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『下痢』って辛いよね

下痢って症状、上級医の先生より研修医の先生の方がしっかりアプローチされていることが多いと思います。「ほとんどの下痢には抗菌薬出しません!」確かにその通りです。後述しますが、日本の病院を受診するほとんどの下痢に抗菌薬は必要ありません。でも、そこで終わっていませんか?今回のAカンファのポイントはそこです。

 

 下痢の定義は液状または液状に近い便が腸から異常に反復排泄されること。回数や量は関係ない

・消化管内の液体の1~2%程度の吸収障害が下痢を生じる十分な原因となる。特に全小腸のわずか1%の吸収能力の低下により下痢が発生する→病変の首座が小腸の場合はシャーシャーの下痢になる。

・下痢の発生するメカニズムは①腸管内の浸透圧上昇(腸管の水分吸収が抑制され、腸管内へ水分が移行するため便が液状化)、②腸上皮細胞のイオン横断の異常で腸管内に水分分泌、③腸管運動異常、④粘膜表面の障害→粘液、血液、血清タンパクなどが長官内に流出

・下痢診療で正確な診断は不要。12時間以内の超急性、12時間以上の急性、慢性の3つに分類し、それぞれに便培養は必要か、抗菌薬は必要か、止痢剤は必要か、で考える。

・典型例を押さえるのは大切。ノロウイルス、キャンピロバクター属、ランブル鞭毛虫、サルモネラ感染症、赤痢菌、大腸菌などの典型的な経過を押さえておこう。

・急性の嘔吐と全身症状、鋭い腹痛→ウイルス、毒素産生菌

粘血便、渋り腹、腹痛、発熱、便中白血球陽性→微生物や毒素で腸管粘膜が破壊!→大腸型:Sigella(赤痢菌)、Salmonellaなど

・粘血便や発熱なし(あっても軽度)、シャーシャー→微生物や毒素による小腸からの分泌物の増加→小腸型:Vibrio cholerae(コレラ菌)、ウイルス

旅行者下痢は別物!細菌性なら大腸菌(特にETEC)とカンピロバクター.他はサルモネラ属、赤痢、ヴィブリオ属が続く。実際は「食べ物が合わなかった」がほとんど。 多くの旅行者下痢は“self limited”.ただし、大腸菌が原因の場合が多いのでベロ毒素のチェックは必要。治療するならシプロキサン400mgを5日間

・旅行者下痢は『1にマラリア、2にマラリア、 3、4がなくて5にマラリア』

・日本は乳糖不耐症が結構多い。特に、急性胃腸炎患者を診たら、回復後2週間は乳製品を避けるようアドバイスを。

・抗菌薬関連の下痢でC.difficile関連は全体の20%程度。大腸に対し毒素を介して炎症と白血球増加から重度の下痢を引き起こす。C.difficileによらないものは通常、抗菌薬の治療中または直後に軽度の下痢を起こす。C.difficileの第一選択はメトロニダゾール(500)3T/3×Nを10日間。止痢薬は避ける。

・便培養は①重症か、②暴露の可能性(海外旅行、高リスクの性行為、抗菌薬)、③免疫抑制状態、④炎症性腸疾患、⑤食中毒の可能性(食品関係、医療従事者)を対象に行うこと。

・入院中の下痢は別物。特に入院3日目以降に発症した場合に普通の細菌が培養される可能性は極めて低い。まずは薬剤の副作用やCDによる偽膜性腸炎を考える方が無難(3日ルール)。

・WHO曰くORSは20世紀最大の発明。でも・・・マズイ。OS-1を有効に使おう。

・急性下痢症の食事療法の目的は、生理的状態の維持→“足らないモノを足す”のが基本。“お腹を安静”、“柔らかくする”、“刺激物を避ける”など実はエビデンスなし(とはいえ、消化にいいもの、消化に悪いものはある程度おさえておこう)。

止痢剤は基本的にはほとんどの下痢に対して適応あり(例外は腸管出血性大腸菌、偽膜性腸炎)。腸管粘膜に緩徐な収斂作用を及ぼすタンナルビン、吸着作用をもつアドソルビン、蠕動抑制+水分・電解質分泌抑制作用をもつ強力なロペミンなどを使用。

国内の感染性下痢症の原因の上位3つ、①非チフス・サルモネラ、②腸炎ビブリオ(肝機能障害があったらダメ!)、③キャンピロバクターは、いずれも原則的に抗菌薬は必要なし

・抗菌薬の適応は①重症感がある、あるいは菌血症が疑われる人、②免疫能の低い人(糖尿病,慢性肝疾患,腎不全,胃切後,悪性腫瘍,アルコール中毒者,妊婦など)③途上国からの帰国者,食品取り扱い者など。出すならやっぱりシプロキサン・・・かな?

 

「患者様の気持ちになったら、こんなこと知りたいんじゃないかな?」という意識を持って望むと、教科書に載っている通り一辺倒の情報もちょっと整理されるんじゃないでしょうか?そうやって研修期間中に“+αの知識”をどれだけ身につけられるかで、その後の医者人生が結構変わってくると思います(その点、管理人は深く反省しております(/ω\))。

 

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