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“クオンティフェロン”依存症

最近Quanti Feron®-TB 2G(以下QFT-2G)に関しての質問をよく受けます。「QFTが陽性なんですけど、これって結核ってことですか?」「疑陽性って判定、結局どういうことなんですか?」・・・確かに解釈は難しいです。でも、「解釈が難しい」という感覚を持っておくことが重要です。さもないと、実際は『無実』の患者様が、次々『容疑者』にされてしまいますから。

 

まず、この検査が潜在性結核(latent TB infection ;以下LTBI)を対象とした検査であることを抑えておく必要があります。現在、LTBIは世界人口の約1/3と見積もられており、とりわけ昨今のHIV感染者数の増加、HIV感染があるとその発症率は毎年10%までは跳ね上がるなどの事実を踏まえると、LTBIの診断技術の向上は素晴らしいことです。今までLTBI診断の主役はツベルクリン反応だった訳ですが、ツ反に使われる抗原(PPD)は 結核菌培養液から精製された製剤を使用しており、牛型結核菌から作成した BCGワクチンとアミノ酸配列が類似(99.95%)しているため、BCGワクチン接種の影響を受けやすく、結核菌に感染していないにも関わらず陽性(疑陽性)となることが多く、とりわけBCG接種の普及に熱心に取り組んできた本邦においては、その診断価値の有用性が低下していると言わざるを得ません(感度は高く、かつ安価な検査なので軽視することは出来ませんが)。

 

結核菌に存在しBCG株にはない蛋白抗原(the early secreted antigenic target 6kDa protein:ESAT-6)は1995年、デンマーク国立血清研究所のAndersenらにより精製・同定されました。翌1996年、MahairasらによるBCGとM.bovis間の遺伝子レベルでの相違を解析した研究から、先のESAT-6遺伝子がBCGでは欠落しているRD-1領域に存在していること、また、ESAT-6と同様にInterfrron-γ(IFN-γ)産生を強く誘導する結核菌抗原10kDa culture filtrate protein(CFP-10)が、同じくRD-1領域に存在していることが明らかになりました。さらに、その後の解析の結果、ESAT-6及びCFP-10は全てのM.bovis BCG亜株とM.avium、M.intracellulareを含む大部分の非結核性抗酸菌には存在せず、M.tuberculosis、M.bovis(BCG以外)とM.africannmを含む結核菌群、及び極一部の非結核性抗酸菌のみに存在することが判明しました。この発見を基にBCGと大多数の非定型抗酸菌には存在しないESAT-6及びCFP-10を刺激抗原としてリンパ球を刺激し、T細胞より産生されたIFN-γ量を測定することにより、BCG接種及び大多数の非定型抗酸菌感染の影響を受けない結核感染診断法QFTを開発することが可能となった訳です。

 

QTF‐2Gがツ反に比べて優れている点は大きく分けて3つです。1つは高い特異度を持つということです。LTBIに対するcut-off値を0.35IU/mLとした時の特異度は実に98.1%になります(感度も89.0%と高いのですが、ツ反の方がより高い感度を持つ報告もあります)。2つめは、定性的なツ反に比べて定量的な検査であることです。ツ反の場合は被験者の皮膚の状態や皮下注射の手技、判定者の主観により結果が左右されます。3つめは、一回の受診で検査が可能な点です。ツ反の場合は施行してから48時間後にもう一度来院していただく必要があります。

 

以上のように、QTF‐2Gは間違いなく良い検査なのですが、以下のような点に注意して解釈する必要があります。

 

① 過去の感染か最近の感染かの区別はできない。活動性結核を診断することはできない
免疫抑制状態ではT細胞がインターフェロンγを産生する能力が低く、「判定不能」となる可能性がある。また、80~90 歳以上の超高齢者では全般的な免疫応答性が低下しているため、QFT‐2Gの陽性率が下がることがある。
小児に対しては十分なエビデンスがない(日本結核病学会予防委員会指針では、5 歳以下ではQFT‐2Gを行わずツ反を優先すること、12 歳未満では成人よりも低めに出ることを念頭において、結果を慎重に解釈すること、としている)。
④ 感染曝露後QFT‐2Gが陽転するまでの期間が8~10週間程度と推定されている。
⑤ M.kansasii 、M.marinum など一部の非結核性抗酸菌およびM.leprae(ハンセン病の原因)では結核菌と同様の反応を示す。
⑥ 本邦独自の解釈として、0.1〜0.35 IU/mLを「判定保留」(あるいは「擬陽性」)とする。

 

最近利用され始めたQTF-Gは感度92.6%、特異度98.8%と、さらに診断率が向上しています(J. Infection 2008; 56: 348-353)。上手に使えば、こんなに高い感度・特異度をもつ血液検査はなかなかありません。ただし、繰り返しになりますが、この検査がLTBIを対象とした検査だということ、免疫力が落ちている患者様では判断に難しいことを忘れてはいけません。結核は免疫力が落ちて発症する病気ですよね。ということは、結核が疑わしい患者様の場合、陰性であったも否定しきれませんし、陽性であっても過去のものか今のものか分からない・・・結局、「ひとつの検査結果に惑わされない!」というのが結論になりますかね(身も蓋もない(~_~;))

 

Mori,T.,Sakatani,M.,Yamagishi,F.,et al;Specific deterction of tuberculosis infection with an interferon-gamma based assy using new antigens.Am J Respir Crit Care Med.170:59-64;2004

日本結核病学会予防委員会 『Quanti Feron ® TB-2Gの使用指針』(結核;81:393-397;2006)

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