黄湯

 

結局、エビデンスレベルの低いところでの戦いになります。でも、「エビデンスがないからやらない」で、被害をうけるのは患者様です。むしろ、『めまいの治療には十分なエビデンスがない』ということを自覚し、その中で患者様にとって最良の選択肢を選ぶことが必要です

 

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