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自律神経失調症?〜その2〜

前回、『自律神経失調症』の定義について説明しました(結局よくわからないね、で終わっていますが(^^ゞ)。今回は『自律神経失調症』に対する医療面接です。なお、前回書かせていただいた通り、便宜上『自律神経失調症』という病名を使わせてもらいますね。

『自律神経失調症』という病気が存在しない限り、そのスクリーニングに使われる問診事項を明確に定義することは難しく、前回示した診断基準を利用するしかありません。しかし、時間に制約のある一般外来、あるいはER外来において、これらの診断基準を利用するのは少し無理があるように思います。OthmerとDeSouzaは、身体化障害のスクリーニングが可能な簡単な7つの症状リストを提示しています(☆1)(ご丁寧に文章中の単語の頭文字で語呂合わせしてくれていますが・・・かえって分かりにくいですね(-_-;))。これらの症状のうち2つまたはそれ以上の症状が存在する場合、身体化障害の可能性が高いと考えられ、3つの症状が存在すれば、感度87%、特異度95%と報告しています。この結果は身体化障害の検査前確率の高い群でのスタディであり、この基準をそのまま『自律神経失調症』に当てはめることは難しいかもしれませんが、ある程度の指標にはなりうるでしょう。またGoodwinとGuzeは、月経困難症と性的無関心が身体化障害の患者にはよくみられることを報告しています。もしこれらの訴えがない場合は、身体化障害という診断名をつけることに注意するべきでしょう(もっとも、『身体化障害』という表現は『感染症』、『膠原病』程度のまとめ方にしかならないので、この診断名をつけること自体もやや無理があるかもしれません)。

☆1身体化障害のための7症状による質問(Othmer E,DeSouza C:Am J Psychiatry 142:1146-1149,1985)

覚え方:Somatization Disorder Besets Ladies And Vexed Physician(身体化障害は女性と困惑する医者を悩ます)

 Somatizaction:息切れ(Short of breath)→呼吸器症状
 Disorder:月経困難(Dysmenorrhea)→女性性器症状
 Besets:性器の灼熱感(Burning in sex organ)→性心理症状
 Ladies:喉の圧迫感(嚥下困難)(Lump in throat)→偽神経症状
 And:健忘(Amnesia)→偽神経症状
 Vexed:嘔吐(Vomiting)→胃腸症状
 Physician:四肢の痛み(Painful extremities)→筋骨格症状

『自律神経失調症』に対するclosed questionも覚えておくと便利です。自律神経は一言でいうと、内臓、血管などの働きをコントロールし、体内の環境を整える神経です。自律神経に支配されているのは、すべての内臓、全身の血管や分泌腺です。つまり、原則的に『自律神経失調症』は、それぞれの症状発現の程度に違いがあることはあるものの、すべての内臓、全身の血管や分泌腺の失調症状があることが条件となるはずです。また、自律神経が特に強く支配している器官(心臓、肺、食道、胃、小腸、大腸、肝臓、胆嚢、および生殖器)の症状が存在することも必須でしょう。前述の7つの症状を中心に、以下のような問診を行うことで、『自律神経失調症』の検査前確率を上げることが出来ます。

 心臓→「何の誘引もなくドキドキすることはありますか?」「ふらふらしませんか?」
 肺→「息切れはありますか?」「息苦しくなることはありますか?」
 食道→「食べ物がつっかえる感じはありませんか?」
 胃→「みぞ落ちの痛みやムカつきはありませんか?」
 小腸・大腸→「お腹の張りを感じますか?」「便通異常はありますか?」「おならがよく出ますか?」
 肝・胆→「最近疲れやすいですか?」「油ものを食べてお腹が痛くなりませんか?」
 生殖器→「性に関しての関心が無くなっていませんか?」「勃起不全はありますか?」

これらの症状のうち、最も多い訴えは心血管系のもので、これは以前、『心臓神経症』と呼ばれていたものです。最近米国で『体位性頻脈症候群(postural tachycardia syndrome;POTS)』ないし『起立不耐症(orthostatic intolerance;OI)』として注目されていますが、この概念は従来『自律神経失調症』として片付けられていた多くの患者さんの症状を、(一部ですが)ある程度説明できるのではないでしょうか(☆2)。一部のPOTS/OIの本態が遺伝性のノルアドレナリン・トランスポーター欠損症であるという報告もあり、注目すべき概念です。

☆2 POTS/OIの診断基準(1995);上記A~Eのすべてを満たしていること

A. 起立またはhead-up tilt 5分以内に脈拍増加≧30/分
B. 起立またはhead-up tilt 5分以内に脈拍の絶対値≧120/分
C. 起立不耐症の症状(軽い頭重感、筋力低下、ぼけ視、悪心、動悸、認知障害)
D. 他の原因によるニューロパチーがない。
E. 起立性低血圧がない。

前回より、ちょっとだけスッキリした感じがしませんか?・・・ん?そうでもない?その“スッキリしない感”こそが『自律神経失調症』なんです!・・・ってことで許して下さい(笑)。次回は『自律神経失調症を疑った時の除外診断』についてです。

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