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“急がない胸痛”もあるんです

新年明けましておめでとうございます。今年もこのブログにお付き合いいただければ幸いです。

 

昨年はこの国にとって大変な一年でしたね。改めて、被災された方々のご冥福をお祈りいたします。今回の震災を機に、この国の医療が抱える問題も色々見えてきました。その件についても、このブログで追々触れていこうと思います。

 

今回は、それとは全く関係ない話です(^^ゞ

 

みなさん、救急外来を訪れる胸痛患者様に対して、どのように対応していますか?「急性冠症候群、肺塞栓、緊張性気胸などの緊急性の高い疾患を否定!」って感じじゃないかと思います。もちろん、大正解です。改めて言うことでもありませんが、救急外来の目的は『緊急性の高い疾患のRule-Out(Rule-In)』ですので、どんな主訴でも見落としたらヤバイ疾患をまず否定することが最も大切です。研修中に身につける最低ラインと言えるかもしれません(実際は難しいんですけどね(/ω\))

 

じゃあ、緊急性の高い疾患が否定できたらどうするか?「何かあったら早めに来て下さいね」はもちろんOKですが、もうちょっと踏み込めれば、隣の研修医(?)にちょっと差をつけられますよ。今回は『急がない胸痛』も押さえておきましょう。

 

一般的に『急がない胸痛』は『原因のわからない胸痛』として扱われることが多いと思います。こんなデータがあります。

・米国で原因不明の胸痛を訴える患者を診断・治療するための医療費は年間2万ドルと推定(Achem SR, DeVault KR; Curr Gastroenterol Rep 2: 201-209. 2000)
・原因不明の胸痛患者が10年以内に死亡する割合は1%以下と、予後は比較的良好(Chambers J, Bass C; Prog Cardiovasc Dis 33: 161-84; 1990)

 

医療経済的にも無駄な検査は避けるべきですし、侵襲の高い検査は最小限にすべきってことですね。

 

では、代表的な『急がない胸痛』について述べます。書き出すときりがないので、今回は筋・骨格系、軟部組織の疾患について。

 

肋軟骨炎:胸骨と肋骨の間に存在する肋軟骨の炎症。第2〜5肋骨の片側に起こる。胸痛全体の3%程度を占めるといわれ、特に小児や思春期の若者の胸痛の20%が、肋軟骨炎が原因という報告もある。女性の方が2倍多い。外傷やウイルス感染などが先行することがあるが、多くの場合は原因不明。一般的には深呼吸などで痛みが強くなるが、数秒単位の安静時痛を認めることもある。腹部、背部などに痛みが放散することも。治療は鎮痛薬。

 

Tietze症候群:1921年にAlexsander Tietzeによって報告された第2〜5肋間軟骨移行部に好発する非化膿性の有痛性疾患。成人に多く原因は不明。自発痛・圧痛があり腫脹を伴うが、熱感や発赤は認めない。多くは自然治癒する。

 

肋間神経痛:まさにその名の通り、肋間を走る神経の痛み。中年以降に多くみられる疾患で胸椎疾患や紋扼性障害に伴って起こることがあるが、大部分は原因不明。もっとも、これは疾患名ではなく症状名。あと、神経根への腫瘍浸潤の可能性もありご注意を

 

SAPHO症候群:Synovitis(滑膜炎)、Acne(座瘡)、Pustulosis(膿疱症)、Hyperostosis(骨化症)、Osteitis(骨炎)の頭文字。主に前胸部で無菌性の骨炎を認め、鎖骨と第一肋骨部に骨硬化と腫大が見られる。皮疹の性状として掌蹠膿疱症が多い(欧米では座瘡が多い)。漠然とした胸痛で緊急性がなさそうなら皮疹をチェックする。NSAIDs、ステロイド、MTXなどが使用されることが多い。

 

帯状疱疹:ご存知皮疹を伴い神経の走行に一致した痛みを認める疾患です。「これは見落とさないでしょ?!」と思うかもしれませんが、皮疹が出現する3〜7日程度前から痛みが出現することがあり注意が必要です。

 

モンドール病:、乳房と前胸壁の浅静脈の血栓性静脈炎を認める珍しい症例。中年女性にみられ、皮膚の索状物として触れることができる。治療を必要としないことが多いが、血栓性静脈炎の原因として乳癌や肺癌の場合があるため、「すげー、モンドール病見つけちゃった」なんて空騒ぎしないように。

 

あと、頚椎症なんかも胸痛を主訴に来院することもあります。頚椎症は頭痛や眩暈の原因にもなる『よくあるけれど、何かひっかかる厄介な疾患』です。

 

・・・やっぱ挙げだしたらきりがないですね。また消化器系なんかは別の機会で触れたいと思います。

 

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