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このタイミングでこそ『プレセプシン』

少し遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。かなり更新のペースが落ちていますが、まぁ、ボリューム少なめの月刊誌として読んでいただければ(^^;) ちなみに、週刊医学界新聞の連載も中盤に差し掛かっていますので、是非ご覧くださいm(_ _)m(http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03206_03)。

 

 

さて、今年の一発目は『プレセプシン』でいってみようと思います。すでに一部の救急外来では使用されていると思いますし、その有用性を考えると、数年以内にかなりの勢いで広まることが予想されます。だ・か・ら・こ・そ!今のうちに押さえておいてもらいたいんです。プロカルシトニン(以下PCT)も臨床応用される前はその解釈に対して色々議論されていたのですが、広まってしまうとやはり“CRP状態”(いい意味でも悪い意味でも)になっています。β-Dグルカンしかり、BNPしかり。恐らくこれから長く使う項目になりますので、まだ使い慣れていないこのタイミングでしっかりした解釈を意識しましょう。

 

 

プレセプシン(以下P-SEP)は「敗血症に移行する前から血中濃度が上昇する蛋白」として2002年に命名されました。細菌が血中の顆粒球等に貪食された際、同時に取り込まれた可溶性CD14がカテプシンDなどの消化酵素により消化され、その一部がP-SEPとして血中に放出されると考えられます(図)。

 

 

%e3%83%97%e3%83%ac%e3%82%bb%e3%83%97%e3%82%b7%e3%83%b3Naitoh K, Shirakawa K, Hirose J, et al. SEPSIS 2010; Poster: P-19

 

 

ちょっと小難しい話になりますが、可溶性CD14はLPS(lipopolysaccharide)や他の細菌リドカインと結合し、内皮や上皮細胞などCD14を持っていない細胞を活性化させます。CD14は悪性腫瘍等でも上昇しますので、一考するとCD14に関連したマーカーは偽陽性が多くなりそうです。でも、敗血症における可溶性CD14とプレセプシンを比較した報告では、両者に相関性がなく、より敗血症の診断や重症度評価に関連していたとのことです(遠藤重厚他:敗血症診断マーカーとしてのプレセプシンの意義;モダンメディア60巻10号2014.)。また、LPSは内毒素、いわゆるエンドトキシンで、シグナル伝達経路を介して種々の炎症性サイトカインの分泌を促進する作用を持ちます。PCTはLPSを産生刺激として上昇しますのでこの点は同じですが、大きな違いがあります。P-SEPは、単にLPSが存在するだけでは上昇せず、菌が存在する場合にのみ上昇するマーカーなんだそうです。さらに、産生臓器がほぼ顆粒球ですので、より細菌感染症に特異的な訳です。

 

ごちゃごちゃしちゃったんでいったんまとめると、P-SEPは「CD14が関連するにも関わらず、感染以外でのCD14上昇では上がりにくい」「PCTと違い、LPSが存在するだけでは上昇しない(細菌がいないと上がらない)」「産生臓器がほぼ顆粒球」といった特徴がある訳です。表にまとめてみます。

 

【バイオマーカーとしてのP-SEP、PCT、CRPの比較】

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実際、どの程度の診断効率があるかが大切ですよね。色々な報告がされていて、軒並みPCTより良いようですが、単独の施設での臨床研究が多くどうしても母数が少ない報告になっています。で、ちょっとズルをして検査会社のホームページのデータを拝借。ただ、この報告も150例なんですね~。ちょっとパンチ弱いかな・・・。

 

【プレセプシンのROC曲線と診断効率】

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http://presepsin.medience.co.jp/presepsin/clinical

 

さらにP-SEPの特徴として挙げられるのは、「応答時間の速さ」「半減期の短さ」です。2013年にトリノの2つの大病院の救急外来で敗血症、敗血症性ショックの疑われた106人の検討では、敗血症の早期診断や予後予測に有効だったと報告しています(ただ、この研究では、診断特性はPCTの方が上と報告していますが・・・)(Critical Care 2013, 17:R168 Published:2013-07-30)。もちろん、前述のホームページでも重症度別の分布に関して掲載されています。健常者、非感染性SIRS、非SIRS感染症、敗血症、重症敗血症を対象にP-SEP値を比較しており、重症度が上昇するに伴い測定値も上昇します。

 

【プレセプシンの重症度別分布】

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J Infect Chemother 2011; 17(6); 764-769.

 

 

これ以外にも色々なデータが報告されていますが、キリがないのでこの辺でP-SEPのポイントをまとめてみます。

 

 

  • ž   可溶性CD14が生成に関わっているが、感染症以外では上昇しにくい
  • ž   生菌がいないと上昇しない(PCTは炎症性サイトカインがあれば上昇する)
  • ž   産生するのがほぼ顆粒球なので、細菌感染症でより上昇しやすい
  • ž   カットオフ値を500pg/mLとすると、PCTより診断効率が少しだけ高い
  • ž   応答時間が速いため早期診断に使いやすく、かつ半減期がPCTに比べてかなり短いため、よりタイムリーな状態の評価に向いている
  • ž   現時点では大規模なスタディが組まれておらず、PCTに比べてエビデンスレベルは高くない
  • ž   スタディ自体が2015年以前のデータを元に組み立てられているものがほとんどで、2016年に提案されたqSOFAを利用した敗血症の定義に当てはめた検討がされていない
  • ž   PCTで偽陽性になる外傷や手術など全身に侵襲が加わった状態では上昇しないことは分かっているが、偽陽性・偽陰性に関してはまだ検討が必要な段階(ステロイドの影響はおそらくなさそうだが、透析患者や血管炎などでは上昇することが報告されている)

 

 

管理人の現時点でのP-SEPへの印象は「何となく良さそうだし、敗血症の早期発見や重症度評価には使えそうだけど、エビデンスも少ないしPCTほどのインパクトはまだないな」といったところです(関係者の皆様申し訳ありませんm(_ _)m💦)。でも、早期の治療介入が予後に大きな影響を与える敗血症診療にとって、大きな武器になることは間違いありません。日本発の検査です。大切に使っていきたいですね。

 

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