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「気持ちワル(-“-)」って辛いですよね

すっかりblogの更新が滞っていますが・・・マイペースでいきます(^^;)

 

 

先日若手の先生と嘔吐を主訴とした症例の振り返りをいていたのですが、外来に溢れているにも関わらず、意外に『悪心・嘔吐』でまとめることって少ないんですよね。以前に何かの雑誌(←失礼💦)で書かせていただいたんですが、このblogでは扱ってなかったので、改めて取り上げてみました。

 

 

『悪心・嘔吐』を考える時は、面倒でも病態生理に立ち戻る方が近道です。下の図を見てみて下さい。

 

 

悪心に関連する部位

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悪心は①消化管粘膜に分布するenterochromaffin cell(EC細胞)の刺激、②第四脳室にある化学受容体(chemoreceptor trigger zone; CTZ)の刺激、③大脳皮質からの刺激、④前庭神経核の刺激が、延髄の外側網様体に存在する嘔吐中枢(vomiting center; VC)へ伝播され、腹筋、横隔膜筋、呼吸筋が急激に刺激され嘔吐を引き起こされます。CTZは薬物や毒物、代謝異常に反応して嘔吐中枢に刺激を伝播します。CTZを中心とした嘔吐中枢にはムスカリン・ドパミン・ヒスタミン・セロトニン・サブスタンスPという5つの受容体が存在します。これを理解しておくと、どの制吐剤を選択するか考える時に役立ちます。

 

 

次に原因へのアプローチです。前出の雑誌の中で語呂合わせを作っていました。「あわよくば、この語呂合わせ流行るかも!?」って思っていたんですが・・・甘いですね(-_-;) でも、懲りずに載せます(笑)。

 

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意識障害の時に「アイウエオ・チップス、アイウエオ・チップス・・・」って唱えてアプローチしますよね?そんな感じで「ナウゼア・アイブイ、ナウゼア・アイブイ・・・」って・・・流行らないのは分かってますが(^^;)

 

 

病歴とって、診察して、検査オーダーして・・・。この過程、『悪心・嘔吐』って主訴ではなかなか絞りにくいんですよね。鑑別カードで言えば、『悪心・嘔吐』って“大きいカード”になるんです。情報を積み上げていきながら、ある程度鑑別を絞っていく必要があります。

 

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やはり心配になるのは頭蓋内病変だと思います。心・血管系のリスクファクター頭部外傷の有無典型的な所見{クッシング徴候(徐脈+血圧上昇)、瞳孔不同}明らかなfocal signなどを確認できれば判断に迷うことはないと思いますが、こういった教科書的な所見で現れていただけないのが、一般臨床の辛いところ。以下に主にERの場面で頭蓋内病変をマネージメントする上での “Key Sentence”を挙げます。あくまで「想起している疾患の可能性を上げ下げする情報」というだけですので、この情報に振り回されすぎないように。

 

 

頭蓋内病変マネージメントに役立つ“Key Sentence”

  • Ÿ 「増悪」、「突発」、「最悪」の症状を1つでも満たす頭痛は要注意!
  • Ÿ   嘔気がないのに突然嘔吐→脳圧亢進?(幽門狭窄や食道アカラシアでもみられる)
  • Ÿ   急激な意識障害後の発熱(脳幹部の広範な病変を示唆)
  • Ÿ   片側の払いのけるような動き→片麻痺?
  • Ÿ   上肢屈曲・回内、下肢伸展・回内、足関節底屈→除皮質硬直(大脳の広範な障害?)
  • Ÿ   上下肢ともに伸展回内位→除脳硬直(中脳下部から橋にかけての障害?脳ヘルニア?)
  • Ÿ   人形の眼現象の消失(下部脳幹の障害を示唆)
  • Ÿ   瞳孔の不同は脳幹部に病変が及んでいるサイン
  • Ÿ   pinpoint pupils≠橋出血(必ず有機リン中毒を否定)
  • Ÿ   クモ膜下出血は「頭痛+発熱+項部硬直」といった髄膜炎様の症状を呈することがある
  • Ÿ   クモ膜下出血に典型的な症状が揃うことは少ない(頭痛90%、項部硬直74%、意識障害60%、昏睡27%)
  • Ÿ   両側性のBabinski反射/Chaddock反射陽性→脳ヘルニア?(代謝性脳症の可能性もあり)
  • Ÿ   脳圧亢進時には軽度過換気で脳圧低下(過度の過換気は脳虚血をきたすので注意)
  • Ÿ   気管内吸引は頭蓋内圧を亢進させるので過度に行わない

 

 

ここまでの情報を踏まえたアプローチ、特に『ERでのアプローチ』を、アルゴリズムにまとめてみました。こんなにスッキリいくことはないかもしれませんが、ある程度行動の漏れを防げるのではないかと思います。

 

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悪心・嘔吐評価のためのアルゴリズム

Keith Scorza, et al. Dewitt Army Community Hospital Family Medicine Residencyを改変

 

 

治療の中心は、もちろん原疾患の治療です。でも、救急外来で意外に多いのが「原疾患の検索ばかり夢中になって、症状の緩和は忘れがち」ってこと。もちろん確定診断は大切なのですが、特に救急外来に来られる患者様の多くは、「原因を突き止めてくれぇ~」ということよりも、「早くこの気持ち悪いのを何とかしてくれぇ~」というのが本音なんじゃなかと思います病態に対してしっかりとしたアプローチをされている限り、吐き気を止めることで患者様が不利益を被ることはないので、制吐剤は積極的に用いるべきでしょう。ここで登場するのが、冒頭に書いた病態生理。どこが原因っぽいか(←こんな感じでも十分です)を考えながら処方してみて下さい。以前雑誌で書かせていた、それぞれの薬のポイントも合わせて載せておきます。

 

嘔気・嘔吐に対する受容体と作用する制吐剤

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  • M1アンタゴニスト:スコポラミン(ブスコパンR

 

  • アセチルコリンのM1受容体への結合を競合的に阻害することにより、副交感神経の活性を抑制し、内臓平滑筋の痙攣をおさえたり、胃酸の分泌を抑制する。
  • 緑内障、前立腺肥大症、甲状腺機能亢進症、麻痺性イレウス、出血性大腸炎、重篤な心不全には禁忌。副作用として口渇感・眠気・せん妄・尿閉などがある。
  • D2アンアゴニスト、三環系抗うつ薬、抗ヒスタミン薬との併用で両者の副作用が増強する可能性がある。

 

  • D2アンタゴニスト

①フェノチアジン系(ノバミンR、ウインタミンR、コントミンR

  • ドパミン神経の過剰な活動により発現する陽性症状(妄想、幻覚、幻聴、混乱、興奮)をおさえる。また、中枢神経と自律神経を抑制することで鎮静作用と制吐作用を示す。
  • M1、H1にも部分的アンタゴニストとして作用するため副作用に注意。

②ブチロフェノン(セレネースR

  • 純粋なD2アンタゴニストであり副作用(薬剤性パーキンソンニズム・眠気・口渇感)が少ないが、制吐作用はあまりなく、純粋に制吐剤として使用されることは少ない。

 

③末梢性D2アンタゴニスト(プリンペランR、ナウゼリンR

  • 胃や十二指腸に存在するD2受容体を遮断することで、消化管運動を活発にする。またCTZに直接作用することにより制吐作用を示す。
  • プリンペランRはBBBの通過がよく制吐作用が強いが、錐体外路症状・乳汁分泌・無月経などを来たすことがある(長期使用は避ける)。
  • ナウゼリンRはBBBを通過しにくいため錐体外路症状などの副作用が少ないが、催奇形性が報告されており妊婦には禁忌である。
  • いずれの薬剤もイレウス・消化管穿孔には禁忌である。

 

  • H1アンタゴニスト(トラベルミンR、ドラマミンR

 

  • 内耳迷路、CTZに対して抑制的に作用することにより制吐作用を示す。
  • メニエール病に有効なほか、船酔い・車酔いなどの動揺病にも有効。

 

  • HT3アンタゴニスト(セロトーンR、ゾフランザイディスR、カイトリルR

 

  • HT3はCTZに大量に存在しているため、強力な制吐作用を示す(保健適応上は化学療法後などの特殊な状況でのみ使用が認められている。非常に高価な薬でもあり慎重に使用する必要がある)。
  • NaSSAであるリフレックスには、HT3アンタゴニストの作用がある。

 

 

吐き気って本当に辛いですよね・・・って、お酒飲んだ後程度しか経験のない管理人が軽々しく言うのはダメですね(*_*; でも、間違いなく辛い主訴です。是非適格なアプローチを押さえておいて下さい。

 

 

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