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それ『Refeeding症候群』じゃない?

今日もたくさんの患者様が入院されました。当科の特徴上、ご高齢で栄養状態の不良な方の入院が多いのですが、この栄養管理が本当に難しいんです。少なくとも、「昨日まで元気で今日になって急に状態が悪くなって・・・」という患者様とは難易度が雲泥の差です。

とにかくクリティカルケア・急性期は“Permissive underfeeding(過小栄養投与の許容)”が大原則です。急性期は糖負荷→インスリン拮抗ホルモン(ステロイド、成長ホルモン、グルカゴン)と交感神経刺激→高血糖→①白血球貪食能低下、②高浸透圧性利尿、③感染リスク増加、④電解質の細胞内移動(特にカリウム、リン)が起こります。また、栄養過剰状態→酸素消費上昇→過剰なCO2産生→呼吸不全の進行も認めます。「重症だから中心静脈でルート確保して、ついでに高カロリーもいっとくか!」は最悪な思考回路な訳です(-_-;)

<その他臓器で起こること>

  • 肝臓→脂肪肝:過剰な栄養を代謝→肝臓への負担増大→肝機能不全
  • 心臓→Refeeding:ビタミンB1欠乏、電解質異常による心不全、徐脈、QT延長、心室細動
  • 呼吸器→Refeeding:電解質異常による呼吸筋疲労からの呼吸不全
  • 神経系→Refeeding:ビタミンB1欠乏によるWernicke-Korsakoff症候群

で、結局ここで問題になってくるのが『Refeeding症候群』です。食事を取っていない人に経口あるいは経静脈的に栄養を与えることによって、液体と電解質の移動が起こり、様々な臨床的な問題が生じるという症候群のことですが、とりあえす簡単に病態生理のおさらいをしておきましょう。

<糖代謝の大まかな流れ>

 解糖系

  ↓→TCA回路に進まなければ、嫌気性解糖が起こり、乳酸が産生される

  ↓

  ↓←ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(補酵素としてチアミン、マグネシウムが必要

 TCA回路

  ↓

 電子伝達系

 <マグネシウムの働き>

  • Mgは代謝に関与する多くの酵素のco-facterとして作用し、エネルギー産生、貯蔵、利用、蛋白合成などに重要(特にATPaseの活性に不可欠で、タンパク合成における核酸代謝にも関与)!
  • 生体内で4番目に多く細胞内では2番目に多いのに・・・血管内には1%しかない(正常値でも不足しているかも?!
  • 低K血症の3~4割に低Mg血症、低Mg血症の3~4割に低K血症を合併
  • 冠拡張作用、抗血小板作用、心自動能抑制作用があり、虚血性心疾患での再還流障害に対しての保護作用あり。重度の低Mg血症で痙攣重責、致死的不整脈(torsades de pointes)、昏睡・・・死亡!

<リンの働き>

  • リンは①ATPの産生に関りエネルギー代謝を改善、②赤血球内の2,3‐GDP産生を促進し酸素運搬能を改善する
  • ①の障害により筋力低下、心不全、呼吸不全、②の障害によりイライラ感、異常感覚、錯乱、痙攣、昏睡などを起こす
  • 副甲状腺機能亢進症以外にアルコール依存、神経因性食思不振症、慢性下痢、TPN長期投与・・・何より医原性が多い!

というところを抑えておいて・・・ 

  • 低栄養状態に糖を大量に投与→膵臓が刺激されてインスリン分泌亢進→糖代謝の解糖系が動く→長期の低栄養状態ではビタミンB欠乏(ビタミンB1は健常人で約21日、重症患者では7~10日程度で枯渇)、およびマグネシウム欠乏状態となっており、TCA回路が回らず嫌気性解糖が進み、大量の乳酸が産生→循環不全でなくても乳酸アシドーシスが進行
  • 限られたビタミンB1・マグネシウムがさらに減少→Wernicke-Korsakoff症候群、脚気心(高拍出性心不全)とそれに伴う全身浮腫、末梢性ニューロパチーなどが起こる
  • インスリン分泌→血管内から細胞内へブドウ糖の取り込み→カリウム、リンも取り込まれ、低カリウム血症、低リン血症(低マグネシウム血症も存在するため、カリウムの補正だけで低カリウムは改善しにくい

・・・ってわけで色々起こるんですが、ご飯食べられない高齢の方はもちろん、神経性食思不振症や過度のダイエットでも簡単にビタミンやマグネシウムが枯渇しますし、お酒飲んでなくてもWernicke脳症起こしますし、簡単にRefeeding症候群も起こしちゃうわけです

 <Refeeding症候群>

  • うっ血性心不全
  • 電解質異常(低カリウム血症、低マグネシウム血症、低リン血症)
  • 高血糖・水分貯留による全身浮腫
  • 意識障害(Wernicke-Korsakoff症候群など)
  • よくわからない発熱
  • よくわからない乳酸アシドーシス

こんな症状が出たら疑いましょうね。ちなみに、下記のビタミン・電解質異常が原因になります。

  • チアミン欠乏→心不全(脚気心)
  • マグネシウム欠乏→不整脈(Torsades de pointes)、呼吸筋低下
  • リン欠乏→心筋症、呼吸筋低下
  • カリウム欠乏→不整脈(Torsades de pointes)、心筋障害

なので、低栄養状態が予想される患者様に対しては常に「リフィってねぇか?」って思えるセンスが必要になってきます。

<低栄養が予想される場合>

  • 長期臥床、経腸栄養
  • 嚥下障害、消化器疾患があるも経口摂取していたケース
  • BMI<18
  • 慢性呼吸器疾患、肝疾患、腎疾患
  • 薬物中毒:特にアルコール多飲・利尿剤投与中(利尿剤はビタミンB群の尿中排泄量を促進する!)

また、Refeeding症候群のリスクファクターとして、以前BMJで紹介されていたものを紹介します1)

<リスクファクター>

    • BMI16未満
    • 意図しない15%以上の体重減少が3〜6ヶ月以内に生じている
    • 10日異常ほとんど食事をしていない
    • リン、カリウム、マグネシウム濃度が低い

あるいは下記の2つ以上

  • BMI18.5未満
  • 3〜6ヶ月以内の10%以上の体重減少
  • 5日以上栄養を取っていない
  • アルコールか薬(インスリン、抗癌剤、antacids、利尿薬)の使用

そこで、担がん患者を含めた低栄養患者の身長、体重、BMIについては改めて見直し、治療を始める必要があります2)

どのようにしてこの症候群を予防するかをまたまたBMJから3)

  • 初期の栄養投与量を0.042MJ/kg/24時間 (500kcal/50kg)、よりハイリスクの人0.021MJ/kg/24時間(250kcal/50kg)で開始し、4〜7日毎に増加していく。
  • 採血は1,2日おきに再評価。
  • 身体診察を行い、心肺機能と、下肢の浮腫の出現に注意。
  • 毎日、体重測定と、バイタルサインを確認。
  • ナトリウムと液体摂取制限。

なお、イギリスのNational Institute for Clinical Excellence(NICE)ガイドラインでは電解質を補正しなくても、栄養開始と同時の補正で良いと書いてありますが、日本のガイドラインを始め多くのガイドラインではまずは電解質をしっかり補正してから栄養を開始しましょうとなっています。ま、そっちの方が無難です。

長々と書いてしまいましたが、とにかく知らないことで患者様の予後を大きく変えてしまいます。絶対覚えておきましょう。

1) De Silva A, Smith T, Stroud M. Attitudes to NICE guidance on refeeding syndrome. BMJ., 2008 Jul 8;337:a680. doi: 10.1136/bmj.a680

2) Marinella MA. Refeeding syndrome: an important aspect of supportive oncology. J Support Oncol.,  2009 Jan-Feb;7(1):11-6. Review.

3) Mehanna HM, Moledina J, Travis J. Refeeding syndrome: what it is, and how to prevent and treat it. BMJ 2008;336:1495-8. (28 June.)

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