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心身相関

「身体的変化を起こさない感情はない」

 

これは、アメリカの医師John Albert Schindler(1903-1957)が『こころと身体の法則』という本で述べている有名な言葉です。この本、自律神経系や内分泌系を通して、感情や悩みがいかに身体に影響を与えるかを分かりやすく述べています(現代医学では、ここに免疫系も加わります)。心療内科の分野では、これを『心身相関』(mind-body interaction)と呼びます。

 

そもそも、人の身体は約75兆個の細胞からなっている訳ですから、それらをまとめる“命令系統”があるのは当然です。この発想は古来より医学の中で当たり前のように言われてきたことです。東洋医学、チベット医学、ギリシャ医学・・・くらいしか出てきませんが、きっとイスラムのユーナーニー医学やインドのアーユルベーダ伝統医学なども、心と身体を切り離さず、全体のバランスを整えることを治療の目的としていたハズです(多分(^_^;))。

 

それに対して、我々に馴染みの深い西洋医学は、心と身体はもちろん、身体を機械のように細かく分解して、それを分析していくという手法でめざましい発展を遂げました。そのパーツ分けは臓器ごとだけでなく治療法にまで及び、治療ごとに専門化が進んでいます。心を扱う精神科ですら、「精神病理学」、「精神分析学」、「生物学的精神医学」と細かく分類され、その中で様々な治療法が確立し、細分化されています。西洋医学はこの方法で飛躍的な進歩を遂げた訳で、それはそれで素晴らしいことだと思いますが・・・やっぱり、何か違和感を覚えます。少なくとも、西洋医学の“一人勝ち”に近いような現状は、一種の“fascism”のような・・・というのは言い過ぎかもしれませんが。

 

そこで出てくるのが、『心身相関』という概念です。「心と身体は繋がっていますよ」ということですが、要するに「緊張すると動悸がする」「ストレスが続くと胃が荒れる」「恋をすると胸が痛い」というアレです。「気分がふさいでいる時に運動するとスッキリする」というのも『心身相関』といえます。これは単に感覚的な問題ではなく、『緊張』:大脳新皮質⇒大脳辺縁系⇒間脳の視床下部の自律神経系中枢⇒心拍数増加、唾液分泌低下/『適度な運動』:体を刺激⇒体温上昇⇒緊張した筋肉がほぐれる/大脳辺縁系⇒快い情動⇒気分がさわやか/大脳新皮質(活発になり思考力を高める)・・・といった、しっかりした相関関係があるわけです。だから、こういった患者様の訴えを「心因性ですね」の一言で済ましてしまうのは、精神科の専門医ならばともかく非専門医の我々が言うのは、個人的にはちょっと無責任な気がします

 

名古屋出身の精神科医である成田善弘先生は、著書『心身症』の中で「人間においては、その内部において心(脳)と身体各部の間に相互作用が行われると同時に、外部の環境(対人関係を含む)との間でたえず相互作用が行われている。人間の疾病とは、この複雑な相互作用がどこかで何らかの不調をきたしたものと考えられる。」と心身相関を説明された上で「すべての病は心身症である」と言われています。つまり、我々が日頃対峙している疾病は、すべて『身体』『心』『環境』の3つの要素から成り立っているという訳です。しかし、個人的にこの本の素晴らしいと思うところは、著者が精神科の先生でありながら「人間の身体、器官に何らかの病状が発生した場合、そこに心理的なものが強く影響しているとしても、身体、器官における身体医学的諸条件が必ず関与しているものであり、哲学者でなく医師として患者にかかわる以上、まず身体を重視しなくてはならないことはいうまでもない。」という、非常に示唆に富んだ意見を書かれているところです。

 

「心因性ですね」と言うより、「“心”や“環境”も症状を悪くしている原因の一つかもしれませんね」と言いかえるだけで、患者様との距離はぐっと縮まります。そして、何より非専門医の我々にとって大切なことは、『身体』を重視することです(当たり前ですが)。心身症を診るコツは、もしかしたら一般診察力を鍛えることなのかもしれませんね。

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